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お見舞いに行こう
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「クラリスさんが怪我をしてお休みですって?!」
アグリーが逮捕された翌日。
いつものように校門でクラリスを待っていたアリスの元にやってきたのは、珍しく少し疲れた様子のウィルと、いつも通りだいぶお疲れの様子のアンソニーだった。
「ああ。昨日色々あってね。詳しいことは放課後に話すよ」
「ですが、クラリスさんが怪我をされたなんて……」
「アリス嬢、今はひとまず教室に行きましょう」
アンソニーの声に、周囲の生徒達の注目を集めていることに気づいたアリスは、すかさず公爵令嬢の仮面を被り直した。
S階へと向かう途中で、ジャンとイメルダが合流する。
「おはよー、ウィル、アンソニー、アリス嬢」
「おはようございます。ウィル様、アンソニー様、アリス様」
にこやかに挨拶してくる二人に、アリスも笑顔で挨拶しようとするが、その笑顔が少し引きつっているのをジャンは見逃さなかった。
「あ、アリス嬢も昨日のこと聞いたの?」
「ジャン、ここではその話は」
情報通のジャンの言葉をアンソニーが遮る。
「あ、ごめん、ごめん」
「詳しいことは放課後に生徒会室で話そう」
ウィルがそこにいる面々にしか聞こえない声で告げると、五人はそれぞれの教室に入って行った。
放課後の生徒会室には、朝の五人プラスポールとエラリーが集まっていた。
「何ですって。昨夜そんなことが……」
ウィル達から昨晩の捕物劇のことを聞いたアリスは真っ青になった。
(だから、あの時嫌な予感がしたのよ! ああ、追いかけてでもクラリスちゃんと一緒に帰れば良かった……!)
アリスは唇を噛んだ。
「アリス嬢、君のせいではないんだからそんな顔をしないで。綺麗な唇に傷がついてしまう」
ちゃっかりアリスの隣に座っていたウィルが、アリスの唇を人差し指でつついた。
「!!! な、なんですの?!」
アリスが真っ赤になりながら、ウィルから離れた。
「うわー、甘ーい」
ジャンが棒読みで言う。
「あの、クラリス様のお怪我は大丈夫なのですか?」
アリスと同じく、初めて昨夜のことを知ったイメルダが心配そうに尋ねた。
「はい。幸い、命に関わるような傷ではなさそうです」
アンソニーの答えに、アリスとイメルダはホッと息を吐く。
「それで、クラリスさんは今は王宮にいらっしゃるのかしら?」
「そうだよ。今回は騎士団の不手際でクラリス嬢達に迷惑をかけてしまったからね。回復するまでは王宮医師に診てもらうよ」
「お見舞いに伺うことはできまして?」
「今日、医師に確認して許可が出れば明日には可能だよ」
ウィルがアリスの隣に座り直しながら言う。
「クラリスにはフレデリックがついてるんだよな?」
ポールが気遣わし気に問う。
「ああ。クラリス嬢も一人だと心細いだろうしね。お兄さんには一緒に王宮に滞在してもらってるよ」
「え!フレデリックお兄様が?!クラリスさんと一緒に?!」
(((((フレデリック「お兄様」?)))))
アリスの浮き足だった声にウィル以外の面々が声に出さずにハモった。ウィルはいい笑顔のままアリスを見つめる。
「……アリス嬢、どうして頬が赤いのかな……?」
「え、いえ、そんなことありませんわ!」
「まさか、クラリス嬢のお兄さんと何かあったんじゃあ……」
ウィルの周囲が急激に冷え込む。
「そんなことあり得ませんよ。ウィル様、冷気をしまってください」
アンソニーが呆れたように、ウィルを諌めるが、ウィルの笑顔は固まったままだ。
「あーあ、アリスも、たいがい鈍いよねえ」
ジャンが面白そうにアリスとウィルを見つめる。アリスはいたたまれなくなり、ソファから立ち上がった。
「わ、わたくし、今日はこれで失礼いたしますわ。それでは、皆さまご機嫌よう」
「ウィル様、よろしいのですか、アリス嬢を行かせてしまって」
優雅に淑女の礼をして去っていくアリスを見送りつつ、主人の気持ちに忠実な側近、アンソニーがウィルに心配そうに尋ねる。
「うん、アリス嬢には明日しっかり問いただすことにするよ」
にっこり笑うウィルのせいで、部屋の温度はさらに急低下するのだった。
コンコン。
軽くノックの音がして、耳に心地良い声が聞こえる。
「お邪魔してもよろしいでしょうか」
「はい。どうぞ。」
クラリスはベッドに身体を起こした状態で返事をした。そこにウィルとアンソニーが入ってくる
「グッドウィル医師、クラリス嬢の調子はどうかな」
「はい。昨日に比べると、貧血もだいぶ良くなってはいるかと。今のところ熱もなく、怪我も塞がり始めています」
「そうか。それなら良かった。明日、クラリス嬢の友人が見舞いに来たいと言うのだが、許可を出してもいいのか確認したくてね」
「お部屋の中でベッドに横たわった状態で良ければ、お話するぐらいなら大丈夫でしょう。ただ、まだ外出したり、急に動いたりすることは避けていただいた方がいいですね」
「トニー、今の話をアリス嬢達に伝えてくれ」
「かしこまりました」
「明日は賑やかになりそうだね」
ウィルはクラリスとフレデリックを見て、にっこり笑った。
アグリーが逮捕された翌日。
いつものように校門でクラリスを待っていたアリスの元にやってきたのは、珍しく少し疲れた様子のウィルと、いつも通りだいぶお疲れの様子のアンソニーだった。
「ああ。昨日色々あってね。詳しいことは放課後に話すよ」
「ですが、クラリスさんが怪我をされたなんて……」
「アリス嬢、今はひとまず教室に行きましょう」
アンソニーの声に、周囲の生徒達の注目を集めていることに気づいたアリスは、すかさず公爵令嬢の仮面を被り直した。
S階へと向かう途中で、ジャンとイメルダが合流する。
「おはよー、ウィル、アンソニー、アリス嬢」
「おはようございます。ウィル様、アンソニー様、アリス様」
にこやかに挨拶してくる二人に、アリスも笑顔で挨拶しようとするが、その笑顔が少し引きつっているのをジャンは見逃さなかった。
「あ、アリス嬢も昨日のこと聞いたの?」
「ジャン、ここではその話は」
情報通のジャンの言葉をアンソニーが遮る。
「あ、ごめん、ごめん」
「詳しいことは放課後に生徒会室で話そう」
ウィルがそこにいる面々にしか聞こえない声で告げると、五人はそれぞれの教室に入って行った。
放課後の生徒会室には、朝の五人プラスポールとエラリーが集まっていた。
「何ですって。昨夜そんなことが……」
ウィル達から昨晩の捕物劇のことを聞いたアリスは真っ青になった。
(だから、あの時嫌な予感がしたのよ! ああ、追いかけてでもクラリスちゃんと一緒に帰れば良かった……!)
アリスは唇を噛んだ。
「アリス嬢、君のせいではないんだからそんな顔をしないで。綺麗な唇に傷がついてしまう」
ちゃっかりアリスの隣に座っていたウィルが、アリスの唇を人差し指でつついた。
「!!! な、なんですの?!」
アリスが真っ赤になりながら、ウィルから離れた。
「うわー、甘ーい」
ジャンが棒読みで言う。
「あの、クラリス様のお怪我は大丈夫なのですか?」
アリスと同じく、初めて昨夜のことを知ったイメルダが心配そうに尋ねた。
「はい。幸い、命に関わるような傷ではなさそうです」
アンソニーの答えに、アリスとイメルダはホッと息を吐く。
「それで、クラリスさんは今は王宮にいらっしゃるのかしら?」
「そうだよ。今回は騎士団の不手際でクラリス嬢達に迷惑をかけてしまったからね。回復するまでは王宮医師に診てもらうよ」
「お見舞いに伺うことはできまして?」
「今日、医師に確認して許可が出れば明日には可能だよ」
ウィルがアリスの隣に座り直しながら言う。
「クラリスにはフレデリックがついてるんだよな?」
ポールが気遣わし気に問う。
「ああ。クラリス嬢も一人だと心細いだろうしね。お兄さんには一緒に王宮に滞在してもらってるよ」
「え!フレデリックお兄様が?!クラリスさんと一緒に?!」
(((((フレデリック「お兄様」?)))))
アリスの浮き足だった声にウィル以外の面々が声に出さずにハモった。ウィルはいい笑顔のままアリスを見つめる。
「……アリス嬢、どうして頬が赤いのかな……?」
「え、いえ、そんなことありませんわ!」
「まさか、クラリス嬢のお兄さんと何かあったんじゃあ……」
ウィルの周囲が急激に冷え込む。
「そんなことあり得ませんよ。ウィル様、冷気をしまってください」
アンソニーが呆れたように、ウィルを諌めるが、ウィルの笑顔は固まったままだ。
「あーあ、アリスも、たいがい鈍いよねえ」
ジャンが面白そうにアリスとウィルを見つめる。アリスはいたたまれなくなり、ソファから立ち上がった。
「わ、わたくし、今日はこれで失礼いたしますわ。それでは、皆さまご機嫌よう」
「ウィル様、よろしいのですか、アリス嬢を行かせてしまって」
優雅に淑女の礼をして去っていくアリスを見送りつつ、主人の気持ちに忠実な側近、アンソニーがウィルに心配そうに尋ねる。
「うん、アリス嬢には明日しっかり問いただすことにするよ」
にっこり笑うウィルのせいで、部屋の温度はさらに急低下するのだった。
コンコン。
軽くノックの音がして、耳に心地良い声が聞こえる。
「お邪魔してもよろしいでしょうか」
「はい。どうぞ。」
クラリスはベッドに身体を起こした状態で返事をした。そこにウィルとアンソニーが入ってくる
「グッドウィル医師、クラリス嬢の調子はどうかな」
「はい。昨日に比べると、貧血もだいぶ良くなってはいるかと。今のところ熱もなく、怪我も塞がり始めています」
「そうか。それなら良かった。明日、クラリス嬢の友人が見舞いに来たいと言うのだが、許可を出してもいいのか確認したくてね」
「お部屋の中でベッドに横たわった状態で良ければ、お話するぐらいなら大丈夫でしょう。ただ、まだ外出したり、急に動いたりすることは避けていただいた方がいいですね」
「トニー、今の話をアリス嬢達に伝えてくれ」
「かしこまりました」
「明日は賑やかになりそうだね」
ウィルはクラリスとフレデリックを見て、にっこり笑った。
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