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第四章〜六大魔王復活〜
第63話 〜施設を作ろう2〜
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それから幾月かの日が経ち、魔王も現れず少しの間、平和な日々を過ごせていた。その間ヒイロは新しい施設が少しずつ立ち上がり始めたため、各施設をオリーやアルト達と巡回し、環境を整えていった。
「ようやくスタート出来たな。これからは、それぞれの様子をみて、後から出来る施設のガイドラインになれるように進めていこう。」
「うん、とりあえず福祉ギルドの方も、まだ規模は小さいけど動き始めているよ。後は施設同士での連携や情報交換の土台を作っていかなきゃいけないのかな。」
「あぁ、特に障害児施設のような場所は施設自体が閉鎖空間になりやすい。世間とは違い、特殊な環境となってくるからな。働いてくれている人達の悩みや不満にも、対応できるようにして、風通しを良くしないといけない。職員にいくら熱意があっても、それこそ障害は、千差万別の個性があるから、知識と経験の積み重ねの上に、努力と忍耐、さらに誠実さがないと難しい」
「うん、出来るだけ力で押さえつけないような対応を根気よく伝えていくしかないよね。」
「そうだな。あと人手なら、乳児院には子育てがひと段落した母親などもいいと思うから、募集に付け足していく必要があるか。」
「考えれば考えるほど出てくる……」
「それほど問題が多いんだよ。一から作り上げるとはこういうことなんだろうと思う。」
「そうだね」
ヒイロとオリーは話し合いしながら、一番最初に建てた障害児施設に来ていた。ここの施設には障害のある子どもが20名前後おり、身体の一部欠損、麻痺から知的面や精神面での障害がある子どもなどがいた。
ヒイロはゆくゆくは身体的障害と知的面や精神面などの内面的障害を分けようと考えていたが、まだそこまでは出来ず、とりあえず一緒の施設となっていた。ヒイロ達が施設に入ると、そこの施設長が出迎えてくれた。ヒイロが昔から知っている人で、よく《森の家》に手伝いに来てくれていた教会の人だ。
「これはヒイロさん、よくいらっしゃってくれましたね。」
「どうも。お世話になっております。子ども達の様子や実際に施設を運営してみてどうですか?」
「……そうですね。身体的障害のある子どもは、意思疎通もとれ、職員とも良好な関係が保たれていますが、内面的な障害では、意思疎通が難しく、職員も戸惑うことばかりです」
「……やはりそうですか。そっちは特にそうですよね……例えばどのような問題がありますか?」
「私もですが、はっきり言うと全てがわからないのです。危険な行為や理解が出来ない行為に対し、止めるように声かけしたり、ときには身体で制止するのですが止まるどころか暴れ回ってしまいます。」
「危険な行為と言うと?」
「……あそこの角にいる子は、突然頭を地面に打ちつけたり、急に物を壊し始めたら止まらないことがあります……。」
施設長は、体育館のような広い部屋の隅で、窓から溢れる陽当たりに寝そべる子どもを示す。その場所が好きなのか、少しの間見守るも、その場から動かなかった。
「なるほど……。今、施設には通常、何人の職員がいらっしゃいますか?」
「通常は交代制で平均5人です。食事や掃除等の家事補助、そしてわたしを合わせると10人前後です。」
「20人対して5人の支援者……か。少ないな……まずは、その子に対し、一人から二人の職員を常につけましょう。大切なことは観察と記録です。その子が問題の行動をとる直前の様子を把握するのです。もしかしたら、パターンがあり、何か不安になること、嫌なことなどが、その子の周りで起きているのかもしれません。本人はきっとその嫌なことをうまく表現出来ず、自傷行為と言って、自らを傷つけることで発散したり、周りに伝えようとしているのかもしれません。どんな些細なことでも良いのです。周りの音や動き、全てです。」
ヒイロは前世で保育士をしていたが、学生時代は障害について、研究をしていたため、その知識を思い出し、自分なりに解釈して職員に説明して行く。
「まだ職員が足りないと思います。福祉ギルドに伝えてまわしてもらいましょう。ここでは施設に入っている人数による割合で人員を割くのではなく、適切な対応が出来る人数を考えて良いです。そのような問題行動を事前に起こさせない取り組みが必要で、それは力による制止ではなく、その問題行動につながる直前の過程を切り取り、そこを少なくすることで問題行動自体を少なくして行くのです。」
「……なるほど。何か理由があって問題行動を起こすため、その理由自体を見つけて問題行動を起きなくさせるのですね。」
「理想はそうです。ですが理由は本当に様々です。物の位置がいつもと少しずれていたり、物音だったりと、よく観察して、細かく記録していきましょう。難しいですが地道にしていくしかないと思います。なによりもまず、この子達の存在、行動を理解してあげてください。支援者の補充についてはこちらから伝えておきますので。」
「……わかりました。ありがとうございます。」
「他の子どもも同様です。内面的な障害がある子どもは出来るだけ観察して適切な行動を繰り返させて上げることが大切です。また、その際丁寧な言葉がけ、対応でその子の自尊心を大切にしてあげてください。」
「はい、職員にも伝えて行きます。」
「すごく大変で根気のいる仕事ですが、福祉というこの仕事は直接人を助けるヒーローの仕事だと、私は思っています。自信と誇りを持って、皆さんで取り組んでください。」
「ありがとうございます。」
他にも細かいところまで、施設長の話しを聞き、また自分でも施設内を見て周り、働いている職員や子ども達とも関わって行く。まだうまくいかないことも沢山あるようだが、虐待などの致命的な問題は今のところ無さそうであり、ヒイロは安心した。そんなヒイロの姿を黙って見ていたオリーは、施設から出た後に、改めて感心するように話し始める。
「……ヒイロ兄って、やっぱりすごいね。」
「……いきなりどうした?それにすごくないよ。自分で始めたからにはきちんと責任を持ちたいだけさ。それにこうやって口だけなら簡単なんだよ。本当に大変なのはその子ども達本人と、直接向き合っている職員だからね」
「……なるほど。でも、知識というか経験というか、ヒイロ兄は昔からこういう施設を知ってるみたいな……」
「そ、それは知り合いから聞いたんだよ!……それにきっと福祉って、色んな分野があるけど、これが一番正しいって言う答えはないんだよ。状況や環境、障害の種類や重さ、他にも色んな要因があって、それが一人一人違うからな……こればかりは魔法では解決は難しい。だからギルドを作り、情報交換や気持ちを共有して、みんなで結束を強くして取り組んでいかないとな。」
「おれ、がんばるよ!」
「任せたぞ、将来のギルド長!」
ヒイロは改めて障害児施設を中心に定期的に見回る必要があると感じた。この世界では前世のように、障害の中にも、知的障害や自閉症、ダウン障など様々な障害があることが理解されず、ただの頭が悪い子どもや忌子と恐れられることが多かった。魔法が医療や文明の大きな力の一つであるため、科学的根拠が少ないこのシャングリラでは理解が難しいのだった。
ヒイロは、少しずつでも施設を通して、世界の認識を改善できたらと思いながら、自分の家へと帰る。
玄関を開けると帰りがわかっていたかのように目の前にホープの姿があった。ヒイロは瞬間的に、目の前の天使、ホープを抱きしめる。
「ただいまー!ホープ~お利口にしていたか?」
ホープの頬に自分の頬をすりすりとくっつけ、過剰なスキンシップをとる。最初は喜んでいたホープも、そのしつこいヒイロのスキンシップに諦め、ぬいぐるみの抱き抱えられながら、なされるがままになっていた。
ヒイロはそのままホープを抱きしながら、奥の部屋で食事の用意をしていたミーナの方に向かう。
「ただいま~」
「あら、おかえりなさい。今日もお疲れ様でした!どう?施設は順調?」
ミーナの顔を見て、何故かホープは救いを求めるかのようにバタバタと手足を動かす。それに気付かないヒイロはそのままホープを抱っこしている。
「うーん、まだ始まったばかりだからなんとも言えないな……やっぱり問題は山積みで、始めたばかりだから仕方ないけど、知識や経験が圧倒的に足りないかなぁ……」
ミーナは、ヒイロの話しを丁寧に受け答えしてあげながらも、必死にヒイロの腕から逃げようとすることホープを苦笑いでさりげなくヒイロから救い出してあげる。
「ホープ、パパは頑張ってるって!」
「あ、うー!」
ミーナに抱き抱えられてようやくスキンシップ地獄から解放されたホープは可愛い笑顔で、ヒイロに笑いかける。
「おー、ありがとう!褒めてくれるのか?」
ヒイロはその笑顔に癒され、ミーナごとホープを抱きしめる。ホープはまたか、といういう表情を見せ、ミーナは笑っている。
「ほら、ヒイロ!ホープが潰れちゃう」
「あう~」
「あぁごめんごめん」
この幸せな家族がいれば、いくらでも頑張れる。そして、ホープが大きくなる頃にはもっとこの世界は良くなっているはずだと、しみじみ思うヒイロであった。
「ようやくスタート出来たな。これからは、それぞれの様子をみて、後から出来る施設のガイドラインになれるように進めていこう。」
「うん、とりあえず福祉ギルドの方も、まだ規模は小さいけど動き始めているよ。後は施設同士での連携や情報交換の土台を作っていかなきゃいけないのかな。」
「あぁ、特に障害児施設のような場所は施設自体が閉鎖空間になりやすい。世間とは違い、特殊な環境となってくるからな。働いてくれている人達の悩みや不満にも、対応できるようにして、風通しを良くしないといけない。職員にいくら熱意があっても、それこそ障害は、千差万別の個性があるから、知識と経験の積み重ねの上に、努力と忍耐、さらに誠実さがないと難しい」
「うん、出来るだけ力で押さえつけないような対応を根気よく伝えていくしかないよね。」
「そうだな。あと人手なら、乳児院には子育てがひと段落した母親などもいいと思うから、募集に付け足していく必要があるか。」
「考えれば考えるほど出てくる……」
「それほど問題が多いんだよ。一から作り上げるとはこういうことなんだろうと思う。」
「そうだね」
ヒイロとオリーは話し合いしながら、一番最初に建てた障害児施設に来ていた。ここの施設には障害のある子どもが20名前後おり、身体の一部欠損、麻痺から知的面や精神面での障害がある子どもなどがいた。
ヒイロはゆくゆくは身体的障害と知的面や精神面などの内面的障害を分けようと考えていたが、まだそこまでは出来ず、とりあえず一緒の施設となっていた。ヒイロ達が施設に入ると、そこの施設長が出迎えてくれた。ヒイロが昔から知っている人で、よく《森の家》に手伝いに来てくれていた教会の人だ。
「これはヒイロさん、よくいらっしゃってくれましたね。」
「どうも。お世話になっております。子ども達の様子や実際に施設を運営してみてどうですか?」
「……そうですね。身体的障害のある子どもは、意思疎通もとれ、職員とも良好な関係が保たれていますが、内面的な障害では、意思疎通が難しく、職員も戸惑うことばかりです」
「……やはりそうですか。そっちは特にそうですよね……例えばどのような問題がありますか?」
「私もですが、はっきり言うと全てがわからないのです。危険な行為や理解が出来ない行為に対し、止めるように声かけしたり、ときには身体で制止するのですが止まるどころか暴れ回ってしまいます。」
「危険な行為と言うと?」
「……あそこの角にいる子は、突然頭を地面に打ちつけたり、急に物を壊し始めたら止まらないことがあります……。」
施設長は、体育館のような広い部屋の隅で、窓から溢れる陽当たりに寝そべる子どもを示す。その場所が好きなのか、少しの間見守るも、その場から動かなかった。
「なるほど……。今、施設には通常、何人の職員がいらっしゃいますか?」
「通常は交代制で平均5人です。食事や掃除等の家事補助、そしてわたしを合わせると10人前後です。」
「20人対して5人の支援者……か。少ないな……まずは、その子に対し、一人から二人の職員を常につけましょう。大切なことは観察と記録です。その子が問題の行動をとる直前の様子を把握するのです。もしかしたら、パターンがあり、何か不安になること、嫌なことなどが、その子の周りで起きているのかもしれません。本人はきっとその嫌なことをうまく表現出来ず、自傷行為と言って、自らを傷つけることで発散したり、周りに伝えようとしているのかもしれません。どんな些細なことでも良いのです。周りの音や動き、全てです。」
ヒイロは前世で保育士をしていたが、学生時代は障害について、研究をしていたため、その知識を思い出し、自分なりに解釈して職員に説明して行く。
「まだ職員が足りないと思います。福祉ギルドに伝えてまわしてもらいましょう。ここでは施設に入っている人数による割合で人員を割くのではなく、適切な対応が出来る人数を考えて良いです。そのような問題行動を事前に起こさせない取り組みが必要で、それは力による制止ではなく、その問題行動につながる直前の過程を切り取り、そこを少なくすることで問題行動自体を少なくして行くのです。」
「……なるほど。何か理由があって問題行動を起こすため、その理由自体を見つけて問題行動を起きなくさせるのですね。」
「理想はそうです。ですが理由は本当に様々です。物の位置がいつもと少しずれていたり、物音だったりと、よく観察して、細かく記録していきましょう。難しいですが地道にしていくしかないと思います。なによりもまず、この子達の存在、行動を理解してあげてください。支援者の補充についてはこちらから伝えておきますので。」
「……わかりました。ありがとうございます。」
「他の子どもも同様です。内面的な障害がある子どもは出来るだけ観察して適切な行動を繰り返させて上げることが大切です。また、その際丁寧な言葉がけ、対応でその子の自尊心を大切にしてあげてください。」
「はい、職員にも伝えて行きます。」
「すごく大変で根気のいる仕事ですが、福祉というこの仕事は直接人を助けるヒーローの仕事だと、私は思っています。自信と誇りを持って、皆さんで取り組んでください。」
「ありがとうございます。」
他にも細かいところまで、施設長の話しを聞き、また自分でも施設内を見て周り、働いている職員や子ども達とも関わって行く。まだうまくいかないことも沢山あるようだが、虐待などの致命的な問題は今のところ無さそうであり、ヒイロは安心した。そんなヒイロの姿を黙って見ていたオリーは、施設から出た後に、改めて感心するように話し始める。
「……ヒイロ兄って、やっぱりすごいね。」
「……いきなりどうした?それにすごくないよ。自分で始めたからにはきちんと責任を持ちたいだけさ。それにこうやって口だけなら簡単なんだよ。本当に大変なのはその子ども達本人と、直接向き合っている職員だからね」
「……なるほど。でも、知識というか経験というか、ヒイロ兄は昔からこういう施設を知ってるみたいな……」
「そ、それは知り合いから聞いたんだよ!……それにきっと福祉って、色んな分野があるけど、これが一番正しいって言う答えはないんだよ。状況や環境、障害の種類や重さ、他にも色んな要因があって、それが一人一人違うからな……こればかりは魔法では解決は難しい。だからギルドを作り、情報交換や気持ちを共有して、みんなで結束を強くして取り組んでいかないとな。」
「おれ、がんばるよ!」
「任せたぞ、将来のギルド長!」
ヒイロは改めて障害児施設を中心に定期的に見回る必要があると感じた。この世界では前世のように、障害の中にも、知的障害や自閉症、ダウン障など様々な障害があることが理解されず、ただの頭が悪い子どもや忌子と恐れられることが多かった。魔法が医療や文明の大きな力の一つであるため、科学的根拠が少ないこのシャングリラでは理解が難しいのだった。
ヒイロは、少しずつでも施設を通して、世界の認識を改善できたらと思いながら、自分の家へと帰る。
玄関を開けると帰りがわかっていたかのように目の前にホープの姿があった。ヒイロは瞬間的に、目の前の天使、ホープを抱きしめる。
「ただいまー!ホープ~お利口にしていたか?」
ホープの頬に自分の頬をすりすりとくっつけ、過剰なスキンシップをとる。最初は喜んでいたホープも、そのしつこいヒイロのスキンシップに諦め、ぬいぐるみの抱き抱えられながら、なされるがままになっていた。
ヒイロはそのままホープを抱きしながら、奥の部屋で食事の用意をしていたミーナの方に向かう。
「ただいま~」
「あら、おかえりなさい。今日もお疲れ様でした!どう?施設は順調?」
ミーナの顔を見て、何故かホープは救いを求めるかのようにバタバタと手足を動かす。それに気付かないヒイロはそのままホープを抱っこしている。
「うーん、まだ始まったばかりだからなんとも言えないな……やっぱり問題は山積みで、始めたばかりだから仕方ないけど、知識や経験が圧倒的に足りないかなぁ……」
ミーナは、ヒイロの話しを丁寧に受け答えしてあげながらも、必死にヒイロの腕から逃げようとすることホープを苦笑いでさりげなくヒイロから救い出してあげる。
「ホープ、パパは頑張ってるって!」
「あ、うー!」
ミーナに抱き抱えられてようやくスキンシップ地獄から解放されたホープは可愛い笑顔で、ヒイロに笑いかける。
「おー、ありがとう!褒めてくれるのか?」
ヒイロはその笑顔に癒され、ミーナごとホープを抱きしめる。ホープはまたか、といういう表情を見せ、ミーナは笑っている。
「ほら、ヒイロ!ホープが潰れちゃう」
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