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第18話 二人の距離が近づく夜
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「王都に、『黒い巨人』が現れた……?」
アレクセイ様の執務室は、張り詰めた空気に支配されていた。
息を切らして報告に来た伝令の騎士は、恐怖と疲労で膝を震わせながら、王都の惨状を語り始めた。
「は、はい! 数日前の深夜、神殿の方角から突如として黒い煙が噴き上がり、それが凝縮して巨人の形を成したのです。大きさは城壁を優に超え、その体からは猛毒の瘴気を撒き散らしています!」
「ゴルダンめ……やりやがったな」
アレクセイ様が忌々しげに舌打ちをし、机をドンと叩いた。
普段は冷静な彼が感情を露わにするほど、事態は深刻なのだ。
「巨人は見境なく暴れ回り、すでに下町の大半が壊滅状態です。建物は腐り落ち、逃げ遅れた人々は瘴気に当てられて次々と倒れています。王宮魔導師団が応戦しましたが、魔法が一切通用せず……」
「魔法が効かない?」
「はい。炎も氷も、あの巨人の体に触れた瞬間に吸収されてしまうのです。物理攻撃も同様で、剣で斬りつけてもすぐに再生してしまうとか」
報告を聞くにつれ、私の胸の動悸が激しくなっていく。
魔法を吸収し、再生する巨人。そして猛毒の瘴気。
それは、古い文献で読んだことがある「厄災の魔獣」の特徴に酷似していた。
かつて国を滅ぼしかけたと言われる、伝説の怪物。
「……古代召喚術による『腐敗の巨人(ロト・ジャイアント)』か。禁忌中の禁忌に手を出すとは、あの古狸、正気を失ったか」
アレクセイ様は立ち上がり、窓の外、南の空を睨みつけた。
ここからでも、空の色がどす黒く変色しているのが分かる。
風に乗って漂ってくる腐臭は、さらに強くなっていた。
「閣下、いかがなさいますか。王都からの救援要請は来ておりませんが、このままでは被害が拡大する一方です」
「放っておけば、いずれこのノースエンドにも奴の手が伸びるだろう。腐敗は広がるものだ」
アレクセイ様は一瞬だけ私を見て、そして騎士に向き直った。
「ヴォルグ騎士団、第一部隊および第二部隊に出撃準備を命じろ。私も出る」
「はっ!」
騎士が敬礼をして部屋を出て行こうとした時、私は思わず声を上げていた。
「待ってください! 私も行きます!」
騎士が足を止め、アレクセイ様が驚いたように振り返る。
「エミリア、何を言っている。王都は今、地獄だぞ。君をそんな危険な場所へ連れて行けるわけがない」
「でも、魔法が効かないのでしょう? アレクセイ様の氷魔法でも倒せないかもしれません。……それに、あの巨人は『腐敗』の権化です。私の『浄化』の力がなければ、瘴気を払うことはできません!」
私の訴えに、アレクセイ様は眉を寄せた。
彼は私の安全を第一に考えてくれている。それは痛いほど分かる。
でも、だからこそ、私は彼を一人で行かせたくなかった。
「アレクセイ様は言いましたよね。私は『氷の城の女神』だと。……女神様が安全な場所で隠れていては、誰も守れません」
私は彼の前に歩み寄り、その瞳を真っ直ぐに見つめた。
「お願いします。私を連れて行ってください。あなたの背中を守らせてください。……私はもう、守られるだけのお姫様じゃありません」
長い沈黙があった。
アレクセイ様は葛藤するように瞳を揺らしていたが、やがて深くため息をつき、私の肩を掴んだ。
「……分かった。君の頑固さは、私の想像を超えているな」
「あなた譲りですから」
「勝てないな」
彼は苦笑し、そして真剣な表情で言った。
「ただし、条件がある。私の半径三メートル以内から離れるな。私の目の届かないところには行くな。……いいな?」
「はい! 約束します!」
こうして、私たちの出撃が決まった。
出発は明朝。
ノースエンドの総力を挙げた、最初で最後の決戦となる。
* * *
その夜。
出撃準備に追われる城内は、異様な緊張感に包まれていた。
私も薬草や保存食の準備を手伝い、ようやく自室に戻った頃には、日付が変わろうとしていた。
「……眠れない」
ベッドに入っても、目が冴えてしまって眠れそうになかった。
明日には戦場へ向かう。
あの恐ろしい巨人と対峙する。
そして、かつての故郷である王都が、変わり果てた姿になっているのを見ることになる。
不安がないと言えば嘘になる。
コンコン。
控えめなノックの音がして、ドアが少しだけ開いた。
「……起きているか?」
「アレクセイ様」
彼だった。
寝間着の上にガウンを羽織り、髪を下ろした姿は、普段の厳格な公爵様とは違う、無防備な色気を漂わせている。
手には、湯気の立つマグカップを二つ持っていた。
「ホットミルクだ。少しハチミツを入れてある」
「ありがとうございます。……アレクセイ様も、眠れませんか?」
「ああ。遠足前の子供のようにな」
彼は冗談めかして言ったけれど、その瞳には微かな憂いの色が滲んでいた。
彼は私のベッドサイドに椅子を引き寄せ、腰を下ろした。
二人で並んで、温かいミルクを飲む。
甘い香りと温もりが、張り詰めた神経を少しだけ緩めてくれる。
「……エミリア。本当に良かったのか?」
「え?」
「王都へ行くことだ。君にとっては、辛い記憶しかない場所だろう。無理をして同行を志願したのではないか?」
彼はカップを見つめたまま、静かに問いかけた。
「いいえ。無理なんてしていません。……確かに、王都には嫌な思い出がたくさんあります。でも、それ以上に、私には守りたいものがあるんです」
「守りたいもの?」
「はい。アレクセイ様が愛してくれたこの世界です。それに……王都にだって、いい思い出はありましたから」
私は窓の外、暗い空を見上げた。
「下町のパン屋のおばさんがくれた焼きたてのパンの味とか、花屋の女の子が『聖女様』って呼んでくれた笑顔とか。……そういう小さな幸せを守りたいんです」
私の言葉に、アレクセイ様は顔を上げ、切なげな瞳で私を見つめた。
「君は……本当に強いな。そして優しい」
「そんなことありません。私はただ、アレクセイ様の隣にいたいだけです。あなたが傷つくのを、黙って見ているなんてできません」
私はカップをサイドテーブルに置き、彼の手を握った。
彼の手は冷たかった。
「氷の死神」と呼ばれる彼でも、恐怖や不安を感じることはあるのだ。
失うことへの恐怖。
それはきっと、私を失うことへの恐れだ。
「アレクセイ様。……こっちに来てください」
私はベッドの端に寄り、空いたスペースを叩いた。
「え……?」
「今夜は寒いですから。……温め合って眠りませんか?」
大胆な誘いに、自分でも顔が熱くなるのが分かった。
でも、今は言葉よりも体温が必要だと感じたのだ。
アレクセイ様は驚いたように目を見開いたが、やがて優しく微笑み、ガウンを脱いでベッドに入ってきた。
彼の大きな体が、私を包み込む。
背中に回された腕の力強さと、伝わってくる鼓動の速さ。
同じだ。彼もドキドキしている。
「……暖かいな」
「はい。アレクセイ様は、ひんやりしていて気持ちいいです」
「それは褒め言葉か?」
「もちろんです」
私たちは身を寄せ合い、同じ毛布にくるまった。
至近距離で見つめ合うと、彼の長いまつ毛や、通った鼻筋の美しさが際立って見える。
そして、その瞳に映る私も、きっと同じような顔をしているのだろう。
「エミリア」
「はい」
「もし、この戦いが終わったら……」
彼は言いかけて、言葉を飲み込んだ。
死亡フラグのような台詞はやめてください、と言おうとしたけれど、彼の表情があまりにも真剣だったので、私は黙って続きを待った。
「……いや、なんでもない。勝ってから言うことにする」
「ずるいです」
「男とはずるい生き物なんだよ」
彼はふっと笑い、私の髪を撫でた。
「エミリア。……キスしてもいいか?」
直球すぎる問いかけに、私の心臓が跳ね上がる。
ダメな理由なんてない。
私は無言で頷き、目を閉じた。
唇に、柔らかい感触が触れる。
最初は触れるだけの、優しい口づけ。
ハチミツ入りミルクの甘い味がした。
一度離れ、お互いの瞳を確認し合い、そして二度目はもっと深く。
彼の腕が私の背中を強く抱き寄せ、私も彼の首に腕を回す。
世界が溶けていくような感覚。
不安も恐怖も、すべてが彼への愛おしさに塗り替えられていく。
「……ん……」
息継ぎのために唇が離れると、熱っぽい吐息が漏れた。
アレクセイ様の瞳が、とろりと潤んで私を見下ろしている。
その色気にあてられて、私は頭がくらくらした。
「愛している、エミリア。……誰にも渡さない。死神にだって渡すものか」
「私もです。……アレクセイ様は、私のものですから」
私が強気に言うと、彼は嬉しそうに目を細め、再び唇を重ねてきた。
その夜、私たちは何度もキスをし、お互いの体温を確認し合いながら、深い眠りにつくまで抱き合っていた。
これ以上の一線は越えなかったけれど、心は完全に一つになっていた。
明日の戦いへの恐怖は消え、代わりに「絶対に生きて帰る」という強い決意が、二人の胸に刻まれた夜だった。
* * *
翌朝。
ノースエンドの空は、快晴だった。
まるで私たちの出陣を祝福するかのような青空。
だが、南の地平線の彼方には、どす黒い雲が渦巻いているのが見えた。
城門の前には、ヴォルグ騎士団の精鋭五百名が整列していた。
彼らの装備は、私の魔力で強化された「ミスリル合金」の鎧と、氷属性の魔石が埋め込まれた武器だ。
さらに、後方支援部隊として、私が育てた回復効果の高い薬草や食料を満載した馬車隊も続く。
「総員、聞け!」
アレクセイ様が愛馬「白銀(シルバー)」に跨り、剣を掲げて叫んだ。
その姿は、昨夜の甘い表情とは別人の、冷徹にして勇猛な指揮官の顔だった。
「我々の目的地は王都だ! だが、王家を救うために行くのではない! この大地を腐らせ、我々の平穏を脅かす害虫を駆除するために行くのだ!」
「「「オオオオオッ!!」」」
騎士たちの雄叫びが轟く。
「この戦い、ただの討伐戦ではない。我らが『女神』エミリア様を守り、彼女の威光を世界に示すための聖戦である! 一人として欠けることは許さん! 全員で生きて帰り、勝利の美酒を飲むぞ!」
「「「ヴォルグ公爵万歳! エミリア様万歳!!」」」
士気は最高潮だ。
私もアレクセイ様の隣で、彼が用意してくれた白馬に跨っていた。
着ているのは、『氷雪の聖女』のドレスを戦闘用に改良した、機動性の高い乗馬服だ。
腰には護身用の短剣と、アレクセイ様から渡された魔導杖を帯びている。
「準備はいいか、エミリア」
「はい、いつでも」
アレクセイ様が私を見て、ニヤリと笑った。
「では、行こうか。……最高の『ざまぁ』の最終章だ」
馬のいななきと共に、私たちは駆け出した。
雪解けの大地を蹴り、南へ。
腐敗と絶望に覆われた王都へ向かって。
道中、私たちは異様な光景を目にすることになった。
王都から逃げ出してきた避難民の列だ。
彼らは着の身着のまま、恐怖に顔を歪めて北へ向かって歩いていた。
私たちを見つけると、彼らは驚き、そして縋るような目を向けてきた。
「あ、あれはヴォルグ公爵家の旗だ!」
「助かった……! 北の軍が助けに来てくれたぞ!」
「見て! あの方……エミリア様じゃないか!?」
私の姿に気づいた人々が、涙を流して手を振る。
「エミリア様! どうかお助けください!」
「私たちが間違っておりました! 貴女様こそが真の聖女様でした!」
「子供が……子供が病気なのです!」
悲痛な叫び。
私は馬を止めようとしたが、アレクセイ様が首を横に振った。
「止まるな、エミリア。ここで一人一人を治療していては、元凶を絶つ前に君が倒れてしまう」
冷たい言葉に聞こえるかもしれないが、それが真実だった。
巨人を倒さない限り、瘴気は消えない。
目の前の数人を救っている間に、王都では数百人が死ぬかもしれないのだ。
「……後方部隊に、避難民の保護と治療を指示しておいた。彼らは我々の領地で受け入れる。だから、君は前だけを見ろ」
アレクセイ様の配慮に、私は胸が熱くなった。
彼は冷酷なわけではない。誰よりも全体を見ているのだ。
「はい。……ありがとうございます」
私は涙をこらえ、前を向いた。
待っていて。すぐに終わらせるから。
* * *
二日後。
私たちはついに、王都を見下ろす丘の上に到着した。
そこで見た光景に、全員が息を呑んだ。
「これは……ひどい」
かつて「白亜の都」と呼ばれた美しい王都サンクチュアリは、見る影もなかった。
街全体が黒い瘴気に包まれ、建物の多くが崩壊している。
そして、その中心、王城の近くに、それはいた。
『黒い巨人』。
泥とヘドロが固まったような醜悪な体躯。
その大きさは王城の尖塔と同じくらいあり、動くたびに周囲の建物が飴細工のように崩れ落ちていく。
巨人の表面には無数の苦悶の表情が浮かび上がり、耳障りな呻き声を上げている。
「グオォォォ……エミ……リア……」
「え?」
耳を疑った。
あの巨人、私の名前を呼んだ?
「……間違いない。あの巨人の核になっているのは、ゴルダンだ」
アレクセイ様が遠見の魔導眼鏡を下ろしながら言った。
その顔には、かつてないほどの嫌悪感が浮かんでいる。
「奴の執着心が、召喚した魔物に取り込まれ、逆に魔物を支配してしまったようだな。……醜悪極まりない」
ゴルダン神官長の私への逆恨み。それが、あんな化け物を生み出したのだ。
私のせいで、王都がこんなことに……。
罪悪感で押しつぶされそうになった時、アレクセイ様の手が私の頬を叩いた。
ペチン、と軽い音。
「しっかりしろ。君のせいじゃない。これは奴自身の罪だ」
「アレクセイ様……」
「君が背負うべきは、ここから先の未来だ。過去の亡霊に心を囚われるな」
彼の力強い言葉に、私はハッとした。
そうだ。私がここで挫けてどうする。
あんな悲しい化け物を、浄化してあげるのが、かつて聖女と呼ばれた私の最後の務めだ。
「……はい。行きます」
私は杖を握りしめた。
「全軍、突撃!!」
アレクセイ様の号令と共に、ヴォルグ騎士団が丘を一気に駆け下りた。
私たちは王都の城門(すでに半壊していた)を突破し、地獄と化した市街地へと突入した。
「グアアアア!」
巨人が私たちに気づき、ヘドロの腕を振り下ろしてくる。
それは石畳を砕き、衝撃波となって襲いかかった。
「散開! 氷壁展開!」
アレクセイ様が叫ぶと同時に、騎士たちが一斉に防御陣形をとる。
巨大な氷の壁が出現し、衝撃波を受け止める。
しかし、氷は瘴気に触れた端から黒く変色し、溶けていく。
「やはり、魔法耐性が高いな。……だが、凍らせて砕けないものなどない!」
アレクセイ様が愛馬から飛び降り、空へと舞い上がった。
彼は風魔法で滞空しながら、両手から極大の氷魔法を放つ。
「氷結界・絶対零度(アブソリュート・ゼロ)!」
白い閃光が巨人を包み込む。
巨人の動きが一瞬で止まり、その巨大な体が氷漬けにされた。
やったか?
誰もがそう思った次の瞬間。
パキ……パキパキ……ドガァァァン!!
氷が内側から砕け散った。
中から現れた巨人は、以前よりも一回り大きくなっていた。
「ムダダ……魔法ハ……効カヌ……!」
巨人の腹部に、ゴルダン神官長の顔が浮かび上がり、醜く歪んで笑った。
「エミリアァァ! ドコダァァ! 私ヲ愛セェェ! 私ニ力ヲ寄越セェェ!」
「……気持ち悪い」
私は生理的な嫌悪感で身震いした。
あんなものが神の代行者を名乗っていたなんて。
「エミリア、下がっていろ! 私がなんとかする!」
アレクセイ様が剣を抜き、再び斬りかかろうとする。
でも、私は知っていた。
彼の攻撃だけでは、あの巨人は倒せない。
あれは物理的な存在ではなく、負の感情と瘴気の塊だからだ。
浄化しなければ、何度でも再生する。
「いいえ、アレクセイ様。……私が出ます」
私は馬を降り、杖を構えて巨人の前へと歩み出た。
「エミリア!?」
「私を守ってくれると言いましたよね。だから、今度は私があなたを守ります」
私は深く息を吸い込んだ。
周りの騒音が消え、心臓の鼓動だけが聞こえる。
体の中の魔力を練り上げる。
怒りでも、恐怖でもなく。
ただ、悲しみと慈しみを込めて。
「……もう、終わりにしましょう」
私が杖を掲げたその時。
瓦礫の山から、一人の男が這い出してきた。
ボロボロの服、血走った目。
カイル殿下だった。
「エ、エミリア……! 助けてくれ! 俺だ、カイルだ!」
彼は私に気づくと、情けなく手を伸ばしてきた。
巨人が彼に反応する。
「カイル……殿下……? 邪魔ダァァァ!」
巨人の腕が、カイル殿下に向かって振り下ろされた。
このままでは、彼は潰される。
私は咄嗟に叫んだ。
「アレクセイ様! 彼を!」
アレクセイ様は舌打ちを一つして、氷の礫を放ち、カイル殿下を弾き飛ばした。
間一髪、巨人の拳は地面を叩き割った。
カイル殿下はゴロゴロと転がり、私の足元で止まった。
「ひぃっ、ひぃぃ……!」
「下がっていてください、カイル殿下。……足手まといです」
私は冷たく言い捨て、巨人に向き直った。
さあ、決着の時だ。
私の杖から、まばゆい黄金の光が溢れ出し始めた。
それは王都の灰色の空を切り裂き、天へと伸びる光の柱となった。
続く
アレクセイ様の執務室は、張り詰めた空気に支配されていた。
息を切らして報告に来た伝令の騎士は、恐怖と疲労で膝を震わせながら、王都の惨状を語り始めた。
「は、はい! 数日前の深夜、神殿の方角から突如として黒い煙が噴き上がり、それが凝縮して巨人の形を成したのです。大きさは城壁を優に超え、その体からは猛毒の瘴気を撒き散らしています!」
「ゴルダンめ……やりやがったな」
アレクセイ様が忌々しげに舌打ちをし、机をドンと叩いた。
普段は冷静な彼が感情を露わにするほど、事態は深刻なのだ。
「巨人は見境なく暴れ回り、すでに下町の大半が壊滅状態です。建物は腐り落ち、逃げ遅れた人々は瘴気に当てられて次々と倒れています。王宮魔導師団が応戦しましたが、魔法が一切通用せず……」
「魔法が効かない?」
「はい。炎も氷も、あの巨人の体に触れた瞬間に吸収されてしまうのです。物理攻撃も同様で、剣で斬りつけてもすぐに再生してしまうとか」
報告を聞くにつれ、私の胸の動悸が激しくなっていく。
魔法を吸収し、再生する巨人。そして猛毒の瘴気。
それは、古い文献で読んだことがある「厄災の魔獣」の特徴に酷似していた。
かつて国を滅ぼしかけたと言われる、伝説の怪物。
「……古代召喚術による『腐敗の巨人(ロト・ジャイアント)』か。禁忌中の禁忌に手を出すとは、あの古狸、正気を失ったか」
アレクセイ様は立ち上がり、窓の外、南の空を睨みつけた。
ここからでも、空の色がどす黒く変色しているのが分かる。
風に乗って漂ってくる腐臭は、さらに強くなっていた。
「閣下、いかがなさいますか。王都からの救援要請は来ておりませんが、このままでは被害が拡大する一方です」
「放っておけば、いずれこのノースエンドにも奴の手が伸びるだろう。腐敗は広がるものだ」
アレクセイ様は一瞬だけ私を見て、そして騎士に向き直った。
「ヴォルグ騎士団、第一部隊および第二部隊に出撃準備を命じろ。私も出る」
「はっ!」
騎士が敬礼をして部屋を出て行こうとした時、私は思わず声を上げていた。
「待ってください! 私も行きます!」
騎士が足を止め、アレクセイ様が驚いたように振り返る。
「エミリア、何を言っている。王都は今、地獄だぞ。君をそんな危険な場所へ連れて行けるわけがない」
「でも、魔法が効かないのでしょう? アレクセイ様の氷魔法でも倒せないかもしれません。……それに、あの巨人は『腐敗』の権化です。私の『浄化』の力がなければ、瘴気を払うことはできません!」
私の訴えに、アレクセイ様は眉を寄せた。
彼は私の安全を第一に考えてくれている。それは痛いほど分かる。
でも、だからこそ、私は彼を一人で行かせたくなかった。
「アレクセイ様は言いましたよね。私は『氷の城の女神』だと。……女神様が安全な場所で隠れていては、誰も守れません」
私は彼の前に歩み寄り、その瞳を真っ直ぐに見つめた。
「お願いします。私を連れて行ってください。あなたの背中を守らせてください。……私はもう、守られるだけのお姫様じゃありません」
長い沈黙があった。
アレクセイ様は葛藤するように瞳を揺らしていたが、やがて深くため息をつき、私の肩を掴んだ。
「……分かった。君の頑固さは、私の想像を超えているな」
「あなた譲りですから」
「勝てないな」
彼は苦笑し、そして真剣な表情で言った。
「ただし、条件がある。私の半径三メートル以内から離れるな。私の目の届かないところには行くな。……いいな?」
「はい! 約束します!」
こうして、私たちの出撃が決まった。
出発は明朝。
ノースエンドの総力を挙げた、最初で最後の決戦となる。
* * *
その夜。
出撃準備に追われる城内は、異様な緊張感に包まれていた。
私も薬草や保存食の準備を手伝い、ようやく自室に戻った頃には、日付が変わろうとしていた。
「……眠れない」
ベッドに入っても、目が冴えてしまって眠れそうになかった。
明日には戦場へ向かう。
あの恐ろしい巨人と対峙する。
そして、かつての故郷である王都が、変わり果てた姿になっているのを見ることになる。
不安がないと言えば嘘になる。
コンコン。
控えめなノックの音がして、ドアが少しだけ開いた。
「……起きているか?」
「アレクセイ様」
彼だった。
寝間着の上にガウンを羽織り、髪を下ろした姿は、普段の厳格な公爵様とは違う、無防備な色気を漂わせている。
手には、湯気の立つマグカップを二つ持っていた。
「ホットミルクだ。少しハチミツを入れてある」
「ありがとうございます。……アレクセイ様も、眠れませんか?」
「ああ。遠足前の子供のようにな」
彼は冗談めかして言ったけれど、その瞳には微かな憂いの色が滲んでいた。
彼は私のベッドサイドに椅子を引き寄せ、腰を下ろした。
二人で並んで、温かいミルクを飲む。
甘い香りと温もりが、張り詰めた神経を少しだけ緩めてくれる。
「……エミリア。本当に良かったのか?」
「え?」
「王都へ行くことだ。君にとっては、辛い記憶しかない場所だろう。無理をして同行を志願したのではないか?」
彼はカップを見つめたまま、静かに問いかけた。
「いいえ。無理なんてしていません。……確かに、王都には嫌な思い出がたくさんあります。でも、それ以上に、私には守りたいものがあるんです」
「守りたいもの?」
「はい。アレクセイ様が愛してくれたこの世界です。それに……王都にだって、いい思い出はありましたから」
私は窓の外、暗い空を見上げた。
「下町のパン屋のおばさんがくれた焼きたてのパンの味とか、花屋の女の子が『聖女様』って呼んでくれた笑顔とか。……そういう小さな幸せを守りたいんです」
私の言葉に、アレクセイ様は顔を上げ、切なげな瞳で私を見つめた。
「君は……本当に強いな。そして優しい」
「そんなことありません。私はただ、アレクセイ様の隣にいたいだけです。あなたが傷つくのを、黙って見ているなんてできません」
私はカップをサイドテーブルに置き、彼の手を握った。
彼の手は冷たかった。
「氷の死神」と呼ばれる彼でも、恐怖や不安を感じることはあるのだ。
失うことへの恐怖。
それはきっと、私を失うことへの恐れだ。
「アレクセイ様。……こっちに来てください」
私はベッドの端に寄り、空いたスペースを叩いた。
「え……?」
「今夜は寒いですから。……温め合って眠りませんか?」
大胆な誘いに、自分でも顔が熱くなるのが分かった。
でも、今は言葉よりも体温が必要だと感じたのだ。
アレクセイ様は驚いたように目を見開いたが、やがて優しく微笑み、ガウンを脱いでベッドに入ってきた。
彼の大きな体が、私を包み込む。
背中に回された腕の力強さと、伝わってくる鼓動の速さ。
同じだ。彼もドキドキしている。
「……暖かいな」
「はい。アレクセイ様は、ひんやりしていて気持ちいいです」
「それは褒め言葉か?」
「もちろんです」
私たちは身を寄せ合い、同じ毛布にくるまった。
至近距離で見つめ合うと、彼の長いまつ毛や、通った鼻筋の美しさが際立って見える。
そして、その瞳に映る私も、きっと同じような顔をしているのだろう。
「エミリア」
「はい」
「もし、この戦いが終わったら……」
彼は言いかけて、言葉を飲み込んだ。
死亡フラグのような台詞はやめてください、と言おうとしたけれど、彼の表情があまりにも真剣だったので、私は黙って続きを待った。
「……いや、なんでもない。勝ってから言うことにする」
「ずるいです」
「男とはずるい生き物なんだよ」
彼はふっと笑い、私の髪を撫でた。
「エミリア。……キスしてもいいか?」
直球すぎる問いかけに、私の心臓が跳ね上がる。
ダメな理由なんてない。
私は無言で頷き、目を閉じた。
唇に、柔らかい感触が触れる。
最初は触れるだけの、優しい口づけ。
ハチミツ入りミルクの甘い味がした。
一度離れ、お互いの瞳を確認し合い、そして二度目はもっと深く。
彼の腕が私の背中を強く抱き寄せ、私も彼の首に腕を回す。
世界が溶けていくような感覚。
不安も恐怖も、すべてが彼への愛おしさに塗り替えられていく。
「……ん……」
息継ぎのために唇が離れると、熱っぽい吐息が漏れた。
アレクセイ様の瞳が、とろりと潤んで私を見下ろしている。
その色気にあてられて、私は頭がくらくらした。
「愛している、エミリア。……誰にも渡さない。死神にだって渡すものか」
「私もです。……アレクセイ様は、私のものですから」
私が強気に言うと、彼は嬉しそうに目を細め、再び唇を重ねてきた。
その夜、私たちは何度もキスをし、お互いの体温を確認し合いながら、深い眠りにつくまで抱き合っていた。
これ以上の一線は越えなかったけれど、心は完全に一つになっていた。
明日の戦いへの恐怖は消え、代わりに「絶対に生きて帰る」という強い決意が、二人の胸に刻まれた夜だった。
* * *
翌朝。
ノースエンドの空は、快晴だった。
まるで私たちの出陣を祝福するかのような青空。
だが、南の地平線の彼方には、どす黒い雲が渦巻いているのが見えた。
城門の前には、ヴォルグ騎士団の精鋭五百名が整列していた。
彼らの装備は、私の魔力で強化された「ミスリル合金」の鎧と、氷属性の魔石が埋め込まれた武器だ。
さらに、後方支援部隊として、私が育てた回復効果の高い薬草や食料を満載した馬車隊も続く。
「総員、聞け!」
アレクセイ様が愛馬「白銀(シルバー)」に跨り、剣を掲げて叫んだ。
その姿は、昨夜の甘い表情とは別人の、冷徹にして勇猛な指揮官の顔だった。
「我々の目的地は王都だ! だが、王家を救うために行くのではない! この大地を腐らせ、我々の平穏を脅かす害虫を駆除するために行くのだ!」
「「「オオオオオッ!!」」」
騎士たちの雄叫びが轟く。
「この戦い、ただの討伐戦ではない。我らが『女神』エミリア様を守り、彼女の威光を世界に示すための聖戦である! 一人として欠けることは許さん! 全員で生きて帰り、勝利の美酒を飲むぞ!」
「「「ヴォルグ公爵万歳! エミリア様万歳!!」」」
士気は最高潮だ。
私もアレクセイ様の隣で、彼が用意してくれた白馬に跨っていた。
着ているのは、『氷雪の聖女』のドレスを戦闘用に改良した、機動性の高い乗馬服だ。
腰には護身用の短剣と、アレクセイ様から渡された魔導杖を帯びている。
「準備はいいか、エミリア」
「はい、いつでも」
アレクセイ様が私を見て、ニヤリと笑った。
「では、行こうか。……最高の『ざまぁ』の最終章だ」
馬のいななきと共に、私たちは駆け出した。
雪解けの大地を蹴り、南へ。
腐敗と絶望に覆われた王都へ向かって。
道中、私たちは異様な光景を目にすることになった。
王都から逃げ出してきた避難民の列だ。
彼らは着の身着のまま、恐怖に顔を歪めて北へ向かって歩いていた。
私たちを見つけると、彼らは驚き、そして縋るような目を向けてきた。
「あ、あれはヴォルグ公爵家の旗だ!」
「助かった……! 北の軍が助けに来てくれたぞ!」
「見て! あの方……エミリア様じゃないか!?」
私の姿に気づいた人々が、涙を流して手を振る。
「エミリア様! どうかお助けください!」
「私たちが間違っておりました! 貴女様こそが真の聖女様でした!」
「子供が……子供が病気なのです!」
悲痛な叫び。
私は馬を止めようとしたが、アレクセイ様が首を横に振った。
「止まるな、エミリア。ここで一人一人を治療していては、元凶を絶つ前に君が倒れてしまう」
冷たい言葉に聞こえるかもしれないが、それが真実だった。
巨人を倒さない限り、瘴気は消えない。
目の前の数人を救っている間に、王都では数百人が死ぬかもしれないのだ。
「……後方部隊に、避難民の保護と治療を指示しておいた。彼らは我々の領地で受け入れる。だから、君は前だけを見ろ」
アレクセイ様の配慮に、私は胸が熱くなった。
彼は冷酷なわけではない。誰よりも全体を見ているのだ。
「はい。……ありがとうございます」
私は涙をこらえ、前を向いた。
待っていて。すぐに終わらせるから。
* * *
二日後。
私たちはついに、王都を見下ろす丘の上に到着した。
そこで見た光景に、全員が息を呑んだ。
「これは……ひどい」
かつて「白亜の都」と呼ばれた美しい王都サンクチュアリは、見る影もなかった。
街全体が黒い瘴気に包まれ、建物の多くが崩壊している。
そして、その中心、王城の近くに、それはいた。
『黒い巨人』。
泥とヘドロが固まったような醜悪な体躯。
その大きさは王城の尖塔と同じくらいあり、動くたびに周囲の建物が飴細工のように崩れ落ちていく。
巨人の表面には無数の苦悶の表情が浮かび上がり、耳障りな呻き声を上げている。
「グオォォォ……エミ……リア……」
「え?」
耳を疑った。
あの巨人、私の名前を呼んだ?
「……間違いない。あの巨人の核になっているのは、ゴルダンだ」
アレクセイ様が遠見の魔導眼鏡を下ろしながら言った。
その顔には、かつてないほどの嫌悪感が浮かんでいる。
「奴の執着心が、召喚した魔物に取り込まれ、逆に魔物を支配してしまったようだな。……醜悪極まりない」
ゴルダン神官長の私への逆恨み。それが、あんな化け物を生み出したのだ。
私のせいで、王都がこんなことに……。
罪悪感で押しつぶされそうになった時、アレクセイ様の手が私の頬を叩いた。
ペチン、と軽い音。
「しっかりしろ。君のせいじゃない。これは奴自身の罪だ」
「アレクセイ様……」
「君が背負うべきは、ここから先の未来だ。過去の亡霊に心を囚われるな」
彼の力強い言葉に、私はハッとした。
そうだ。私がここで挫けてどうする。
あんな悲しい化け物を、浄化してあげるのが、かつて聖女と呼ばれた私の最後の務めだ。
「……はい。行きます」
私は杖を握りしめた。
「全軍、突撃!!」
アレクセイ様の号令と共に、ヴォルグ騎士団が丘を一気に駆け下りた。
私たちは王都の城門(すでに半壊していた)を突破し、地獄と化した市街地へと突入した。
「グアアアア!」
巨人が私たちに気づき、ヘドロの腕を振り下ろしてくる。
それは石畳を砕き、衝撃波となって襲いかかった。
「散開! 氷壁展開!」
アレクセイ様が叫ぶと同時に、騎士たちが一斉に防御陣形をとる。
巨大な氷の壁が出現し、衝撃波を受け止める。
しかし、氷は瘴気に触れた端から黒く変色し、溶けていく。
「やはり、魔法耐性が高いな。……だが、凍らせて砕けないものなどない!」
アレクセイ様が愛馬から飛び降り、空へと舞い上がった。
彼は風魔法で滞空しながら、両手から極大の氷魔法を放つ。
「氷結界・絶対零度(アブソリュート・ゼロ)!」
白い閃光が巨人を包み込む。
巨人の動きが一瞬で止まり、その巨大な体が氷漬けにされた。
やったか?
誰もがそう思った次の瞬間。
パキ……パキパキ……ドガァァァン!!
氷が内側から砕け散った。
中から現れた巨人は、以前よりも一回り大きくなっていた。
「ムダダ……魔法ハ……効カヌ……!」
巨人の腹部に、ゴルダン神官長の顔が浮かび上がり、醜く歪んで笑った。
「エミリアァァ! ドコダァァ! 私ヲ愛セェェ! 私ニ力ヲ寄越セェェ!」
「……気持ち悪い」
私は生理的な嫌悪感で身震いした。
あんなものが神の代行者を名乗っていたなんて。
「エミリア、下がっていろ! 私がなんとかする!」
アレクセイ様が剣を抜き、再び斬りかかろうとする。
でも、私は知っていた。
彼の攻撃だけでは、あの巨人は倒せない。
あれは物理的な存在ではなく、負の感情と瘴気の塊だからだ。
浄化しなければ、何度でも再生する。
「いいえ、アレクセイ様。……私が出ます」
私は馬を降り、杖を構えて巨人の前へと歩み出た。
「エミリア!?」
「私を守ってくれると言いましたよね。だから、今度は私があなたを守ります」
私は深く息を吸い込んだ。
周りの騒音が消え、心臓の鼓動だけが聞こえる。
体の中の魔力を練り上げる。
怒りでも、恐怖でもなく。
ただ、悲しみと慈しみを込めて。
「……もう、終わりにしましょう」
私が杖を掲げたその時。
瓦礫の山から、一人の男が這い出してきた。
ボロボロの服、血走った目。
カイル殿下だった。
「エ、エミリア……! 助けてくれ! 俺だ、カイルだ!」
彼は私に気づくと、情けなく手を伸ばしてきた。
巨人が彼に反応する。
「カイル……殿下……? 邪魔ダァァァ!」
巨人の腕が、カイル殿下に向かって振り下ろされた。
このままでは、彼は潰される。
私は咄嗟に叫んだ。
「アレクセイ様! 彼を!」
アレクセイ様は舌打ちを一つして、氷の礫を放ち、カイル殿下を弾き飛ばした。
間一髪、巨人の拳は地面を叩き割った。
カイル殿下はゴロゴロと転がり、私の足元で止まった。
「ひぃっ、ひぃぃ……!」
「下がっていてください、カイル殿下。……足手まといです」
私は冷たく言い捨て、巨人に向き直った。
さあ、決着の時だ。
私の杖から、まばゆい黄金の光が溢れ出し始めた。
それは王都の灰色の空を切り裂き、天へと伸びる光の柱となった。
続く
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