敵を9割弱体化させていた呪術師、追放される。勇者が雑魚敵に負ける中、俺は即死チートで無双する~戻れと言われても、魔王の娘と幸せなので~

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第22話 魔王軍の幹部が襲来。だが、俺たちの敵ではない

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「おい、ポチ。そこの岩をどかしてくれ」
「ダカラ、ヴェルドラダト言ッテイルダロウ! ……フンッ!」

魔境『竜の顎』での開拓生活三日目。
俺たちは順調に拠点の拡張工事を進めていた。
元SSランクの炎獄竜ヴェルドラ(通称ポチ)は、その怪力を活かして重機代わりに岩を運んでいる。
人間形態のままだが、その細腕のどこにそんな力があるのか、巨大な岩石を軽々と投げ飛ばしていた。

「素晴らしい働きぶりです。……しかし、ヴェルドラ様。その岩は庭園予定地に置くのではなく、粉砕して砂利にしていただきたかったのですが」

執事のメルキセデクが、完璧に整備された花壇の手入れをしながら溜息をつく。
彼は元天使とは思えないほど、土いじりや造園作業に馴染んでいた。
どうやら「破壊」よりも「創造」の方が性に合っていたらしい。

「うるさいナ、細カイコトヲ気ニスルナ。……主ヨ、働イタ褒美ニ、後デ背中ヲ流シテクレ」

ヴェルドラが汗を拭いながら(その動作だけで胸が揺れるので目の毒だ)、俺にウインクしてくる。

「はいはい、考えておくよ」

俺は適当に返事をしながら、屋敷の増築部分の設計図を確認していた。
セリスとアリシアは、森の方へ食材調達に行っている。
平和だ。
天界からの使者が来て以来、特に大きな動きはない。
嵐の前の静けさかもしれないが、今のうちに戦力を整えておく必要がある。

「マスター。……来ますよ」

メルキセデクがふと手を止め、空を見上げた。

「ん? また天界の勧誘か?」

「いえ。……この禍々しく、粗野で、暴力的な魔力。……同族の気配とは少し違いますね」

次の瞬間。
空が急に暗くなった。
雲が渦を巻き、雷鳴と共に巨大な影が降りてくる。

ズゴゴゴゴゴ……!!

現れたのは、巨大な浮遊戦艦だった。
黒鉄の装甲に覆われ、艦首には巨大なドクロの意匠。
そして、甲板には数百の魔族兵士が整列していた。

「ハッハッハ! 見つけたぞ、誘拐犯め!」

戦艦から拡声魔法による大音声が響き渡る。
俺たちがテラスに出ると、戦艦から数名の影が飛び降り、屋敷の前の広場に着地した。
ドスン! ドスン! と地面が揺れる。

砂煙の中から現れたのは、いかにも強そうな四人の魔族だった。

「我ら、新生魔王軍四天王! 姫様を……セリス様を奪還しに来た!」

先頭に立つのは、全身を真紅の鎧で固めた巨漢の剣士。
その背には、身の丈ほどもある大剣を背負っている。

「俺様の名は『剣鬼』ガルド! 魔界一の剣豪にして、四天王最強の武人だ!」

続いて、妖艶なドレスを着た魔女が進み出る。

「私は『幻惑の魔女』ララ。……あら、こんな僻地に素敵な別荘を建てて。人間にしては生意気ね」

三人目は、全身が岩石でできたようなゴーレム型の魔族。

「……オレは『剛力』のタイタン。……潰す」

最後は、小柄だが鋭い目つきをした少年のような魔族。

「僕は『神速』のシュウ。……君がクロウかい? 見たところ、ただの人間だけど」

四天王がそれぞれの武器を構え、殺気を放つ。
背後の戦艦からも、魔族兵たちが槍を突き出している。
総勢五百といったところか。

「……誰だ、お前ら」

俺はコーヒーカップを持ったまま、呆れたように尋ねた。

「誰だと!? 我らはセリス様に忠誠を誓いし魔王軍の幹部だ! 貴様のような人間に、姫様が飼い慣らされているという噂を聞いて駆けつけたのだ!」

剣鬼ガルドが怒鳴る。

「飼い慣らされてるわけじゃない。パートナーだ」

「黙れ! 貴様が卑劣な洗脳魔法で姫様をたぶらかしているのは分かっている! 今すぐ姫様を解放し、その首を差し出せば、苦しまずに殺してやる!」

どうやら話が通じそうにない。
魔族というのは、どうしてこうも短絡的なのか。
セリスがいたら「部下の教育がなっておらん」と怒り出しそうだ。

「悪いが、今セリスは買い物……じゃなくて狩りに出てる。用があるなら出直してくれ」

「ふざけるな! 居留守を使う気か! ええい、者共! この屋敷ごと人間を制圧せよ!」

ガルドの号令で、魔族兵たちが一斉に鬨の声を上げた。
上空の戦艦からも、魔導砲の照準がこちらに向けられる。

「やれやれ。せっかく綺麗にした庭が汚れるな」

俺はため息をついた。
メルキセデクが眼鏡を直しながら前に出る。

「マスター。掃除いたしましょうか? これくらいの数なら、私の『殲滅モード』で三分もあれば……」

「いや、いい。お前の殲滅モードは庭ごと消し飛ばすからな。……ここは俺がやる」

俺は広場の中央へと歩み出た。
四天王たちが嘲笑う。

「ハッ! 一人で来るか! 舐められたものだな!」
「後悔させてあげるわ、坊や」

ガルドが大剣を抜き放つ。
ララが杖を掲げ、タイタンが拳を固め、シュウが短剣を構える。

「死ねェェェッ!」

四人が同時に襲いかかってきた。
ガルドの大剣が、俺の頭上から振り下ろされる。
その威力は岩山をも両断するだろう。

だが、俺は避けない。

「武器の手入れ、サボってるんじゃないか?」

俺は右手をかざした。

スキル発動、『物質編集(マテリアル・エディット)』。
対象:四天王の武器全て。
変更内容:【形状:ピコピコハンマー】【材質:ビニール】【攻撃力:0】

ボヨンッ!

「……は?」

ガルドの全力の振り下ろしが、俺の頭に当たり、情けない音を立てた。
彼の手にあるはずの剛剣は、いつの間にか赤と黄色の派手なピコピコハンマーに変わっていた。

「な、なんだこれは!? 俺様の魔剣グラムが……玩具に!?」

ガルドが目を剥く。

「あら? 私の杖も……これ、造花?」

ララの杖は、色とりどりの花束に変わっていた。
シュウの短剣は、ふにゃふにゃのバナナになっている。

「……オレの拳は……?」

タイタンが自分の手を見る。
彼の岩石のような拳は、フワフワのピンク色のボクシンググローブ(ウサギの絵柄付き)になっていた。

「な、何をした貴様ァッ!!」

ガルドがピコピコハンマーを振り回す。
ポヨ、ポヨ、と音がするだけで、俺にはそよ風程度のダメージもない。

「言っただろ。俺の敷地内では、危険物の持ち込みは禁止だ」

俺はニヤリと笑った。

「さて、次は防具だな。……暑苦しい鎧なんか着てると、熱中症になるぞ?」

スキル発動、『服装編集(ファッション・エディット)』。
対象:四天王および魔族兵全員。
変更内容:【衣装:水着(トロピカル仕様)】

シュンッ。

一瞬にして、戦場がビーチリゾートと化した。
ガルドの重厚な鎧は、ハイビスカス柄の海水パンツ一丁に。
ララのドレスは、際どいビキニに。
兵士たちも全員、海パンや競泳水着姿になってしまった。

「なっ……!? なんだこの格好はぁぁぁッ!?」
「いやぁぁん! 恥ずかしい!」

魔族たちが悲鳴を上げ、自分の体を隠そうとする。
威厳も殺気も台無しだ。

「貴様……! 我らを愚弄するか!」

ガルドが海パン姿で震える。

「愚弄? いやいや、クールビズだよ。……で、まだやるか?」

俺が一歩近づくと、四天王たちはジリジリと後退した。
武器は玩具、防具は水着。
これでは戦いようがない。

だが、ガルドは引かなかった。
さすがは四天王筆頭、プライドだけは高いらしい。

「おのれ……小細工を! だが、俺様の真の力は武器になど頼らん! 肉体そのものが凶器なのだ!」

ガルドが筋肉を膨張させ、殴りかかってくる。

「魔王流・剛拳突き!」

「そうか。なら、その自慢の筋肉も少し弄らせてもらおう」

スキル発動、『身体能力編集(ステータス・エディット)』。
対象:ガルド。
変更内容:【筋力:スライム並み】【敏捷性:カメ並み】

ガルドの拳が、スローモーションのように遅くなった。
そして、俺の頬に触れるか触れないかのところで、ふにゃりと力が抜けた。

「……あれ? 力が……入らない……?」

ガルドはその場に崩れ落ちた。
自分の体重すら支えられないほど、筋力が低下しているのだ。

「ひぃッ! ガルドがやられた!?」
「逃げろ! この男、ヤバい!」

他の三人がパニックになり、逃げ出そうとする。
上空の戦艦も回頭を始めた。

「逃がすかよ。……不法侵入と器物破損(庭の芝生を踏んだ罪)だ。働いて返してもらうぞ」

俺は指を鳴らした。

スキル発動、『空間編集』。
対象エリア:屋敷周辺一帯。
効果:【空間閉鎖】

見えない壁が出現し、四天王たちと戦艦を閉じ込めた。
彼らは壁に激突し、蠅のように落ちてくる。

「さて、どう料理してやろうか」

俺が彼らを見下ろしながら腕まくりをした、その時だった。

「ただいまー! 大物が獲れたぞクロウ!」

森の方から、セリスたちの明るい声が聞こえてきた。
彼女は巨大な魔獣(マンモスのような猪)を引きずりながら、上機嫌で戻ってきた。

「ん? なんだ、客か? ……む、その海水パンツの男、どこかで見覚えがあるような……」

セリスが首を傾げる。
地面に這いつくばっていたガルドが、涙を流して叫んだ。

「せ、セリス様ァァァッ!! ご無事でしたかァァッ!!」

「……あ? ガルドか? なんだその格好は。海にでも行くのか?」

「違います! こいつです! この悪魔のような人間が、俺たちの装備をこんなふざけたものに変えたのです!」

ガルドが俺を指差して訴える。
セリスは俺を見て、それからガルドたちを見て、腹を抱えて笑い出した。

「アハハハハ! 傑作だ! 四天王ともあろう者が、ピコピコハンマーに海パンとは! 魔王軍の恥さらしもいいところだな!」

「わ、笑い事ではありません! 姫様、今助けますぞ! さあ、こっちへ!」

ガルドが必死に手を伸ばすが、セリスは冷たく言い放った。

「助ける? 誰が誰をだ? ……勘違いするなよ、ガルド。我はこの男に捕らわれているわけではない」

セリスは俺の隣に立ち、自然と俺の腕に抱きついた。

「我はこの男の『強さ』に惚れ込んで、ここにいるのだ。……お前たち如きに後れを取るような男ではない」

「な……惚れ……て……?」

ガルドたちが絶句する。
あのアリ一匹近づけなかった孤高の姫君が、人間にデレている。
その事実は、彼らにとって俺のチート能力以上の衝撃だったようだ。

「そ、そんな……。では、我々は……」

「お前たちは邪魔だ。さっさと帰れ。……と言いたいところだが」

セリスが俺の顔色を伺う。

「クロウよ。こやつら、頭は悪いが体力だけはあるぞ。……ちょうど、開拓の人手が足りんと言っていたではないか?」

「……確かに」

俺はガルドたちを見回した。
五百人の魔族。
彼らを労働力として使えば、温泉リゾートの建設も、農地の開拓も、一気に進むだろう。

「よし、採用だ」

俺は宣言した。

「命は助けてやる。その代わり、今日からお前らは俺の『建設部隊』だ。……衣食住は保証してやる。文句がある奴は、今すぐ宇宙の果てまで飛ばしてやるが?」

「ひぃッ! や、やります! 働かせてください!」

ララやシュウが即座に土下座する。
ガルドも、セリスの冷ややかな視線に耐えかねて、渋々と頭を下げた。

「……姫様がそう仰るなら。……しかし! 俺様はまだ認めたわけではないぞ! いつか必ず、貴様を倒して姫様を取り戻す!」

「はいはい、期待してるよ」

こうして、魔王軍残党は俺たちの下僕……もとい、従業員として吸収された。
彼らの戦艦は解体され、資材として使われることになった。

その日の午後。
屋敷の周りでは、海パン姿の魔族たちがツルハシを振るい、整地作業に汗を流すシュールな光景が広がっていた。

「おい、そこの筋肉! もっと深く掘れ!」
「魔法使い班、水を出せ! コンクリートを練るぞ!」

現場監督となったメルキセデクの指示が飛ぶ。
ガルドは涙目で巨大な岩を運んでいる。

「くそぉ……俺様は四天王だぞ……なんで土木作業なんか……」

「文句を言うナ。働カザル者食ウベカラズダ」

隣で同じく岩を運んでいたヴェルドラ(人間の姿)が、先輩風を吹かせてガルドの尻を蹴り上げる。

「痛ぇッ! な、なんだこの怪力女は!?」

「アァン? 新入リガ口答エカ? 焼キ殺スゾ?」

ヴェルドラが竜の威圧を放つと、ガルドは「す、すみませんでしたァ!」と縮み上がった。
どうやら、ここでのヒエラルキーは彼らにとって地獄のようだ。

俺はテラスからその様子を眺め、コーヒーを啜った。

「戦力も増えたし、これでしばらくは安泰だな」

「うむ。……だが、少し人数が増えすぎて騒がしいな」

セリスが苦笑する。

「まあ、賑やかでいいじゃないですか。……それに、彼らも根は悪い人たちじゃなさそうですし」

アリシアがお茶を淹れながら微笑む。
かつて敵対していた魔族と聖女が、こうして同じテーブルを囲んでいるのも奇妙な話だ。

だが、そんな平穏も束の間だった。

夕刻。
メルキセデクが血相を変えてテラスに飛び込んできた。

「マスター! 緊急事態です!」

「どうした? また誰か来たのか?」

「いえ、王都方面の監視ネットワークから、異常な魔力反応を感知しました。……これは、ただ事ではありません」

メルキセデクが空中に映像を投影する。
そこには、黒い霧に包まれた王都の姿が映し出されていた。
そして、その霧の中から、無数の異形の怪物たちが溢れ出している。

「なんだ、あれは……?」

怪物たちは、魔族でも魔獣でもない。
黒い泥のような不定形の肉体に、無数の目や口がついた、見るもおぞましい存在だ。
それらが、王都の城壁を乗り越え、市民を襲っている。

「『魔神の眷属』……!」

セリスが息を呑む。

「間違いない。深淵の底に封じられていた、古い神の成れの果てだ。……誰かが封印を解いたのか?」

映像が切り替わり、王城のバルコニーに立つ人影がアップになる。
背中から黒い翼を生やし、狂気の笑みを浮かべている女。

「エリス……」

俺は呻いた。
堕ちた聖女エリス。
彼女の姿は、以前の大聖堂での気品ある姿とはかけ離れ、禍々しい魔女そのものになっていた。

『聞こえるか、クロウ……』

映像越しに、エリスの声が響いた。
どうやら、彼女もまた俺たちを監視していたらしい。

『貴方が逃げた場所は分かっています。……でも、貴方だけを殺してもつまらない。だから、まずは貴方が守ったこの国を、地獄に変えてあげることにしました』

エリスが手を掲げると、背後の空が割れ、巨大な黒い太陽のようなものが出現した。

『これは『蝕(エクリプス)』。魔界への門です。……あと三日で、この門は完全に開き、魔神本体が降臨します。そうなれば、この大陸は全て魔界の一部となるでしょう』

「馬鹿な……。自分も破滅するぞ!?」

アリシアが叫ぶ。

『破滅? ええ、結構ですわ。……私の望みは、貴方たちへの復讐だけ。世界なんてどうでもいいの』

エリスは狂ったように笑った。

『さあ、どうしますか? 安全な魔境で指をくわえて見ているか……それとも、もう一度英雄ごっこをしに来ますか?』

プツン。
映像が途切れた。

テラスに沈黙が落ちる。

「……やってくれるな」

俺はカップを置いた。
せっかく手に入れたスローライフだ。
関わりたくない。放っておけば、王都は滅びるだろう。
俺たちには関係ない場所だ。

だが。

「……クロウ」

セリスが俺を見た。
アリシアも、メルキセデクも、ヴェルドラも。
そして、庭で作業をしていたガルドたち魔族も、手を止めてこちらを見ている。

「王都には、俺の馴染みの店があるんだ」

俺は立ち上がった。

「『銀の月亭』のオムレツ、また食いたいだろ?」

「フフッ、違いないな。……それに、あの女の態度は気に食わん」

セリスが立ち上がり、拳を鳴らす。

「クロウ様……! はい、行きましょう! 私たちの手で、終わらせに!」

アリシアが杖を握りしめる。

「総員、戦闘準備だ!」

俺が号令をかけると、ガルドたちが「オオオッ!」と雄叫びを上げた。
まさかの魔王軍との共同戦線だ。

「ポチ、お前は留守番だ。……いや、空輸係を頼む」

「ポチジャナイ! ……ガ、任セロ! 全員背中ニ乗セテヤル!」

ヴェルドラが本来の巨大なドラゴンの姿に戻る。
その背中に、俺たちと、武装した魔王軍の精鋭たちが乗り込む。

「目指すは王都! 魔神退治だ!」

俺たちの最後の戦いが始まる。
最強の荷物持ちと、その愉快な仲間たちによる、世界救済の旅(出張版)。
待ってろよエリス。
その歪んだ復讐劇、俺がハッピーエンドに書き換えてやる。

(続く)

   ◇

次回予告

第23話 魔神化したエリスとの決戦。聖女の回復魔法を『広域殲滅魔法』に書き換える
王都は地獄と化していた。
溢れかえる魔神の眷属を、魔王軍と協力して蹴散らす俺たち。
そして、王城の玉座で待ち受けるエリス。
「来たのね、クロウ……」
魔神と融合し、不死身となった彼女に対し、俺は禁断の編集スキルを発動する。
「回復魔法だと思ったか? 残念、それは『自壊プログラム』だ」
因縁の対決、ついに決着!
そして、空から降りてくる『真の黒幕』とは――?
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