【完結】転生ヒロインと転生(?)悪役令嬢は逆ハーエンドを回避したい! 〜R18禁エンドはごめんです!〜

koromachi

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救いの手

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 *最後の方に少しだけ残酷な描写があります。



「全く、これだからお坊ちゃん達は。わきが甘いんだよ」

「ボス、娘と男は縛り上げて地下室に放り込みましたが、あの三人はどうしますか?」

「まあ、外に捨てておいてもいいが、一応は依頼主だからな。報酬を受け取るまでは面倒みてやるか。中に連れてきてやれ」

「あいよ。おい、お前達、依頼主様達を部屋に運んでこい」

「「「へいっ」」」



「あの娘はまだ目が覚めないのか」

「それが死んでるみたいに大人しくて。一応、息があるのは確認しましたがね」

「あの薬の効果を見てみたいんだがな。起こせないのか」

「やってみますか?」

「いや……ひとまず、依頼主様達を先に起こしてからだな」

 ボスと呼ばれた大男が少し考えてから答える。そこに、部下の男達が三人の貴族令息を引きずってきた。

「ボス、連れてきました」

「三人のうち一人は顎の骨が折れてますぜ」

「こっちも顎をやられています」

「話せそうな奴はいないのか」

「こいつは顔は大丈夫そうです」

 エラリーのパンチを最初に脇腹に浴びた男が呻いた。

「おい、にいちゃん、生きてるか」

「う……う……は、腹が……」

「そこに座らせてやれ」

 ボスの指示に部下は手近な椅子に男の身体を放り投げる。

「う、うぐわぁっ」

「お前達を襲った男は誰だ?あの嬢ちゃんの関係者か?」

「う、あ、あの男は、エラリー・ド・キンバリー、伯爵家の次男だ」

「その伯爵家の次男様がどうしてここに来た」

「わ、わからん。いつの間に後をつけられたのか……だが、その男の父親は騎士団長だ。だからそいつも騎士の真似事を……」

「何?よりにもよって、厄介な相手を連れてきやがって」

 ボスが呆れた声を上げた。

「おい、ここはまずい。引き上げるぞ。女を連れてこい」

「男はどうします?」

「いらん。騎士団長の息子なんて連れて行ったら、地獄の果てまで追いかけられる。女は報酬代わりにもらっていく」

「わかりやした!おい、お前達!」

「「「へいよ」」」

 下っ端三人が地下へと向かう。



「ま、待て、まだ計画は完了していない、勝手なことをするな」

 腹を押さえたまま、貴族の男が声を上げた。

「計画だと?はっ、騎士団長の息子に後をつけられた時点で、おぼっちゃま達の計画はおじゃんだよ。俺達はあの薬が簡単に手に入るって聞いてこの話に乗ったんだ。騎士団のお尋ね者になるなんて聞いてねえ」

「だ、だが、シリーが、イディオ侯爵令息が前金を支払っているはずだ」

「ふん。あんな端金で足りるかよ」

「そんな……裏切るのか」

「裏切るも何も、最初から俺達とあんた達は仲間でも何でもないだろ」

「くっ……」

 貴族の男はボスの言葉に何も言い返せない。



「「「ボス、連れてきました」」」

 男達がクラリスを荷物のように担いで戻ってきた。

「よし。行くぞ」

 ボスが立ち上がった、その時だった。


 ガシャーン!


 地下から大きな物音がした。


 ========================


「エラリー、エラリー」

 優しく自分の名を呼ぶ声に、エラリーは薄らと目を開いた。身体を動かそうとして、後頭部の痛みに顔が歪む。

「これはひどくやられたね」

 どこか歌うように言うその声は、兄のセベールのものだった。

「……!兄上!どうしてここに!」

「詳しい話は後だ。立てるかい?」

「ああ、大丈夫だ……っ!クラリス嬢は?!」

 手足の拘束を解かれ、ふらつきながらも立ち上がったエラリーは、セベールの肩を両手で掴み、問いただした。

「しー。あまり大声を出さないで。クラリス嬢は上だ。あいつらに連れ去られる前に助けなければ」

「っな!」


 ガシャーン!


 セベールの言葉に、エラリーは牢の扉を蹴り開け、慌てて廊下に出たが、どちらに向かっていいかわからず顔を左右に振る。

「そんなに慌てない。階段は右だよ」

 それを聞いてすぐさま右に走り出そうとしたエラリーだったが、頭を強く打たれたせいで、ふらついてしまって走れない。

「エラリー、無理はしないで。ここは私に任せて」

 頭を押さえてその場にうずくまる弟を優しく労わると、セベールは軽やかな足取りで階段を登って行った。


 ==========================


「な、何だ、今の音は?!」

「やい、てめえら、男もきっちり縛り上げたんだろな?!」

「あ、当たり前じゃないですか!」

「あんな男、拘束なしで置いておけませんよ!」

 男達が騒ぎ立てる。

「ええい!いいから逃げるぞ!ぐずぐずするな!」

 ボスの命令に手下達も一斉に玄関へと向かおうとした、その時だった。


「おやおや、そんなに急いでどうしたのかな?」

 この上なく優美な笑顔を浮かべたセベールが階段の上に姿を見せた。

「な、なんだ、てめえは!どっから湧いて出やがった?!」

「どこからって、私は君達が来る前からここにいたよ。君達を待っていたんだ」

 大男の威嚇にも全くひるまず、セベールはニコニコと告げる。

「何だと?お前は何者だ?!」

 セベールがボスの問いに答えるより先に、手下達がいきり立つ。

「ボス、やっちまいましょう!」

「こんなヒョロヒョロした奴、簡単にやれますよ!」

「俺がやってやるよ!うらああ!」

 ボスの答えも聞かず、手下の一人がセベールに殴りかかった。

 その刹那。

「うぎゃあああ!」

 セベールの手にナイフが光ったかと思うと、男の顔がズタズタに切り裂かれていた。

「あ……あ……」

 肉片と血が飛び散り、目も口も鼻も、最早、男の顔でその機能を保っている器官はなかった。

 顔をおさえてのたうち回る男に、誰も近寄ろうとしない。

「さて、まずは一人。次は誰の番かな?」


 セベールが凄絶な美しさをたたえて、その細い首をかしげた。
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