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第一のヤンデレ
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「ここにずっといてもいいと思うんだ。設備は世界一安全だし、あたしが二十四時間中、見守っているから寂しくないよ。もう少し状況が落ち着いたら、メイトンの食べたいものだってあげられるし、娯楽も少し制限されるけど用意できるよ……どう?このままここで暮らさない?」
「……学校がある」
辛うじて返したが、早紀の熱っぽい言葉に呑まれて頷きかけた。
「メイトン、昨日あたしを守るためにあんなこと言ったんだよね?誤解を解かなくていいって、あたしを巻き込まないために」
「……俺は早紀のおせっかいが嫌いなだけだ」
「メイトンは何者かに嵌められた。その上に昨日の脅迫状―――どっちも学校が関わってる。一番危険なのは学校だよ。だから、学校だけは行かないで」
前者は天峯の陰謀で、しかも後者も天峯によって引き起こされたんだけど、あいつはこんなスケールの大きなことになってるとは予想だにしないだろう。
「それでも、俺は普通の日常を送りたい」
「どうして?外は危険だよ。あたしだったらメイトンを永遠に守れる―――ううん、あたしにしか守れないんだよ。メイトンはここにいれば、幸せに暮らせる。あたしがずっと傍にいるから、何にも心配しなくていいんだよ」
早紀の感情は異常だ。庇護欲であり独占欲である。俺を守りたいという気持ちと支配したい気持ちが複雑に絡み合っている。
いくら早紀が常人と異なる特殊な人生を送ってきたとしても、こんな感情生まれるはずがない。生まれてはいけない。
「ねえ、メイトン、もう一回考え直して。ここにいることに何の不都合があるの?もしかして、まだ不安なの?だったら、もっと警備を強化するよ。ここに絶対にあたし以外の誰も入ってこれないようにするから。それならいいよね?怖いものは何もないよ」
早紀が迫ってくる。もちろんガラスよりは内側には来られないが、圧迫されている気がした。
「今はっきりわかったよ。お前がしようとしてるのは保護じゃない、監禁だ。いいか、俺は女の子の自由を奪うのは嫌いじゃないが、俺の自由が奪われるのは我慢できないんだよ」
早紀にお前、なんて初めて言った。罪悪感で胸がいっぱいになる。
これまで早紀は俺が友達だと思っている数少ない人間の一人だった。飾り物にすぎなかったやつらとはわけが違う。俺の本性を知りながらも、それでも俺に構ってきた―――だから、失うのが怖い。
昨日、全校生徒から嫌われて、居心地は悪かったが、決して怖いとは思わなかった。
だが、早紀との関係を失うのは怖くて仕方ない。
「わかった。狭すぎるんだね?だったら、改装して広くしてあげるよ。一軒家ぐらいの大きさがいいかな?」
話が嚙み合わない。
もう三年の付き合いだった早紀ではないのだ。これまで通り普通に過ごしていれば表れることはなかった早紀の一面。天峯の言葉を借りると開花してしまったということだ。
「三日は我慢してやる。だが、三日を過ぎれば俺は帰るぞ。だから、それまでに脅迫状の犯人を捕まえろ」
本当は一刻も早く抜け出したいが、早紀の言う通り、俺を狙ってるやつもやばいかもしれない。
「三日は無理だよ。この樹脂に穴を開けるには特殊な液体が必要なんだけど、厳重に保管されてる。あたしもどこにあるのかわからないけど、国内にないことはたしかだよ。存在が誰にも知られないようにここまで届けないといけないから、最低でも七日はかかるんだよ」
「おい、無事だってわかってからも七日は監禁する気だったのかよ!」
「監禁なんかじゃないよ、あたしはただメイトンを守りたいだけ―――わかってね」
急に全身の力がガクッと抜けた。いつまでここに閉じ込められるんだ?もうこの際誰でもいいから助けてくれ…なんて無理か、簡単に見つかるような場所じゃないだろうし―――と、早紀の顔が引きつった。
「嘘でしょ?どうやって穴を開けたの?」
頭上を見て気づいた。何の前触れもなく、人間一人すっぽり入るだけの穴が現れたのだ。穴の輪郭は揺らめいていて、決して物理的に穴を開けたわけではないことがわかる。まるで海に差し込んだ光が、暗い海を一直線に染め上げるように、穴となった部分の空間が別の何かに塗り替えられていた。
「絶対に破壊できないんじゃなかったのか?」
「ここは海底の下なんだよ。ありえない!」
次の瞬間、さらに驚くべきことが起こった。
浮いてる?どうなってるんだよ?」
体が勝手に持ち上がったのだ。エレベーターのように足裏から押し上げられている感覚ではなく、風船に吊り下げられているかのようにふわふわと天井の穴をくぐってゆく。
「メイトンはあたしが守る!」
宙に浮く俺を目にして正気に戻ったのだろう。露出していた顔を装甲が覆う。両肩、両腕が変形して、二対の砲門となる。スタイリッシュだったフォルムは重厚な破壊砲台へと変貌を遂げた。
「武装システム起動、目標前方、青の開花!」
轟音がして、部屋全体が激しく揺れる。ガラスの向こう側が眩い青に包まれて、二秒ほど見えなくなった。
「やっぱり駄目か…」
光が収まっても、ガラスには傷一つついておらず、部屋はなんら変わっていなかった。
「すぐに助けにいくから、それまで待ってて!」
この時にはもう早紀の姿なんて見えず、叫び声だけが耳に残った。
「……学校がある」
辛うじて返したが、早紀の熱っぽい言葉に呑まれて頷きかけた。
「メイトン、昨日あたしを守るためにあんなこと言ったんだよね?誤解を解かなくていいって、あたしを巻き込まないために」
「……俺は早紀のおせっかいが嫌いなだけだ」
「メイトンは何者かに嵌められた。その上に昨日の脅迫状―――どっちも学校が関わってる。一番危険なのは学校だよ。だから、学校だけは行かないで」
前者は天峯の陰謀で、しかも後者も天峯によって引き起こされたんだけど、あいつはこんなスケールの大きなことになってるとは予想だにしないだろう。
「それでも、俺は普通の日常を送りたい」
「どうして?外は危険だよ。あたしだったらメイトンを永遠に守れる―――ううん、あたしにしか守れないんだよ。メイトンはここにいれば、幸せに暮らせる。あたしがずっと傍にいるから、何にも心配しなくていいんだよ」
早紀の感情は異常だ。庇護欲であり独占欲である。俺を守りたいという気持ちと支配したい気持ちが複雑に絡み合っている。
いくら早紀が常人と異なる特殊な人生を送ってきたとしても、こんな感情生まれるはずがない。生まれてはいけない。
「ねえ、メイトン、もう一回考え直して。ここにいることに何の不都合があるの?もしかして、まだ不安なの?だったら、もっと警備を強化するよ。ここに絶対にあたし以外の誰も入ってこれないようにするから。それならいいよね?怖いものは何もないよ」
早紀が迫ってくる。もちろんガラスよりは内側には来られないが、圧迫されている気がした。
「今はっきりわかったよ。お前がしようとしてるのは保護じゃない、監禁だ。いいか、俺は女の子の自由を奪うのは嫌いじゃないが、俺の自由が奪われるのは我慢できないんだよ」
早紀にお前、なんて初めて言った。罪悪感で胸がいっぱいになる。
これまで早紀は俺が友達だと思っている数少ない人間の一人だった。飾り物にすぎなかったやつらとはわけが違う。俺の本性を知りながらも、それでも俺に構ってきた―――だから、失うのが怖い。
昨日、全校生徒から嫌われて、居心地は悪かったが、決して怖いとは思わなかった。
だが、早紀との関係を失うのは怖くて仕方ない。
「わかった。狭すぎるんだね?だったら、改装して広くしてあげるよ。一軒家ぐらいの大きさがいいかな?」
話が嚙み合わない。
もう三年の付き合いだった早紀ではないのだ。これまで通り普通に過ごしていれば表れることはなかった早紀の一面。天峯の言葉を借りると開花してしまったということだ。
「三日は我慢してやる。だが、三日を過ぎれば俺は帰るぞ。だから、それまでに脅迫状の犯人を捕まえろ」
本当は一刻も早く抜け出したいが、早紀の言う通り、俺を狙ってるやつもやばいかもしれない。
「三日は無理だよ。この樹脂に穴を開けるには特殊な液体が必要なんだけど、厳重に保管されてる。あたしもどこにあるのかわからないけど、国内にないことはたしかだよ。存在が誰にも知られないようにここまで届けないといけないから、最低でも七日はかかるんだよ」
「おい、無事だってわかってからも七日は監禁する気だったのかよ!」
「監禁なんかじゃないよ、あたしはただメイトンを守りたいだけ―――わかってね」
急に全身の力がガクッと抜けた。いつまでここに閉じ込められるんだ?もうこの際誰でもいいから助けてくれ…なんて無理か、簡単に見つかるような場所じゃないだろうし―――と、早紀の顔が引きつった。
「嘘でしょ?どうやって穴を開けたの?」
頭上を見て気づいた。何の前触れもなく、人間一人すっぽり入るだけの穴が現れたのだ。穴の輪郭は揺らめいていて、決して物理的に穴を開けたわけではないことがわかる。まるで海に差し込んだ光が、暗い海を一直線に染め上げるように、穴となった部分の空間が別の何かに塗り替えられていた。
「絶対に破壊できないんじゃなかったのか?」
「ここは海底の下なんだよ。ありえない!」
次の瞬間、さらに驚くべきことが起こった。
浮いてる?どうなってるんだよ?」
体が勝手に持ち上がったのだ。エレベーターのように足裏から押し上げられている感覚ではなく、風船に吊り下げられているかのようにふわふわと天井の穴をくぐってゆく。
「メイトンはあたしが守る!」
宙に浮く俺を目にして正気に戻ったのだろう。露出していた顔を装甲が覆う。両肩、両腕が変形して、二対の砲門となる。スタイリッシュだったフォルムは重厚な破壊砲台へと変貌を遂げた。
「武装システム起動、目標前方、青の開花!」
轟音がして、部屋全体が激しく揺れる。ガラスの向こう側が眩い青に包まれて、二秒ほど見えなくなった。
「やっぱり駄目か…」
光が収まっても、ガラスには傷一つついておらず、部屋はなんら変わっていなかった。
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