【完結】転生ヒロインと転生(?)悪役令嬢は逆ハーエンドを回避したい! 〜R18禁エンドはごめんです!〜

koromachi

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諦められない

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「あ、兄上?!」

「やあ、エラリー。見舞いに来るのが遅くなってすまないね。今日やっと謹慎が解けたんだ」

 エラリーが療養している客室にやってきたのはセベールだった。

 王から赦しを得た直後、その足でエラリーの元を訪ねたのだった。

「兄上、その顔はいったい……」

 いつもの麗しい美貌はどこへやら、両頬がリスの様にパンパンに腫れ、まるで別人のようになったセベールを見て、エラリーは言葉を失った。

「ああ、これは、エラリーの愛しのクラリス嬢にやられたんだよ」

 セベールが楽しそうに言う。

「クラリス嬢に?!いったいどういうことだ?!」

 セベールがエラリーに先ほどの出来事を説明すると、エラリーはいよいよ開いた口が塞がらないようだった。

「嘘だろ……あのか弱いクラリス嬢が、自らの手で兄上を張り倒したのか……?!信じられない……」

「いやあ、驚くよね。私も何が起きてるのか、最初は全く理解できなかったんだけどね」

 どうやらにこにこと笑っているらしいセベールが言う。

「……それで、クラリス嬢はビンタ四発で兄上を許したのか」

「うん」

「なんて人だ……」

「あの子はいいね。ぜひ頑張ってエラリーのお嫁さんにするといいよ」

「っな!」

「この私を跪かせるだけの威厳もあるし、貴族としても十分やっていけるよ。エラリーが望むなら、しばらく伯爵家に閉じ込めておこうか?」

「~~!兄上!だから、そういう所ですよ!」

 真っ赤になったエラリーが、優しい声で物騒なことを言うセベールを嗜めた。



 コンコン。

「エラリー、俺だ、ポールだ。入るぜ」

 ノックの音と声が聞こえたかと思うと、ドアが開き、ポールが顔を出した。

「もう!ポールお兄ちゃんたら!返事があるまで待ってから扉を開けなきゃだめでしょ!」

 クラリスの可愛い声が聞こえ、ポールの後ろから、ウィル、アンソニーと一緒にクラリスが入ってくる。

「クラリス嬢!」


「……おい、エラリー、てめえ、クラリスの前に立ってる俺達は透明人間か」

 綺麗に無視されたポールがジト目でエラリーを睨む。

「やれやれ、トニーといい、ポールといい、全く君達はクラリス嬢しか目に入っていないんだね」

 ウィルが呆れたように言うと、先に客室にいたセベールに目を向けた。

「セベール殿もいらしていたんですね」

「ええ、クラリス嬢のおかげで謹慎が解けましたので」

「「え?!セベール殿?!」」

「セ、セベール様?!」

 両頬パンパンのセベールに、アンソニー、ポール、クラリスが驚きの声を上げた。


「あ、私のせいだった……す、すみません!思いっきり叩いてしまいました!」

 呆然としていたクラリスだったが、ハッとしたようにセベールに頭を下げた。

「ふふ。クラリス嬢、謝らないでください。私はあなたに感謝しているんですから。それより、あなたの手は大丈夫ですか?」

 セベールがクラリスに向かってにこやかに微笑みながら尋ねる。

 クラリスの右手はアンソニーによってグルグルに包帯が巻かれていた。

「あ、これは……大丈夫です!」

「クラリス嬢!その手は?!」

 エラリーがベッドから飛び出ると、クラリスの手を取った。

「こんな小さな手で……言ってくれれば、俺が代わりに何発でも殴ったのに……」

「エラリー、何発でもって、それはいくらなんでもひどくないかい?」

 エラリーの言葉に、セベールが苦笑する。

「エラリー様、起き上がって大丈夫なのですか?」

 クラリスがエラリーを気遣う。

「俺の傷なんてかすり傷だ」

「おい、エラリー、いつまでクラリスの手を握ってるんだよ」

 ポールが我慢できないといった様子で、クラリスの手を奪い取ると、エラリーとクラリスの間に割り込んだ。

「そういうポールだって、気安くクラリス嬢に触れないでいただきたい」

 アンソニーが言って、ポールとクラリスの間に入り込む。

「あ、アンソニー、てめ!」

「そう言うアンソニーこそ、近すぎだ!ポール、お前も無理矢理クラリス嬢の手を取るんじゃない!」

 アンソニー、ポール、エラリーの三人に囲まれ、クラリスは一気に顔に血が昇るのを感じた。
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