【完結】転生ヒロインと転生(?)悪役令嬢は逆ハーエンドを回避したい! 〜R18禁エンドはごめんです!〜

koromachi

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もつれた糸の解き方

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 騒動から数日後。


「何とかしないと……」

 ジャン達から話を聞いたエラリーは、居ても立っても居られず、王宮をこっそり抜け出そうとしていた。

「うっ……」

 傷がまだ治り切っているわけはなく、身体を動かすと目眩がする。

「馬車より馬の方が早いか……」

 目立たないように厩舎に向かったが、あいにくそこには先客がいた。咄嗟に身を隠せる場所もなく、呆気なく見つかる。


「あれ?君は確か……キンバリー伯爵のご令息の……」

「エラリーと申します。ディミトリ公世子にご挨拶申し上げます」

 ブートレット公国のディミトリがそこにいた。

「ああ、エラリーだね。そんなに畏まらなくていいよ。もう動いても大丈夫なのかい?」

 ディミトリが人懐こい笑顔を見せる。

「あ、いえ、少し気分転換に散歩を……」

 嘘のつけないエラリーは、途端にしどろもどろになる。

「ふふ。どこか行きたい所でもあるのかな?でも、その怪我で動き回るのはあまりおすすめできないな。特に乗馬は揺れるからね、頭の傷に響くよ」

「っ!」

 ディミトリにはエラリーの考えはお見通しのようだった。

「私は少し街へ行こうかと思っていたんだが……まずは君の話を聞こうか。部屋まで送るよ」

 ディミトリに促され、エラリーは渋々厩舎を後にした。


 ==========================


「ここか」

 夕食にはまだ少し早い明るい時間に、食堂の前に立つ長身の男がいた。

 平民と変わらない身なりだが、どことなく品がある。

 コンコン。

 軽くノックすると、男は扉を開けた。

「すみません、まだ準備中なんです」

 クラリスの母のエリーが応対する。

「ああ、忙しい時間にすまないね。クラリスさんとポール君はいるかな?」

「え?あの、あなたはどちら様で……?」

 エリーが警戒する。

 そこに、早目の夕食を終えたクラリスとポールが奥のキッチンから出てきた。

「ふぅー、食った、食った。おじさん、おばさん、今日も美味かったぜ、ご馳走さん」

「もう、ポールお兄ちゃんたら。お行儀が悪いわよ」


 賑やかに出てきた二人は、エリーが対峙している男に気付かない。

「クラリス、ポール、あなた達にお客様だけど……」

 エリーに言われて扉の前に立つ男に気付き、ポールが前に出る。

「おばさん、下がってて」

 男は帽子を深くかぶっており、顔は見えないが、長身のポールと目線がほとんど変わらない。

「何か用ですか?」

 ポールがぶっきらぼうに尋ねる。

「突然すまないね。私を覚えているかな?」

 男が帽子を外すと、美しいプラチナブロンドが溢れ出た。

「!あんたは……!」

「……ディミトリ様……?!」

「覚えていてくれて嬉しいよ」

 ディミトリが屈託のない笑顔を見せるが、ポールは顔を強張らせて、ディミトリを扉の向こうに押しやろうとする。

「ここはあなたの様な高貴な方が来るような所じゃありません。お引き取りください」

「ポール殿、クラリス嬢、少しだけ話をさせてくれないか」

「お話しすることは何もありません」

 ディミトリが真剣な顔で頼むも、ポールはがんとして譲らない。

「ポール殿、頼む。このままでは私は国に帰れない。今回の騒動は我が愚昧の責でもあるんだ」

「……」

「ポール、ひとまず奥に。そこにお前達みたいなデカいのが突っ立っていたら、客が入ってこられない」

 厨房から様子を伺っていたクラリスの父が声をかけた。

「……わかったよ」

「ありがとう、ご主人」

 ポールは渋々ディミトリを中に入れる。

「ポールお兄ちゃん……」

 クラリスがポールの側に来て、その服の裾をギュッと掴んだ。

「クラリス、大丈夫だ。俺がいる」

 ポールが優しくクラリスの肩を抱く。


「ポール、クラリス、キッチンを使え」

 オーリーの言葉に、ポールはクラリスを庇いながら、奥のキッチンへとディミトリを促した。



「あなた……いいのかしら……」

 エリーが不安そうに三人を見送る。

「ポールもクラリスも、このままじゃ前に進めないだろう。あの男が誰かは知らんが、パーティーの騒動についての話なら、二人はしっかり聞くべきだ」

 王宮のパーティーで何があったかは、ポールとクラリスから聞いていた。オーリーとエリーは、娘の身に起こったことに怒り、悲しんだが、友人を失って失意の底にいるクラリスとポールを見ているのも辛かった。

「あいつらはまだ若い。いくらでもやり直せる」

 オーリーは突然現れた、物腰の柔らかい、誠実そうな男を信じることにした。
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