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一筋縄ではいかない
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時は少し遡って、国王の執務室にて。
「セベールはどうしている?」
「おとなしく自宅で謹慎しております」
「そうか。あれの処分を決めかねて、ひとまず自宅謹慎としたが、この後どうしたものか……」
「セベールの今回の働きのおかげで不満分子は一掃されましたが……」
「ああ。結果的にクラリス嬢を救ったのも奴だ」
「ですが、そもそも誘拐された原因は……」
「奴がギリギリまで犯人を泳がせていたせいだ」
「「……はああ……」」
国王と宰相は同時に深いため息をついた。
「我々だけで話し合っても堂々巡りです。ここは一つ、ウィリアム殿下とアンソニーの意見を聞いてみるのはいかがでしょうか」
「……また怒られるぞ」
アリスに嫌われたと思ったウィルと、クラリスに嫌われたと思ったアンソニーから、国王と宰相はかなり厳しく非難された。
どうやらそれがトラウマになっているらしい国王が、珍しく弱気な声を出す。
「うっ、で、ですが、このままというわけにはいきませんし……もう一人のキンバリー子息、エラリーには騎士として立派に務めを果たした褒美を与える必要もありますぞ」
「そうだな。仕方がない、ウィリアム達を呼ぶか……」
賢王と名高い国王も切れ者と名高い宰相も、一皮剥けば息子に嫌われるのが怖い、ただの父親だった。
==========================
「クラリス嬢、君の気持ちを聞かせてくれ。君には意中の相手はいるのかな?」
ディミトリがにこやかにクラリスに尋ねた。
その質問に、ポール、アンソニー、エラリーの三人はもちろん、ウィルに捕えられたままのアリスにまで緊張が走った。ジャンだけが、面白そうにみんなの顔を見回している。
「私の気持ちですか……?そ、それは好きな人がいるかどうかという……?」
「ああ、そうだよ。もし誰もいないなら、ぜひ私に立候補させてもらいたいね」
ディミトリの笑顔が心なしか黒い。
「……私は、好きな人はいませんが、少し、気、気になっている人ならいます……!」
ポールとアンソニーの背中の隙間から、真っ赤になった顔を覗かせて、クラリスが答えた。
「「「「!!!」」」」
その答えに、ポール、アンソニー、エラリー、アリスの四人に衝撃が走った。
「ク、クラリスさん、それは本当ですの……?」
ウィルの腕からなんとか脱出したアリスがクラリスの元に駆け寄った。
「は、はい、本当です……」
(そ、そんな!私の可愛いクラリスちゃんに気になる男がいるなんて!まさか、この三人のうち誰かってこと?!ええい……許すまじ!)
「アリス、そんな顔は私のためだけにして欲しいね」
嫉妬のあまり般若の様相を見せるアリスを再びウィルが捕まえた。
「ちょっ、ウィル様!いい加減放してくださいませ!」
暴れるアリスと対照的に、ポール達三人は完全に固まってしまっている。
(クラリスの気になってる奴って一体誰だよ!やっぱりアンソニーか?!それともエラリーか?!くそ、俺じゃないのかよ?!)
(まさか、クラリス嬢がそう答えるとは……やはりポールなのか……いや、命懸けでクラリス嬢を救ったエラリーか……万に一つでも、私ということはないだろうか……)
(そんな、クラリス嬢にそんな相手が……いや、ポールやアンソニーなら好きになっても仕方ないぐらいのいい男達だしな。でも、俺も少しは気にしてもらえてはいないだろうか……)
「ポールとエラリーはともかく、アンソニーまで考えていることが顔に出てるなんて、よっぽどショックだったんだねー」
呆然として言葉も出ない三人に、ジャンが容赦なく追い討ちをかける。
「ところで、ディミトリはどうして突然そんなことを言い出したの?こうなることはわかっていたでしょ?」
「もちろん、クラリス嬢に惹かれたからに決まっているだろう?」
ジャンとディミトリが似たような笑顔を浮かべながら言葉を交わす。
「ふーん。それで、クラリス嬢の返事を聞いて諦めるの?」
「そうだねえ。諦めるにはまだ早いかな」
「だって。ポールもアンソニーもエラリーも、ライバル増えちゃったね。どうする?」
ジャンが楽しそうに笑った。
「セベールはどうしている?」
「おとなしく自宅で謹慎しております」
「そうか。あれの処分を決めかねて、ひとまず自宅謹慎としたが、この後どうしたものか……」
「セベールの今回の働きのおかげで不満分子は一掃されましたが……」
「ああ。結果的にクラリス嬢を救ったのも奴だ」
「ですが、そもそも誘拐された原因は……」
「奴がギリギリまで犯人を泳がせていたせいだ」
「「……はああ……」」
国王と宰相は同時に深いため息をついた。
「我々だけで話し合っても堂々巡りです。ここは一つ、ウィリアム殿下とアンソニーの意見を聞いてみるのはいかがでしょうか」
「……また怒られるぞ」
アリスに嫌われたと思ったウィルと、クラリスに嫌われたと思ったアンソニーから、国王と宰相はかなり厳しく非難された。
どうやらそれがトラウマになっているらしい国王が、珍しく弱気な声を出す。
「うっ、で、ですが、このままというわけにはいきませんし……もう一人のキンバリー子息、エラリーには騎士として立派に務めを果たした褒美を与える必要もありますぞ」
「そうだな。仕方がない、ウィリアム達を呼ぶか……」
賢王と名高い国王も切れ者と名高い宰相も、一皮剥けば息子に嫌われるのが怖い、ただの父親だった。
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「クラリス嬢、君の気持ちを聞かせてくれ。君には意中の相手はいるのかな?」
ディミトリがにこやかにクラリスに尋ねた。
その質問に、ポール、アンソニー、エラリーの三人はもちろん、ウィルに捕えられたままのアリスにまで緊張が走った。ジャンだけが、面白そうにみんなの顔を見回している。
「私の気持ちですか……?そ、それは好きな人がいるかどうかという……?」
「ああ、そうだよ。もし誰もいないなら、ぜひ私に立候補させてもらいたいね」
ディミトリの笑顔が心なしか黒い。
「……私は、好きな人はいませんが、少し、気、気になっている人ならいます……!」
ポールとアンソニーの背中の隙間から、真っ赤になった顔を覗かせて、クラリスが答えた。
「「「「!!!」」」」
その答えに、ポール、アンソニー、エラリー、アリスの四人に衝撃が走った。
「ク、クラリスさん、それは本当ですの……?」
ウィルの腕からなんとか脱出したアリスがクラリスの元に駆け寄った。
「は、はい、本当です……」
(そ、そんな!私の可愛いクラリスちゃんに気になる男がいるなんて!まさか、この三人のうち誰かってこと?!ええい……許すまじ!)
「アリス、そんな顔は私のためだけにして欲しいね」
嫉妬のあまり般若の様相を見せるアリスを再びウィルが捕まえた。
「ちょっ、ウィル様!いい加減放してくださいませ!」
暴れるアリスと対照的に、ポール達三人は完全に固まってしまっている。
(クラリスの気になってる奴って一体誰だよ!やっぱりアンソニーか?!それともエラリーか?!くそ、俺じゃないのかよ?!)
(まさか、クラリス嬢がそう答えるとは……やはりポールなのか……いや、命懸けでクラリス嬢を救ったエラリーか……万に一つでも、私ということはないだろうか……)
(そんな、クラリス嬢にそんな相手が……いや、ポールやアンソニーなら好きになっても仕方ないぐらいのいい男達だしな。でも、俺も少しは気にしてもらえてはいないだろうか……)
「ポールとエラリーはともかく、アンソニーまで考えていることが顔に出てるなんて、よっぽどショックだったんだねー」
呆然として言葉も出ない三人に、ジャンが容赦なく追い討ちをかける。
「ところで、ディミトリはどうして突然そんなことを言い出したの?こうなることはわかっていたでしょ?」
「もちろん、クラリス嬢に惹かれたからに決まっているだろう?」
ジャンとディミトリが似たような笑顔を浮かべながら言葉を交わす。
「ふーん。それで、クラリス嬢の返事を聞いて諦めるの?」
「そうだねえ。諦めるにはまだ早いかな」
「だって。ポールもアンソニーもエラリーも、ライバル増えちゃったね。どうする?」
ジャンが楽しそうに笑った。
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