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第七章 魔法王国の動乱
王都到着
しおりを挟むローレシア魔法王国は穏やかな土地に恵まれている国だ。
深い森と脈々と連なる霊峰のイメージをもつアーケストレス魔術王国とはある種、正反対の印象をもつ領土を誇る。
王国内の多くを平野が占めており、どこへいってもたいていは殺風景な地平がつづくことになる。これには魔法王国が1年を通して冷帯的気候をもっていることが理由として挙げられる。
子供の頃、異世界の気候に関して興味を持ち、観察と記録をつけていたので、1年480日のうち360日が長袖を着て過ごしていたことを知っている。うち冬二月は毎日のように雪が降り積もり、それいがいの320日でもちょくちょく雪が降る。
そんな寒い国なので、魔法王国には平らな光景が多い。
王都への道のりもそんな殺風景な平野がつづく街道をひたすらに進むものだった。
幸いにも王都までの道のりには近い間隔で村や町などのコミュニティが形成されていたため、野宿をせずに済んだ。聖神国や都市国家連合では野宿と宿屋を使えるわりあいが半分半分くらいだった。野宿はやっぱり何かと嫌なものだ。アンナと俺のどちらかは見張りをしていないといけないし、地理をある程度把握して危険じゃない場所に設営を行うため余計な気を遣う。なにより準備が面倒くさい。
その点、聖神国ほど国土が広くない魔術王国や魔法王国は移動が楽ちんだ。
とりわけ魔法王国は森が無いので、本当にモンスターというものに出会わない。
たまに平原をかけるラビッテという小型のうさぎモンスターを見かけたり、タッカが飛んでいるのが目につくくらいだ。
6日ほどで、10コほど村と町を越え、俺たちは王都を視界にとらえた。
「あれが王都の外壁ですね」
「うん。北西側から見るのははじめてかも」
「アンナは王都に行ったことが?」
「何回かあるよ。アーカムはないの?」
「僕の人生はクルクマでの10年と、バンザイデスでの3年がすべてでしたから」
「キサラギの人生は2年の放浪です、お兄様」
なんか話に入って来たけど、君はおかしいのよ。
「途中でマナニウム電池が切れなくて本当によかったですよ」
「キサラギは主人公です。主人公には補正がかかると如月博士も林音博士もおっしゃっていたので、マナニウム電池はたぶん持つと確信していました」
それは最高の頭脳を誇るAIのくだす決断じゃないんよ……。
王都にたどり着き、商人たちの馬車が並ぶ列に加わり、順番を待ち、王都西門をくぐって王都内へ。
王都ローレシアは1,000年の昔から続く古い都としての側面を持ち、道行く先々で古ぼけたひび割れの遺跡跡地を見つけることができる。遺跡街とも呼ばれる古い時代の遺物を色濃く残した地区もあるらしい。
古めかしくも流行の最先端を行く、伝統と急進が共存する不思議な都市であった。
はじめて来る王都にやや浮かれ気味であるが、緊張感が漂っているのはひしひしと感じた。
道行く者たちの表情にはどこか不安が宿っている。
通りかかった魔法王国騎士団本部からは、大きな馬車が隊列を組んで出発していた。おそらくは泣き声の荒野へと赴くものだろうと思われる。
合戦というものがどれほどの戦いになるのか、いまいち想像はできないが、おそらくは何千、何万人の人間が動員される大規模な戦いだろ思われる。
隊列の外側を歩く騎士に並列して歩き、すこし強引にたずねる。
「すみません、この馬車はキンドロ領のほうに行くんですか?」
「ん? ああ、そうだぞ、坊や。泣き声の荒野で合戦があるんだ。反逆者たちをこのままにしておくわけにはいかない。ゆえに我々も急ぐのだ」
「今から行って間に合うんですか? 遅くないですか?」
「開戦には間に合わんだろうな。なにせ急な話だった。各々領地からの派兵にバラつきがあるのは仕方がないんだよ」
「いや、でも……」
「領主さまたちも難しい判断を行われているのさ。。坊やにはわからないだろうがな。だが、援軍にこそ意味がある場面も戦争ではおおいものだぞ。長期化した際には後続の厚さが肝要になるからな。戦とはそういうものだ」
騎士はそう言うと「ほら、もう行った行った」と、手を振って俺を追い払うようにした。
アンナとキサラギのもとへ戻ってくる。
「どうだった」
「王族派貴族たちの足並みはそろってないみたいですね」
「だろうね。派閥なんて言っても、結局は自分の領地が真に危機におびやかされないと足腰は重たいものだよ」
「そうですね。でも、いまからでも王都からの出兵があるのは嬉しいことです。地理的に孤立無援もありえましたから」
ともすれば、きっと合戦場にもいくらかの王族派貴族からの派兵が間に合っていると推測できる。
そうであれば、貴族派貴族連合の軍を押し返すことができるかもしれない。
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