雑魚スキル【観察記録】のせいで婚約破棄された少年は、モンスター達とともに世界を無双する。

ファンタスティック小説家

文字の大きさ
35 / 57

富家強兵

しおりを挟む
 俺はブラッドファングの項目を開いて、まよいなく召喚をおこなった。

 消費魔力はわずかに少なくなっていた。

「また、ブラッドファングを召喚するんですか?」

 魔術工房につめているティナは、資料整理の手をとめて手元をのぞき込んでくる。

 おや、平気なのか。
 てっきり怪書に目を通したら苦しむものかと思っていたが。

「ティナ、頭痛はするか?」
「しませんけど?」

 ふむ。
 正式な所有者である俺が閲覧しているかぎりにおいては、ほかの人間も見れるわけだ。

「ブラッドファング、お金にかえたらすっごく値がつきそうですね!」
「ん? あーいや、こいつを売る予定はない」
「え? そうなんですか? …あ、すみません…。てっきり、モンスターはみんな売ってお金に変えるものと……」

 モンスター売買は使用人たちによからぬイメージを与えているらしいな。

「モンスターを売って金にかえるのが、ただひとつの使い方ってわけじゃない。まあ、いろいろ考えてはいるが、現状、ブラッドファングはアダン家の戦力という扱いだ」
「強いですもんね、この子」

 ティナはまだ出来上がっていない、ブラッドファングの元、とも言える赤黒い液体溜まりをみてつぶやいた。

 この光景も慣れてきたらしい。

「まあな。ただ、ブラッドファングだけじゃ強力な魔術師を相手とる場合、非力だ。より強力なモンスターの登録は必須だな」
「そうなんですか……でも、ブラッドファングが2匹もいればあんしんなのでは?」
「まだまだ。これではアイリスの気まぐれでアダンを壊滅されかねられない」

 アルバートそう言って、残った魔力を何に使うか頭をつかいはじめる。

 結果、はじめて召喚するモンスター、トレントを呼び出すことにした。

 トレントは呪樹とも呼ばれる、木がなんらかの魔力的働きで魂をもったモンスターだ。

 2体しか呼び出せなかったが、相変わらず樹木によく似ていて、いろいろと用途の可能性を感じさせるモンスターであった。

「ティナ、このトレントたちは将来的にこんな感じにしようと思う」

 彼女に計画書をわたしておく。
 計画書にはトレントの役割が書かれている。

「全部トレントにするんですか……?」
「ああ。全部だ」

 ティナは目丸くしていた。
 計画があまりにも脳筋だったからだ。
 
「だが、スマートだろう」
「ま、まあ、そうとも言うかもしれません」
「とにもかくにも、まずは、拠点を固める」
「……はい」
「モンスター販売ビジネスの優先度はひとつ下げる。家、亡くなったアダンの使用人、そして、父さんの失敗は繰り返さない。我々は魔術世界で生きるにはまだ弱すぎるんだ」

 アルバートは覚悟の表情でそうつげた。
 ティナは主人の決意に敬意をはらい、かたわらで身を引き締めていた。

 ──翌朝

 朝からアルバートは庭にでていた。

 魔術工房で大量に生成したトレントたちを、モンスターハウスの後方の森にまぎれこませて待機させるためだ。

 ファングと同じく消費魔力『5』でつくりだせるトレントたちは、頭数をそろえること自体は楽であった。

「もっと自然に木っぽくしてろ。お前たちならできるだろう」

 なぜか、大根役者なトレントたちにカモフラージュの大切さを説いて言い聞かせた。

「メシメシ、ミシミシ」
「悪くない。やればできるじゃないか」

 1時間ほどの指導をおえて、トレントたちは立派に自然な木になれるようになった。

 一見してこれだけのトレントが敷地内に潜んでいるとは思うまい。
 これから毎日、すこしずつ増やしていく。

 数がそろって、周囲の森すべてをカバーするだけの広域防衛網を築きあげれば、アダン家の守りは盤石なものとなるだろう。

 アダンを敵にまわすこととどうなるか、徹底的にわからせてやらなければな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています

ゆっこ
恋愛
 「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」  王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。  「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」  本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。  王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。  「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!

川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。 だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。 だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。 馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。 俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...