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時間との戦い
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「ははっ、こんなに上手くいくとはな!」
意識を失ったまま馬車の座席に転がされているクラリスを見ながら、男達は笑いが止まらなかった。
「全くだ。最初はなかなか一人にならないから焦ったけどな」
「しかし、綺麗な娘だな。計画が上手くいったら俺達の好きにしていいんだろ?」
男の一人が下卑た笑いを浮かべてクラリスを見る。
「ああ。先ほど飲ませた薬も効いているだろうし、あっちの方から迫ってくるかもしれないぜ」
いやらしく口元を歪めて、別の男が言う。
男たちは、先日の断罪劇で両親は拘束されたものの、事件への関与が不明として、罪には問われなかった貴族の令息達だった。
パーティー会場でクラリスが一人になった所を狙って誘拐する。クラリスの身の安全と引き換えに、牢に囚われている自分達の両親を解放させる。
それが、今回の彼らの狙いだった。
「王宮の警備もたいしたことないな」
「ふん。こんな王家はもう要らないだろう。父上達を助け出したら、今度こそ潰してしまおう」
「ああ、俺達にした仕打ちの報いを受けさせてやる!」
そんな不穏な悪巧みを乗せて、馬車は夜道をひた走った。
===========================
「クラリス嬢!」
パーティー会場でクラリスを見失ってしまったエラリーは、クラリスが座っていた椅子の周りを見渡していた。
「どこに行ってしまったんだ……!」
「エラリー様!」
焦るエラリーに声をかける令嬢がいた。またダンスの申し込みか何かかと、エラリーは苛立ちを隠そうともせずに、令嬢を睨みつけた。
「エラリー様、クラリスさんが大変です!」
だが、令嬢の意外な言葉にエラリーは目を見開く。
「あなたは……確か、ヤイミー嬢か?」
「はい!先ほど私が帰ろうとした時、イディオ侯爵家のシリー様がぐったりとしたクラリスさんを抱いて馬車に乗るのを見たのです!」
===========================
「はあ、もう帰ろうかな……」
王国貴族は全員参加のパーティーだったため、招待を受けて参加していたヤイミーだったが、親しい友人がいるわけでもなく、早々に引き上げようとしていた。
侯爵家の馬車に乗り込み、窓のカーテンを閉めようとして、目の端に金髪が光るのが見え、その手を止めた。
「あれは……クラリスさん……?」
いつもクラリスの周囲にいるはずのポールやエラリー、アンソニーといった男性達とは違う男性が、意識のない様子のクラリスを抱いて馬車に乗せている。
「え、これってもしかして……!」
クラリスを乗せた馬車が動き出したのを見て、ヤイミーは慌てて馬車から降りると、今来たばかりの道を急ぎ戻った。
==========================
「あれは、確かにイディオ家の家紋でした!早くしないとクラリスさんが!」
走ってきたのか、ヤイミーは汗が流れ落ちるのも気にせずに、エラリーに訴えた。
「なんだと……!ヤイミー嬢、このことをアンソニー達に伝えてくれ!俺は馬で後を追う!」
「はい!」
こくこくと頷くヤイミーを残して、エラリーはパーティー会場を飛び出した。
「間に合ってくれ!」
エラリーはヤイミーから聞いた方角へと馬を急がせた。
すると、町外れの人気のない裏道に、イディオ家の家紋のついた馬車が乗り捨てられていた。
エラリーは慌てて馬を降りると、慎重に馬車を検分する。だが、やはり馬車には人の気配はなく、御者すらもいなかった。
扉を開けて中を検めると、座席にはまだぬくもりが残っている。
「この馬車を降りてからそれほど時間は経っていないな。ここで馬車を乗り換えたか……」
暗い夜道でエラリーはしゃがみ込み、道路に残っている新しい轍を探す。
「……これだ!この方角だ!」
再び馬に飛び乗ると、エラリーはひたすら馬を走らせた。
「クラリス嬢……!どうか無事で……!」
意識を失ったまま馬車の座席に転がされているクラリスを見ながら、男達は笑いが止まらなかった。
「全くだ。最初はなかなか一人にならないから焦ったけどな」
「しかし、綺麗な娘だな。計画が上手くいったら俺達の好きにしていいんだろ?」
男の一人が下卑た笑いを浮かべてクラリスを見る。
「ああ。先ほど飲ませた薬も効いているだろうし、あっちの方から迫ってくるかもしれないぜ」
いやらしく口元を歪めて、別の男が言う。
男たちは、先日の断罪劇で両親は拘束されたものの、事件への関与が不明として、罪には問われなかった貴族の令息達だった。
パーティー会場でクラリスが一人になった所を狙って誘拐する。クラリスの身の安全と引き換えに、牢に囚われている自分達の両親を解放させる。
それが、今回の彼らの狙いだった。
「王宮の警備もたいしたことないな」
「ふん。こんな王家はもう要らないだろう。父上達を助け出したら、今度こそ潰してしまおう」
「ああ、俺達にした仕打ちの報いを受けさせてやる!」
そんな不穏な悪巧みを乗せて、馬車は夜道をひた走った。
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「クラリス嬢!」
パーティー会場でクラリスを見失ってしまったエラリーは、クラリスが座っていた椅子の周りを見渡していた。
「どこに行ってしまったんだ……!」
「エラリー様!」
焦るエラリーに声をかける令嬢がいた。またダンスの申し込みか何かかと、エラリーは苛立ちを隠そうともせずに、令嬢を睨みつけた。
「エラリー様、クラリスさんが大変です!」
だが、令嬢の意外な言葉にエラリーは目を見開く。
「あなたは……確か、ヤイミー嬢か?」
「はい!先ほど私が帰ろうとした時、イディオ侯爵家のシリー様がぐったりとしたクラリスさんを抱いて馬車に乗るのを見たのです!」
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「はあ、もう帰ろうかな……」
王国貴族は全員参加のパーティーだったため、招待を受けて参加していたヤイミーだったが、親しい友人がいるわけでもなく、早々に引き上げようとしていた。
侯爵家の馬車に乗り込み、窓のカーテンを閉めようとして、目の端に金髪が光るのが見え、その手を止めた。
「あれは……クラリスさん……?」
いつもクラリスの周囲にいるはずのポールやエラリー、アンソニーといった男性達とは違う男性が、意識のない様子のクラリスを抱いて馬車に乗せている。
「え、これってもしかして……!」
クラリスを乗せた馬車が動き出したのを見て、ヤイミーは慌てて馬車から降りると、今来たばかりの道を急ぎ戻った。
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「あれは、確かにイディオ家の家紋でした!早くしないとクラリスさんが!」
走ってきたのか、ヤイミーは汗が流れ落ちるのも気にせずに、エラリーに訴えた。
「なんだと……!ヤイミー嬢、このことをアンソニー達に伝えてくれ!俺は馬で後を追う!」
「はい!」
こくこくと頷くヤイミーを残して、エラリーはパーティー会場を飛び出した。
「間に合ってくれ!」
エラリーはヤイミーから聞いた方角へと馬を急がせた。
すると、町外れの人気のない裏道に、イディオ家の家紋のついた馬車が乗り捨てられていた。
エラリーは慌てて馬を降りると、慎重に馬車を検分する。だが、やはり馬車には人の気配はなく、御者すらもいなかった。
扉を開けて中を検めると、座席にはまだぬくもりが残っている。
「この馬車を降りてからそれほど時間は経っていないな。ここで馬車を乗り換えたか……」
暗い夜道でエラリーはしゃがみ込み、道路に残っている新しい轍を探す。
「……これだ!この方角だ!」
再び馬に飛び乗ると、エラリーはひたすら馬を走らせた。
「クラリス嬢……!どうか無事で……!」
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