あにゃ♡は七転八倒の末、はぴえん꒰∪´ɞ̴̶̷ ·̫ ɞ̴̶̷ ꒱՞♡に滑り込めるのかっ!?

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二話:踊れ、踊れ、踊れ、たとえ滑稽でも、それが恋なら踊らな損☆ソン☆の巻

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 都内住み関西人とのやり取りはその後も順調に続いた。何を隠そう、あにゃは文章のやり取りはそれなりに得意である。相手のことをあれやこれや聞くのは得意だし、相手が話し下手だと分かれば自分の話や世間の話で間を繋ぐのも嫌ではない。ピンと来た相手はすぐにリアルに持ち込むより、ラリーを長引かせてじっくり様子を見るようにしている。……その方が後でガッカリしないからだ。
 ——ただいま、あにゃ。今日は寒いね。
 ——おかえり、Rてゃ♡残業えらーい!今日寒いよね、スタバホットにしちゃった₍ᐢ o̴̶̷᷄ ̫ o̴̶̷̥᷅ ᐢ₎
 ——ほんまに。スタバ、今の期間限定は苺のフラペ?今日はきついね。笑
 ——そ。だからカフェモカのソイカスタムにした♡
 ——それは絶対、美味いやつ。
(あ~……癒し~~。セフレ、飲み友とは別の癒し~♡)
 キュンキュン♡メロメロ♡しながら自室のベッドの上で転がり回るあにゃ。他にもやりとりしている相手はいるが、この〝Rアール〟は群を抜いて理想的な相手である。
「こっちが気を使わなくても会話が続くし、むしろリードされてるまである?こんなの久しぶりかも、会ってみたいなぁ。アプリ交換するなり、ばんばん写真送ってこないのも好感度高いんよ……も~Rてゃしか勝たん♡」
 ——あ、ね。そういえば。今週の土曜日のランチ、空いてる?初顔合わせも兼ねて、カフェご飯、行かない?
(キ、キターーーーーーーーーーーッ!)
 待ち望んでいたお誘いに、あにゃの胸がとくん♡とくん♡と高鳴る。断る理由なんて一つもなかった。
 ——空いてる!どこ行こっかっ♡( > ·̫ <⸝⸝ᐢ )
 あれこれ提案するつもりで振った言葉だったが、その直後にしゅぽ、と音がしてURLが送られて来る。タップすると、都心にある小綺麗なカフェのSNSページへジャンプした。
「え~かわいい、かわいい、すごい、センスよっ♡」
 ベッドの上でスマホを両手で掴み、右に左にゴロンゴロンと身悶えるあにゃ。予定通り進んで気持ちが良いし、思った以上に〝上物〟だったようで、テンションも爆上がりだ。
 ——定食も、プレートもあるし、デザートも美味しいんだよ。おすすめはプリンやな。
(ちょびっと出る関西弁、尊い……♡)
 胸がいっぱいになり、遂にはスマホを抱き締めて横向きに転がる。顔合わせの段取りはサクサクと進み、その日〝おやすみ〟と挨拶するまでに約束を取り付けていた。
 その際、ようやくお互いの写真を交換する話になり、あにゃは最近で一番よく撮れた自撮りを選択して送った。……ただし、あまり派手じゃない服装の。向こうも、ほぼ同時に送信してくれる。小さなサムネイルで見たかぎり体型やファッションは極端ではない。意を決してタップし、拡大してみた。
 フレームの太い黒縁の眼鏡、華奢な顎、白い肌。センター分けのふわりとした柔らかそうな栗色の髪。パフスリーブにハイネックのピッタリした黒いニットを着ているのに、まったく体型が気にならない。加工もあるだろうが、美人の類いだろうと予想出来る。
「え~……やばぁい、神♡」
 今週はバイトが何件か入ってるが、サボらず頑張れる気がしてきた。あにゃは重たくなって来た瞼を閉じる。最近、無駄な夜更かしをしなくなった。全部、Rてゃのおかげ……やっぱり、恋をすると世界が明るい。ダンスフロアで、誰かに手を引かれる、あの感覚を思い出しながら……あにゃは久しぶりに何のお薬も飲まずに夢の中へ落ちて行った。
 †
「あの、あにゃであってる?」
「あ、はい!」
 待ちに待った土曜日、待ち合わせの午前11時。提案された店が入ったビルの、該当階のエントランスフロアで二人は無事、待ち合わせに成功した。お互いの顔に浮かぶ安堵は、無事に時間通り落ち合えたという意味合いと、事前に交換した画像とそう見た目が変わらなかった意味合いが交錯していると、あにゃは勝手に邪推する。
「えへへ、Rてゃ綺麗な人……今日はよろしくお願いします♡」
「えっと、その〝てゃ〟っていうのリアルではやめてや、くすぐったいねん。私〝高田 綾たかだ りょう〟って言います。苗字でも名前で好きに呼んで。呼び捨てでも、さん付けでも、ネットっぽくない呼び方なら何でも良いよ」
「えーっ、っと。あにゃは〝星川 愛ほしかわ まなみ〟っていいます、あにゃでも名前でも、……す、好きに呼んで、良いです」
 そう返すので一杯一杯だった。目の前にしたR……綾があまりに見た目も声も好みで、関西弁は萌えで、ドストライクだったのだ。人の名前なんて一度では決して覚えられないと思っていたのに、自然と胸の中で繰り返す。忘れまいと努力するように。
(高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、高田 綾、たかだ りょう、たかだ りょう、たかだ りょうっ、絶対に忘れない♡どう呼ぼう、どう呼んだらドキドキしてくれる?)
〝立ち話も何だから行こうか〟とさりげなくリードしてくれる綾の後ろについて歩き始めたあにゃの頭の中は忙しない。いつもより控えめな高さで結って、可愛く巻いたツインテールを揺らして勝利への一手を模索し始めた。
 どうやら席は予約されており、並ばずに店内へ案内される、それも聞いていなかった。先を行く綾の真っ直ぐな背筋、綺麗な歩き方に見惚れてしまう。案内されたのは明るい窓際のボックス席、高層階なので見晴らしも良い。
「えーと、予約してくれた?ありがと、……ござい、ますっ」
 緊張してタメ語と敬語が混ざり、挙句語尾が上擦る。あにゃは分かりやすく赤面した。これは演技ではなく〝やらかして〟純粋に恥ずかしかったからだ。
「あはは、顔真っ赤やん。良いよ、ここ場所柄土日はめっちゃ混むから、誘った方が気を回すのは当たり前というか。……えーと、〝まなちゃん〟って呼んでもいーい?」
「ひゃ、ひゃい!」
「緊張しすぎ~、可愛いから、ついついからかってまうやん♡」
 ……綾の口から次々繰り出されるクリティカルヒットに、あにゃのHPが豪快に目減りしていく。
(やめて、やめてぇ、本物の方が綺麗だよぉ♡今日はジャケットは着てるけど下白ティーだし下もブルーデニムじゃん、メイクだって画像よりカジュアルな雰囲気なのに、なんでこんなにキラキラなのぉ、なんでですかぁ!?♡♡)
 自分だって年齢を忘れて大きなセーラーカラーが付いた、制服っぽいニットを着て来たし、あざとく胸に大きなリボンを飾っている。下もイメージに合わせた、黒のプリーツスカートだ。靴下だって、ただのハイソックスにして、メイクだってスカート丈だって可愛こぶっていつもより攻めていない。絶対に可愛いと思わせようと、そう意気込んで来たはずが……。
(ま、負けた、負けた気がするよぉ~!)
「綾くん、いじわる……意地悪罪。今日のランチ奢ってくれたらじょーじょー、しゃくりょー?」
 ならば。とぷい、と顔を背け、頬を膨らませてみる。向いた側には窓があり、よろしい景色が広がっているが、なにも目に入ってこない。自分で小芝居を打っておいて、どっ、どっ、と心音が乱れるのが分かった。
「ンフフ、疑問形なんかい。ええよ♡なーにたべよっか、ほら、ムクれてないで一緒にメニュー見よ♡♡」
 立ち上がって拍手喝采したくなったが辛うじて耐える。そうして、一層赤くした……今度は恥の上に照れを上書いた顔でおずおずと視線を戻した。正面に座る彼女の、にんまりとした細い瞳とかち合う……。
(はぁあん♡綾くん、ビジュ良すぎ♡♡綾くんしか勝たぁーん♡♡♡)
 解散は健全に18時、だというのに何度エクスタシーを感じたか分からない。あにゃは完全に〝恋〟に落ちた。そう自覚した。
 †
 夢のような時間だった、とあにゃは帰宅中の電車の中で夢見心地から抜けない。最寄駅の手前で、とあたそから飲みに行かないか、といつもの誘いがかかったが……この夢から覚めたくなくてスタンプ一つでサクッと断る。寂しがり屋で年中〝構ってちゃん〟であるあにゃが、そんな塩対応をするのは珍しい。
(このぽや~っとした感じに浸りたいし、もしかしたら連絡、くれるかも、だし……?)
 じゃあまた、と別れた後、感謝のメッセージが届いたが、それ以降メッセージは止まってしまった。追撃したら鬱陶しがられるのでは……?と考えてしまい、実行していない。
 恋をするなんて学生時代ぶりではないだろうか、と過去を振り返った。社会に出てから精神的にそんな余裕はなかった、ここ最近は最近で変に擦れてしまい、恋愛を求めるより〝刺激〟ばかり求めていた。
(今回だって、そうなる筈だったのに……)
 最寄駅のホームに降りて家路を急ぐ。自分の部屋に帰って、今日の思い出を思い切り反芻したい、メッセージが帰ってきたらなんて返すかシミュレートしたい。
(綾くん♡綾くん♡綾くん♡早く、ファンサして♡連絡、いっぱい欲しいよぉ~♡♡)
 長いツインテールを弾ませて改札を抜けた。人の隙間を縫って駆け足に進んで行くと、あっという間に自分の借りている賃貸にたどり着く。
(……関西弁がメロいとか、画像やたら送ってこないとか、自分語りばっかしないとか、かっこいいのにちょっと天然なとこが垣間見えて……)
 今日の顔合わせの話ではない、メッセージのやり取りの話だ。興が乗って続けたやり取りで良い所ばかり見えて来た。さすがに会ってみたら〝あちゃ~〟の一つもあると思っていたのに。
(ない、一個もなかった……!困る!)
 メイクを落とすと夢も終わってしまいそうで、服も脱がず、ハンドバックも手にしたままベッドに腰掛けた。
 なにが困るかというと、今までのように遊びの〝ネタ〟に出来なくなるからだ。とあたそにも相談しないといけない。笑われるか、キモがられるか、最悪縁を切られる可能性だってある。それは悲しい……想像して痛む胸にそっと片手を当てた。しかし、次の瞬間バッグの中でスマホがブブ、と震える感覚を得るとパッと顔を上げ急いで取り出した。もう、その瞳は悲しげに伏せられていない、むしろ爛々と輝いている。通知にあるのは待ち侘びていた名前だ。
「きゃ~!綾くん♡綾くん♡綾くん♡綾くん♡綾くん♡綾くん♡綾くん♡」
 ——ただいま、まなちゃん。今家に着いた。まなちゃんは?
 ——ただいま、綾くん♡まなも今、家に着いた♡( > ·̫ <⸝⸝ᐢ )
 ——もう一回言うね、今日楽しかった♡ありがと♡
 あにゃは、この日を境に綾の前では〝まな〟になった。
 そうして、それまでより一層、綾にモーションをかけ始める。もう止まらなかったし、久しぶりに得たときめき……快楽物質に脳をひたひたに浸されていたからだ。とはいえ、それまでの数週間とやることは変わらない。毎日、しつこくない程度、相手の生活に溶け込んで可愛い女を演じる。共に笑い、時に悲しみ、怒り、……隙あらばデートに誘われ、遠慮がちに誘う。ちょっと刺激は強いけど、単純作業だ。お気楽すねかじりフリーターであるあにゃ且つまなは作戦を練る時間だけはたっぷりあったし、忙しい綾の都合に合わせられた。
 そういうわけで、二人が急接近するまで時間は掛からなかったのである……。
 †
 週末のランチデートを四回、仕事帰りの夜デートを三回重ねたある日の晩。
 ——なー。まなちゃん、来週の土曜夜、空いてたら飲みに行かへん?
 と、遂に、遂に待ち望んだお誘いがかかった。
 その日その夜、とあたその部屋で宅飲みをしていたあにゃは、可愛いスタンプまで連投され、発狂寸前と言わんばかりの高い声を上げる
「えぐい、尊すぎてえぐいまである~……っ♡ちょっと待って、待って♡♡」
 言葉とは真逆、結構なアルコール度数のストロング缶をストローで勢いよく吸い上げる様子にとあたそが瞬いた。
「え~、なになに?例の?遂にぃ~?」
「うん、夜に飲みに行こうって♡」
「おっと♡大チャンス♡♡これは~?絶対に~?」
「逃したくな~いっ!」
 二人揃って拳を上げる。とあたそには結局、全てを話してみた。女漁りには付き合ってやれなくなったというのに、応援してくれている。面白半分、……だとしても、あにゃはそれが嬉しくて、二人の付き合いはこうして続いていた。
「よし、なんかこう、充分既読から時間置いたよな?な?」
「置いた!どうしよ?♡みたいな怖気付きインターバル置いた!」
 きゃーきゃー言いながら、いざ、入力画面へ指先を向かわせるあにゃ。
 ——ぜ、絶対行きゅ~っ₍ᐢ o̴̶̷᷄ ̫ o̴̶̷̥᷅ ᐢ₎
「いや、時間おいた意味なくね?」
 ギャハハハハハハ!いつもの山賊笑いが響く。そうして、そんな背景を〝綾〟が知るはずもなく……初の飲みデートが決まった。
 あにゃはとあたそに相談し、当日のメイク、コーデやヘアメをギリギリまで考える。待ち遠しくも甘やかな日々はやはり、あっという間に過ぎ去った。

 当日、アテンドされたのは所謂ビアンバーではなく普通の個室居酒屋だった。店員が着物を着ているようなしっとりとした空間で食事と酒を楽しむ。
「おしゃれなお店だね、てか綾くんお店詳しいよね。関西から来たばっかりって、プロフに書いてあったのに」
「あはは、ありがと。逆に来たばっかりだから詳しいんやで、東京は広くて店もたくさんあるし、当たり外れも激しいから探しがいがある?っていうか」
「そういうもの?でも、ここは当たりだね~♡どれも美味しい、お酒も♡」
 肴も酒も美味かった。おかげでペースが少し狂っている。綾が強い酒ばかり飲んでいるのも悪い。
「そりゃ、まなちゃん連れてくるのにハズレのお店には連れてこーへんよ♡」
「出たファンサー、でも思わせぶりー、減点♡」
「そら、すまへんね♡」
 不貞腐れたような物言いをするが、顔付きはご機嫌である。まなは甘い白桃の果実酒をちびちびと、なるべく可愛らしく飲むように気をつける。甘くて美味しいが、多分アルコール度数が高い。向かいに座る綾はウィスキーをロックで舐めているが、言わずもがなアルコール度数は高い。二人ともそれなりに〝ご機嫌〟ということだ。……さっきから会話の湿度がいつもより高くなっている。酔いのせいもあるが、それなりにやり取りも続いているので〝次のステップ〟が近いのだろう。なら、と気持ちが固まっていく。
(賭けてみても、良いかな……)
 グラスへ視線を落とし一瞬黙った。そうして酔いとは別に、頬を赤らめながら再び視線だけ前方の愛しい人へ向け直す。
「今日、帰らないで……」
「えっと、……?」
 あえてなのか焦らしなのか、緩やかな角度で首を傾げて言葉を区切る綾に、まなは一度グラスから手を離し、テーブルへ置いた。その両手は膝の上に纏める。どっ、どっ、と心臓の音が耳の裏側まで聞こえて来た。
「綾くんを朝まで独り占めしたい、な。カラオケでもスパでも。あ、と……っ、うちに来て飲み直すでも良いよ。……なんか、離れたくないかなって」
 どうしても欲望に勝てず健全な提案が少なくなるが、そこはご愛嬌。耳まで赤らめて甘ったるくお誘いの言葉を続ける。
「やっぱり……だ、だめ?ですか?」
(ちょっとウザかったかな……)
 わざとではない、潤んでしまった瞳を揺らしながらつい問いかけてしまい、後悔した。少しばかり視線をテーブルへ逃してメンタルを整える。スゥハァ……バレないよう深呼吸。そうして再び戻す。すると、綾は傾けていた首を元の角度に戻し、まなが好きな三日月の瞳……どこか加虐的な形の笑みをこちらへ向けていた。
「……ええよ。私、まなちゃんち行きたいかも♡」
「…………ぅん♡♡♡」
 小さく肯定して頷くしか出来なかった。それが限界だった。もはや計算しているのは自分なのか、綾なのか、お互いなのか……全く分からない。しかし〝乗って〟くれるならどうでも良かった。
 会計を済ませた二人はまなの住まいへ向かうため、タクシーを拾った。タクシーの中で手を繋ぐ。肩をくっつける。
(こ、これはッ、勝ち確……ではぁ?今夜、キスくらいはできる、よね……?)
 夢見心地で瞳を蕩けさせ、ちらりと視線を重ねると綾が優しく微笑んでくれた。もう、それだけで、脳死である。
 †
 後のことはあまりよく覚えていない。
 連れ立ってタクシーから降りた後はコンビニ経由で酒を調達し家に上げ、飲み直しの流れになった。七畳半しかない狭い部屋はベッドとテーブルセット、その他諸々の家具でギチギチ。ベッドを背にして並ぶことになる。
「ん……っ、ちゅ♡は、桃の味……甘いお酒、好きなんや?」
「ゃ、ブレスケしてくゅからぁ♡♡」
「え~、なんで?そんなん、ええよ……今夜はそのまま味わわせて」
 気が付くとキスをする仲になっていて、綾の手は今、まなの腰へ回ってしっかりと抱き寄せられている。人は週末の、浮ついたアルコールを前にあまりに無力だ。
「舌、出してみて♡あは、ちっちゃ♡♡ちっちゃくて三角でピンクで……かわええな♡」
 半ばもたれかかるように舌先を捧げると綾が愉悦の声を上げた。それだけでお股が熱い♡舌先が乾く不快感と、涎が溢れそうな不安感に耐えながらそれでも続けると、大好きな綾の顔が重なる。ねろ♡ねろ♡ざら♡ざら♡捧げた舌先を右から左から舐められて、ゾクゾクと背中の産毛が逆立つのが分かる。いつかのような嫌悪感ではない。
(やば♡……やば、へん♡おかしい♡おかしいよ♡♡)
 口元が汚れても、顎まで唾液が伝っても、顔が変になっても突き飛ばせないほどに得る快楽が大きかった。
「ふぅ゛……っ♡ぅ、はん♡ん、……んぅ゛♡♡」
「……ちゅ♡゛ぢゅぷ♡゛は……——とろっとろ♡、もっと触ってもい~い?」
 不意に口付けを解かれて物欲しそうな顔をしてしまう。それを揶揄うように問いかけつつ、口回りを指先で清めてくれる綾に、まなは頷くしかなかった。それも、勢いで複数回頷いた。
「ありがとー♡」
 甘く囁きながら彼女の手がワンピースのバックホックを外しにかかる。その素早さにヤキモチを妬きつつ、うっとりもする。
(どこまでも罪な女メロいオンナなんだけど、こわ……でも、しゅき♡)
 すぐにワンピースは脱がされてしまった。今日はミニ丈だったので下着と、膝上まであるニーハイソックスだけの姿になって、どうにも居た堪れずベッドの上に逃げ上る。
「綾くんも来て♡」
 もしやあるかも、と上下セットアップの黒いレースの下着にしておいた。そのブラジャーを自分で脱いで、白い肌を晒す。ハラリとそれがベッドに落ちると童顔に似合わないボリュームの乳房がまろび出る。
「押し付けてくる時、柔らかいなとは思ってたけど……やっぱりおっきいなぁ♡」
 ベッドに乗り上げながら綾が囁く、そのままちゃっかりまなみの体を跨ぐように陣取った。
「おっぱい、おっきいの好き?なら、嬉しいな♡」
 その状況から逃げるどころか猫撫で声を上げる。ここまで持ってきたら、やることは一つだ。であれば、空気を極限まで盛り上げたい。……それは恐らくお互い共通認識だっただろう。
「んっ♡んっ♡んっ♡は……、ぅ゛♡は……————♡♡」
「こら、声、我慢したらあかんよ?」
「ぁん♡……ごめんなしゃい♡♡」
 綾の唇が肌の擽ったい所ばかりに触れる。首筋、鎖骨のライン、脇の下、乳輪、乳首、お腹、下腹部……それだけでも堪らないのに、同時に脱ぎそびれたパンティの上から興奮に膨らんだクリトリスを、すりすり♡カリカリ♡と指の腹や爪先で刺激される。
 やっていることはいつだったかのイベントナンパの女とそんなに変わらないのに、気持ちが入るとこんなに違うのか、とまなは呆然とする。
 くちゅ♡ぐちゅ♡くりゅ♡くりゅんっ♡こりゅ♡こりゅ♡
「ひゃ♡ぁ゛、ぁん♡ぁ♡゛あ♡゛あぁ゛ッ♡」
「良いこやな、上も下も大声で。でも可愛いパンツは、シミになってまうから……ぼちぼち脱ごっか♡」
 無言で腰を浮かすと、これまた手馴れた仕草でパンティを脱がされてしまった。散々刺激されたので、布地が離れる際ぬちょり♡と嫌な感覚がする。きっと愛液がこってり糸を引いていただろう。
「クッション、一個使っていい?」
「うん?」
 枕元に並べているのを適当に渡すと、綾はまなの腰裏にそれを設置した。以前とは違う意味でスペキャ顔になる内心のまな。
(の、脳死……すりゅぅ~……♡♡)
「さて、なか……挿れるで?」
「ぅん♡」
 脚の間に移動した綾がようやく脱衣した。大人っぽい、真紅のセットアップ。内心のスペキャがすっかり腹を見せてにゃんにゃん鳴いている。
 ップ……♡相手も全部脱がせたかったが、促す前に指先が内側に入り込んだ。泥濘んだ内側は潤滑剤もなく簡単に指先を飲み込んだ。
 ぬち♡ぬちゃ♡ぬる♡ぬぷ♡ぬぷ♡
「ぁ゛……っ♡あ゛ぅ♡ぁっ♡あぁッ♡あン゛ッ♡♡」
 それはまったく単調ではない、探るような指使いだった……自分の経験値ではなく、まなのまん肉のひだひだをちゃんと調べて触っているような。なので、いつものように三分で意識が別に向くような残酷な状態に陥ることもなく……。
「んぁ♡゛あ♡あぁ゛あぁ゛あぁ゛ッ♡゛いっ、いぐッ♡イくッ♡゛いっちゃ♡゛……————♡゛♡♡゛♡゛」
 むしろ、人生で初めて膣イキを経験した。何度も、何度も。
「ふ~ん、確かにちょっとめんどいとこに〝スイッチ〟ついてるかも♡ほれ♡ここ、やろ?」
「オ゛ッ♡゛おんッ♡お゛————~~~ッ♡゛♡♡゛♡♡゛」
「……はぁあ♡かわいい♡♡なあ、ちょっと我慢出来んくなってきた……まなちゃん、噛まれるのとか、平気な方?」
 ピリピリと指先まで痺れるような快楽の中で、その問いかけの意味を理解できるほど、まなの思考はまともな回転をなしていない。ただただ、相手を惹きつけたいという思いだけで頷きを返した。
「いーよ♡……綾くんが、よろこぶ、なら♡♡」
 その返答を聞いた綾が、恐ろしく無表情になる。そして脚の間から身を乗り出し、まなの下腹部に顔を寄せて、まずは臍の横あたりへ口付ける。そうして痕が残るであろう力で吸い付いた。こそばゆい感覚に肩を上げていると同じ場所に甘噛みされ、その甘噛みが徐々に深く食い込んでいった。
(ぴえん、ぴえんっ、いたい、いたいーっ!)
 ここ暫くで一番痛いのではないかというほど痛い。自然と体が力み、暴れそうになるが相手にどう思われるか、そう思うと指一本動かせなかった。しかし、うっかり殴ってしまわないように十指でしっかりと寝具を握る。
「っ、ぅ゛……っ、ぁ゛……は、は……——~~~ッ!」
 耐えるしかないと決めて強く噛まれる度、悲しそうに声を漏らす。どれだけそうしていたか分からないが、まなには永遠のように感じられた。しかし、不意にその時は訪れる……。
「ぇ、……ぇあ゛~♡ぁ、……あっ♡♡ぁ、んぁ♡ぁ゛……————♡♡♡」
 綾が噛み付くのを止める、すると急に痛みが引いたせいだろうか……体がふわりと浮いたような感覚に襲われるではないか。そうして、まなの下肢はびくん♡びくん♡と本人の意思とは別に、勝手に震えている。
「おもろいやろ?しかもこれ、なんかめっちゃ感度上がんねんて♡」
 痛々しく赤く腫れている噛み跡に名残惜しげに口付けてから離れると、綾は再び脚の間に陣取った。指は噛んでる間もずっと入ったままだったが、その間はぴくりとも動かしてくれなかった。
(いや、まって、やばいかも……)
 さっきのふわ♡ふわ♡体験で何故か凄く濡れた気がする。待って、と声をかけようとするが、綾に先を越された。
「すごい濡れてて恥ずかしい、って言いたいんよね?知っとるよ。そうさせたん、私やもん♡♡」
(綾くんしか……勝たん…………♡♡♡)
 それだけで、またお股がじゅわり♡してしまう。しかし、先ほどの恥じらいはどこかへぶっ飛んで、今はただ、期待が先行している。またさっきのように気持ちよくなりたい。
「りょ、りょーくん、もっとぉ♡♡」
「いーいよ♡」
 ぬ゛ぢゅッ♡ぬ゛ぢゅッ♡ぬぷぅッ♡ぬぷぅッ♡ぬ゛ろッ♡ぬろッ♡♡
「ぉ、ぉん♡゛ぉん♡゛ぉん♡゛ぉん♡゛ぉ゛お゛♡ぉ゛おお゛っ♡お゛お゛♡おぉ゛♡おお゛♡゛♡♡゛♡♡゛」
 再び探り出された急所を擦られ、抉られ、ビリビリと電気のような刺激が走る。あっという間に果ててしまった。
「あ~、お潮吹いてる♡まなちゃん凄いやん、感度いいね♡♡」
(そんなこと、絶対にない……今までこんなことなかった)
 感じたことのない快楽に浸りながらティッシュを求めて脚の間から出てきた綾の顔を見つめた。誤解した彼女が優しく口付けてくれる。
 久しぶりの恋愛感情、酒の勢い、まさかの快感体験……幾重にも重なった偶然でまなの脳内はすっかりピンク色。
(しゅき……大好き、りょうくん♡♡もうこれ、絶対うんめい、だよね?)
 最終的にそこまで思い込んだまなは、明け方まで話したり触り合ったりする中で、何度も何度も……。
「……好き、綾くん♡」
 そう、繰り返した。会話も通じて、見た目の好みで、体の相性も良く、こうなれば……後は坂を転がり落ちるが如し。そもそも、恋人を探していた綾は家に入った時点でそのつもりだったのかもしれない。そういうわけで、この日二人は恋人同士になる。
 ———が、結論から先に言うと、三ヶ月で破局した。
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