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ようやく帰宅
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「ただいま~」
「おかえり、クラリス」
「おかえりなさい。」
クラリスが実家の食堂のドアを開けると、父と母がにこやかに迎えてくれた。
「今日は遅かったわね。やっぱり初日だから色々と忙しかったんじゃない?」
「疲れているだろう。今日は店も落ち着いているし、手伝いはいいから、夕食をとったら部屋でゆっくりするといい」
ぐったりした様子のクラリスを見て、父母が優しく気遣った。
(ぐったりしてるのも遅かったのも、授業とは一切関係ないけどね……というか、本当なら今日は始業式とオリエンテーションだけだったから、早目に帰れるはずだったんだけど……)
学園での出来事を父母に話した方がいいかと少し迷ったが、夕食時を控えて忙しくなり始めた店内の様子に、ゆっくり話す時間はないことに気づく。
「すぐに着替えてくるね!」
明るくそう言うと、クラリスは2階の自室へと続く階段を駆け上がった。
部屋に入り、荷物を置いて、着ていた学園用の服を脱ぐと丁寧にブラッシングする。
クラリスの家は、家族経営の大衆食堂だ。見た目は怖いけど腕のいい料理人である父の作る絶品の家庭料理と美人で気立のいい母の明るい接客が評判で、父母と兄、自分の四人家族が食べていける分は十分に稼げている。だが、貴族のように何百着も服を買うような贅沢はもちろんできるわけはなく、クラリスは手持ちの数少ない服を大切に着ていた。
高等部に進学することが決まった時に、両親が通学用にと服を新調してくれた。地味だが質が良く、長く着られる服だ。
クラリスにとっては宝物のようなその服が、ヤイミー令嬢に肩を押されて転んだ時に汚れてしまった。
その汚れに気づいたアリスが、公爵家にクラリスを連れて行き、公爵家の熟練のメイドに即座に汚れを落とさせたのだった。そのため、帰宅時間が大幅に遅くなったのだ。
「それにしても公爵家のメイドさんの技はすごいわ……!泥汚れって落ちにくいのに、何もなかったみたいに綺麗になってる!」
元々汚れが目立たないようにと、紺色の生地を選んでいたが、それでも馬車に乗る時はふかふかのシートを汚してしまわないか気になるぐらい、お尻の部分は汚れがひどかった。それを短時間で綺麗にしてくれた公爵家の熟練メイドさんには感謝しかない。もちろん、それを指示したアリスにも。
「強引に場所に乗せられて公爵家に連れていかれた時には、緊張して吐きそうだったけど」
公爵家に着くとすぐにアリスの衣装部屋に通され、着ていた服を脱がされると、アリスがもう着れなくなったという服を何着も着せられた。最終的にクラリスの瞳の色と同じ空色のワンピースに落ち着いたが、今着た服を全部持って行くようにと言われ、一瞬気が遠くなった。
全力でお断りし、何とか自分の服に着替えることができたが、空色のワンピースだけは「是非に!」と言われてしまい、この一着だけはいただいてきてしまった。
「アリス様はどうして私にこんなに良くしてくださるのかしら……」
「おかえり、クラリス」
「おかえりなさい。」
クラリスが実家の食堂のドアを開けると、父と母がにこやかに迎えてくれた。
「今日は遅かったわね。やっぱり初日だから色々と忙しかったんじゃない?」
「疲れているだろう。今日は店も落ち着いているし、手伝いはいいから、夕食をとったら部屋でゆっくりするといい」
ぐったりした様子のクラリスを見て、父母が優しく気遣った。
(ぐったりしてるのも遅かったのも、授業とは一切関係ないけどね……というか、本当なら今日は始業式とオリエンテーションだけだったから、早目に帰れるはずだったんだけど……)
学園での出来事を父母に話した方がいいかと少し迷ったが、夕食時を控えて忙しくなり始めた店内の様子に、ゆっくり話す時間はないことに気づく。
「すぐに着替えてくるね!」
明るくそう言うと、クラリスは2階の自室へと続く階段を駆け上がった。
部屋に入り、荷物を置いて、着ていた学園用の服を脱ぐと丁寧にブラッシングする。
クラリスの家は、家族経営の大衆食堂だ。見た目は怖いけど腕のいい料理人である父の作る絶品の家庭料理と美人で気立のいい母の明るい接客が評判で、父母と兄、自分の四人家族が食べていける分は十分に稼げている。だが、貴族のように何百着も服を買うような贅沢はもちろんできるわけはなく、クラリスは手持ちの数少ない服を大切に着ていた。
高等部に進学することが決まった時に、両親が通学用にと服を新調してくれた。地味だが質が良く、長く着られる服だ。
クラリスにとっては宝物のようなその服が、ヤイミー令嬢に肩を押されて転んだ時に汚れてしまった。
その汚れに気づいたアリスが、公爵家にクラリスを連れて行き、公爵家の熟練のメイドに即座に汚れを落とさせたのだった。そのため、帰宅時間が大幅に遅くなったのだ。
「それにしても公爵家のメイドさんの技はすごいわ……!泥汚れって落ちにくいのに、何もなかったみたいに綺麗になってる!」
元々汚れが目立たないようにと、紺色の生地を選んでいたが、それでも馬車に乗る時はふかふかのシートを汚してしまわないか気になるぐらい、お尻の部分は汚れがひどかった。それを短時間で綺麗にしてくれた公爵家の熟練メイドさんには感謝しかない。もちろん、それを指示したアリスにも。
「強引に場所に乗せられて公爵家に連れていかれた時には、緊張して吐きそうだったけど」
公爵家に着くとすぐにアリスの衣装部屋に通され、着ていた服を脱がされると、アリスがもう着れなくなったという服を何着も着せられた。最終的にクラリスの瞳の色と同じ空色のワンピースに落ち着いたが、今着た服を全部持って行くようにと言われ、一瞬気が遠くなった。
全力でお断りし、何とか自分の服に着替えることができたが、空色のワンピースだけは「是非に!」と言われてしまい、この一着だけはいただいてきてしまった。
「アリス様はどうして私にこんなに良くしてくださるのかしら……」
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