0(ゼロ)同士の恋愛  ほんとは愛されたい。【完結】

mamaマリナ

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16 つらい

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 胸が痛い。ミランちゃんとディランさんの話を聞いていたら、胸がギュッとなった。

「あーあ、絶望的だ。好きになっちゃってたし、もう無理。」

 部屋で独り言を呟く。警告音なってたのに。無視したの俺だよな。警告音無視したのがいけなかった。やっぱり俺じゃあ無理って確信してしまった。いや、確信して良かったんだ。そうだよ、こんな俺が俺も好きだなんて、付き合えるなんてはじめから分かっていたじゃん。ディランさんと俺は釣り合わない。きれいなディランさんにこんな俺なんか無理だ。

 体を売ったことは、生きるためだから仕方なかったんだ。そう言って今まで、納得させて来たんだ。汚いなんてことはないのかもしれないって、こんな俺でも好きだって言ってくれる人がいるって思えて嬉しかった。でも、もう無理だ。
 一途に思ってくれているディランさんがホントにきれい過ぎて無理だ。もしかしたら、伝えても受け入れてくれるかもなんて、甘いことをどこかで考えていた自分が恥ずかしいしバカだ。

 
「うん。よし、ここから出よう。」
 

 コンコン

「ゼロだけど入ってもいいですか、父上様」

「どうした?いいぞ。」

「俺、一人暮らしをしようと思う。」

「えっなんで?」

「俺、ここすごく好きだけどダメなんだ。」

「ダメって何が?」

「甘えてるから。」

「甘えているうに入らんぞ。」

「甘えてる。俺、大人だし、自立して仕事したいと思う。」

「仕事してるじゃないか、シュシュの売れ筋良好だぞ。」

「うん。でも、それは、ただで布貰って作ったやつだよ。甘えてる。」

「なら、今度は、切れ端売る。」

「ありがとう。」

「これならいいだろう。」

「でも、部屋借りてるし。」

「この家の子なんだから、いいだろう。」

「良くないよ。」

「そうか?」

「そう。」

「じゃあ、どうしたいんだ。」

「どこかに部屋を借りて住む」

「なら部屋を寮に住んでいると思って、格安で部屋代払うとかはどうだ。それなら出て行かなくてもいいではないか」

「だめ、それじゃあダメなんだ。」

「ディランか?」

「……」

「嫌いか?」

「嫌いじゃない。」

「まわりがうるさくてわるかったが、嫌いじゃないなら」

「嫌いじゃないからつらい。」

「何がつらいんだ。」

「言えない。」

「そうか。」

「ごめんなさい。」

「言ってみたら、気が楽になるかもだぞ」

「怖いよ。」

「そうか、なら一人暮らししてみるか?」

「いいの?」

「さみしいから一週間に一度は、泊まりで帰ってくること。」

「うん。ありがとう。父上様」
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