雑魚スキル【観察記録】のせいで婚約破棄された少年は、モンスター達とともに世界を無双する。

ファンタスティック小説家

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アダン家到着

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 ──しばらく後

 アイリスとサアナは、風のような速さでアダン家へやってきた。

 空には白い煙が立ち昇っており、その根本は案の定、かつてアダン屋敷があった場所へ導くようにのびていた。

 あたりには煙の匂いがたちこめている。

「まさか本当に焼けてしまったなんて……アルバートはどこに…?」

 アイリスは放心状態のまま馬をすすめる。

「アイリス様、結界があるのでは?」

 うかつに敷地内へ足を踏み入れるアイリスへ、従者のサアナは顔を青くした。

 魔術家の敷地に勝手にはいろうとすると、なんらかの防衛機構が発動することがあるからだ。

「…ないですよ。『来るものは拒まず。されど、出るものは逃さず』……それがエドガー・アダンの代から持つアダンの性質です」
「……新しきを吸収して、魔術の秘密はそとへ漏らさないということですか」

 サアナは納得したようにして、アイリスに続いて敷地内へ足を踏みいれた。

 数日前まで立派な屋敷があった場所には、いくつかテントが建っていた。
 真ん中には、骨組みだけ残る残骸のなかに、綺麗な箱状の建物だけがたっている。

 アイリスは結界領域をもつ空間だけが、火災から逃れたのだとすぐに察した。

 テントの影から老紳士がでてくる。

「サアナ、さがってなさい」

 アイリスは身構えて、馬上からそのまま飛びかからんとするサアナをひきとめた。

 老紳士はモノクルをなおして、うやうやしくお辞儀をすると「ただいま、主人を呼んで参ります」といってさがっていった。

 サアナは無意識のうちに自分が冷や汗をかいていたことに気づき、それが老紳士のもつ覇気によるものだと知った。

「アイリス様…あの使用人は……」
「エドガー・アダンの右腕と呼ばれていた御仁です。うかつなことはしない方がわたしたちの為でしょう」
「そうみたいですね」

 サアナは剣をぬかなくて良かったと、ホッと胸を撫でおろした。
 
 しばらくして、真ん中の建物の扉をあけて、くだんの少年が姿をあらわした。

 アルバート・アダンだ。

 アイリスは心底安心した。
 でも、顔にはださない。

 緩みそうになる表情をキュッとひきしめて、アイリスは、アルバートの知るクールな大魔術家の令嬢という皮をかぶる。

「こんにちは、アルバート。これは……尋常ではないようですが」
「……はい、とてもとても。尋常だとは言えませんね」

 アルバートはめずらしく言葉をつまらせながら、思考を働かせていた。

 アイリスがこのタイミングで来るなんて。
 いったいなにが狙いなんだ。

 邪悪な天才アイリスが、何か良からぬことを考えている──という前提のもと、アルバートは警戒しながら言葉をえらんだ。

 思わぬ再会に頬がゆるみそうなのは、3代目アダンとして意志の力でねじふせた。

「長旅ご苦労様です。テントへ案内します。お疲れでしょう、どうぞこちらへ」

 アルバートはにこやかな微笑み、先導して歩き、アイリスとサアナを奥へ案内した。
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