51 / 139
お見舞いに行こう(続)
しおりを挟む
「皆様、わざわざお見舞いに来ていただき、ありがとうございます。こんな格好ですみません。まだあまり動かないように言われていまして」
「そんなこと気にしないでくださいな。クラリスさんのお顔が見られるだけで十分ですわ」
「そうだよ。クラリス嬢は怪我人なんだからさ、安静にしていないと」
「クラリス様、これはジャン様とエラリー様と一緒にまとめた授業のノートです。もしよかったら参考になさってくださいね」
アリスとジャン、イメルダが口々にクラリスに見舞いの言葉をかける。その後ろでポール、エラリー、アンソニーは誰が一番最初にクラリスの側に行くかで、密かに争っていた。
そんな騒がしい中、クラリスの側についていたフレデリックがアリスに頭を下げた。
「アリス様。ウィリアム王太子殿下からお伺いしました。この度のコモノー男爵親子逮捕には、アリス様のお力添えがあったとか。妹のために色々とご配慮いただき、本当にありがとうございました」
「え!そんな!私は何もしていませんわ!」
アリスの声が高くなる。
「アリス様、私もまだお礼をお伝えできていませんでした。私がアリス様にコモノー男爵達のお話をした後、あの人達がお店に来なくなったのは、アリス様のおかげだったんですね。ありがとうございました。これでもう安心してお店の手伝いをすることができます」
(推しからダブルでお礼を言われるなんて……!!生きてて良かった……!!)
喜びのあまり言葉を失っているアリスの側に、いつの間にかウィルがやって来て、アリスの腰を抱いた。
「?!」
「あ、始まった」
驚きで固まるアリスを無視して、ウィルがキラキラ王子様スマイルでフレデリックを見た。その後ろで、ジャンが楽しそうにニヤニヤしている。
「私の婚約者は有能で友人思いなんだ。今回も彼女の働きかけのお陰で、悪い奴らを捕まえることができて良かったよ」
「はい。本当にありがとうございます。妹だけでなく、私まで王宮でお世話になってしまって……」
フレデリックは生真面目に頭を下げる。
「コモノー男爵親子は逮捕できたとはいえ、クラリス嬢には怪我をさせてしまったからね。騎士団がもっとしっかりしていたら、こんなことにはならなかった。だから、クラリス嬢が元気になるまでは、ここでしっかり療養してもらうよ」
「「ありがとうございます」」
クラリスとフレデリックは感謝の念を込めてキラキラとした瞳でウィルを見つめた。
(私のクラリスちゃんとフレデリック様からそんな目で見つめられるなんて、ズルい!)
思わずアリスはキッとウィルを睨みつけた。そんなアリスの視線を軽く受け止めると、ウィルはアリスに告げた。
「アリス嬢。今日は私とのお茶会の予定だったね。庭に用意させてあるから行こうか」
「お、お茶会……ですか……?」
(え、いや、何言ってんの?そんな予定初耳ですけど!)
「みんなもあまり長居してクラリス嬢を疲れさせないようにね。さ、アリス嬢、行こう」
ウィルはみんなに声をかけると、怪訝そうに見つめるアリスの手を取り、颯爽と部屋を出て行った。
「やれやれ。ウィルも余裕ないよねー」
「ジャン様!」
呆れたように言うジャンをイメルダが慌てて嗜めた。
「はー、ようやくクラリスの顔が見られた。クラリス、調子はどうだ?」
皆がウィルとアリスを見送っている隙に、ポールがすかさずクラリスの側に立つ。
「ポールお兄ちゃん!この間は助けてくれてありがとう!ちゃんとお礼も言えてなくてごめんね」
「おう。あ、これ、クラリスの好きなクランベリーパイ。焼き立てだからうまいぞ」
甘酸っぱい香りがふわっと広がり、クラリスが満面の笑みを浮かべる。
「うわあ!ポールお兄ちゃんのクランベリーパイ、久しぶり!嬉しい!」
「でも、焼き立てって。ポール、お前いつの間に?今日は授業があったんじゃないのか?」
フレデリックがもっともな質問をする。
「へへ。今日は急な腹痛で早退したんだ」
「だから三限目のあと姿が見えなかったんですね。全く君という人は……」
いつの間にかアンソニーがポールの横に立っていて、呆れた声をあげた。
「あ、なんだ、お前、いつの間に!」
「クラリス嬢、先ほどウィル様がおっしゃっていたこと、王宮に務める人間として、私からもお詫びいたします。あなたを守れず、傷つけてしまい、すみませんでした」
右手をお腹にあて、深々と頭を下げるアンソニーに、クラリスとフレデリックが慌てる。
「そんな、アンソニー様のせいではありません!お顔を上げてください!」
「そうです。アンソニー様のおかげで妹も私も、ここでとてもよくしていただいています。謝られるようなことは何もありません」
「そう言っていただけると、気が楽になります」
アンソニーが一転、ウィルにも負けないぐらいのキラキラオーラを出しながら、持ってきた本をクラリスに差し出す。
「これは昨日お渡しした本の続巻です。具合のいい時の暇つぶしにどうぞ」
「まあ!ありがとうございます!昨日いただいた本がとても面白くて、続きが気になっていたんです。嬉しいです!ありがとうございます!」
クラリスが目を輝かせて本を受け取ると、アンソニーはクラリスの片手を取った。
「ところで、先ほど私の名前を間違えていましたよ?」
片目をつぶりながら、クラリスの手を自身の口元に持っていく。
「あ!すみません、つい、その……」
「ん?」
「あ、あの、トニー様……」
「そうです、私の名前を忘れないでくださいね」
にっこり笑ってクラリスの手の甲に軽く口付けを落とす。と、隣で石化していたポールがハッと気づくと、慌ててクラリスからアンソニーを引き剥がした。
「そんなこと気にしないでくださいな。クラリスさんのお顔が見られるだけで十分ですわ」
「そうだよ。クラリス嬢は怪我人なんだからさ、安静にしていないと」
「クラリス様、これはジャン様とエラリー様と一緒にまとめた授業のノートです。もしよかったら参考になさってくださいね」
アリスとジャン、イメルダが口々にクラリスに見舞いの言葉をかける。その後ろでポール、エラリー、アンソニーは誰が一番最初にクラリスの側に行くかで、密かに争っていた。
そんな騒がしい中、クラリスの側についていたフレデリックがアリスに頭を下げた。
「アリス様。ウィリアム王太子殿下からお伺いしました。この度のコモノー男爵親子逮捕には、アリス様のお力添えがあったとか。妹のために色々とご配慮いただき、本当にありがとうございました」
「え!そんな!私は何もしていませんわ!」
アリスの声が高くなる。
「アリス様、私もまだお礼をお伝えできていませんでした。私がアリス様にコモノー男爵達のお話をした後、あの人達がお店に来なくなったのは、アリス様のおかげだったんですね。ありがとうございました。これでもう安心してお店の手伝いをすることができます」
(推しからダブルでお礼を言われるなんて……!!生きてて良かった……!!)
喜びのあまり言葉を失っているアリスの側に、いつの間にかウィルがやって来て、アリスの腰を抱いた。
「?!」
「あ、始まった」
驚きで固まるアリスを無視して、ウィルがキラキラ王子様スマイルでフレデリックを見た。その後ろで、ジャンが楽しそうにニヤニヤしている。
「私の婚約者は有能で友人思いなんだ。今回も彼女の働きかけのお陰で、悪い奴らを捕まえることができて良かったよ」
「はい。本当にありがとうございます。妹だけでなく、私まで王宮でお世話になってしまって……」
フレデリックは生真面目に頭を下げる。
「コモノー男爵親子は逮捕できたとはいえ、クラリス嬢には怪我をさせてしまったからね。騎士団がもっとしっかりしていたら、こんなことにはならなかった。だから、クラリス嬢が元気になるまでは、ここでしっかり療養してもらうよ」
「「ありがとうございます」」
クラリスとフレデリックは感謝の念を込めてキラキラとした瞳でウィルを見つめた。
(私のクラリスちゃんとフレデリック様からそんな目で見つめられるなんて、ズルい!)
思わずアリスはキッとウィルを睨みつけた。そんなアリスの視線を軽く受け止めると、ウィルはアリスに告げた。
「アリス嬢。今日は私とのお茶会の予定だったね。庭に用意させてあるから行こうか」
「お、お茶会……ですか……?」
(え、いや、何言ってんの?そんな予定初耳ですけど!)
「みんなもあまり長居してクラリス嬢を疲れさせないようにね。さ、アリス嬢、行こう」
ウィルはみんなに声をかけると、怪訝そうに見つめるアリスの手を取り、颯爽と部屋を出て行った。
「やれやれ。ウィルも余裕ないよねー」
「ジャン様!」
呆れたように言うジャンをイメルダが慌てて嗜めた。
「はー、ようやくクラリスの顔が見られた。クラリス、調子はどうだ?」
皆がウィルとアリスを見送っている隙に、ポールがすかさずクラリスの側に立つ。
「ポールお兄ちゃん!この間は助けてくれてありがとう!ちゃんとお礼も言えてなくてごめんね」
「おう。あ、これ、クラリスの好きなクランベリーパイ。焼き立てだからうまいぞ」
甘酸っぱい香りがふわっと広がり、クラリスが満面の笑みを浮かべる。
「うわあ!ポールお兄ちゃんのクランベリーパイ、久しぶり!嬉しい!」
「でも、焼き立てって。ポール、お前いつの間に?今日は授業があったんじゃないのか?」
フレデリックがもっともな質問をする。
「へへ。今日は急な腹痛で早退したんだ」
「だから三限目のあと姿が見えなかったんですね。全く君という人は……」
いつの間にかアンソニーがポールの横に立っていて、呆れた声をあげた。
「あ、なんだ、お前、いつの間に!」
「クラリス嬢、先ほどウィル様がおっしゃっていたこと、王宮に務める人間として、私からもお詫びいたします。あなたを守れず、傷つけてしまい、すみませんでした」
右手をお腹にあて、深々と頭を下げるアンソニーに、クラリスとフレデリックが慌てる。
「そんな、アンソニー様のせいではありません!お顔を上げてください!」
「そうです。アンソニー様のおかげで妹も私も、ここでとてもよくしていただいています。謝られるようなことは何もありません」
「そう言っていただけると、気が楽になります」
アンソニーが一転、ウィルにも負けないぐらいのキラキラオーラを出しながら、持ってきた本をクラリスに差し出す。
「これは昨日お渡しした本の続巻です。具合のいい時の暇つぶしにどうぞ」
「まあ!ありがとうございます!昨日いただいた本がとても面白くて、続きが気になっていたんです。嬉しいです!ありがとうございます!」
クラリスが目を輝かせて本を受け取ると、アンソニーはクラリスの片手を取った。
「ところで、先ほど私の名前を間違えていましたよ?」
片目をつぶりながら、クラリスの手を自身の口元に持っていく。
「あ!すみません、つい、その……」
「ん?」
「あ、あの、トニー様……」
「そうです、私の名前を忘れないでくださいね」
にっこり笑ってクラリスの手の甲に軽く口付けを落とす。と、隣で石化していたポールがハッと気づくと、慌ててクラリスからアンソニーを引き剥がした。
0
あなたにおすすめの小説
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!
白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、
《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。
しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、
義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった!
バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、
前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??
異世界転生:恋愛 ※魔法無し
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました
黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました
乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。
これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。
もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。
魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。
私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました
チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。
王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。
エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。
だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。
そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。
夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。
一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。
知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。
経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる