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作戦変更!
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「ど、どうしてお二人がここに?!」
昨日と同じように昼食を済ませて食堂を出たアリスとクラリスを待っていたのは、ウィルとアンソニーの二人だった。
「また邪魔されるおつもりなら、今度こそ公爵家から陛下に抗議いたしますわよ!」
アリスはクラリスを背に庇いながら、キッとウィルを睨みつける。
「違うよ、アリス。今日はただ送り迎えをさせて欲しいだけだ。王宮に着いたら、私とトニーは仕事に戻るから安心して。さあ、あまり騒ぐと店に迷惑だろ?」
「う……」
ウィルはキラキラ控えめに微笑みながら、アリスの手を取り、馬車に乗せた。
「さあ、クラリス嬢も」
「は、はい……」
クラリスもアンソニーに手を取られ、馬車に乗る。
馬車の中では当然のように、アリスの側にはウィルが、クラリスの側にはアンソニーが座る。
(あれ?いつもみたいに距離感がバグってない?)
アリスが内心不思議に思う。
「ん?アリス、どうかした?」
適切な距離を保って座ったウィルがアリスににっこり微笑みかける。
「い、いえ、何でもありませんわ!」
向かいに座るクラリスとアンソニーの間にもちゃんと適切な距離がおかれていて、アンソニーもいつもと比べると甘さ控えめだ。
「あの、アン、トニー様、昨日はお花をありがとうございました。わざわざお店にお越しくださったとか」
「あのぐらい当然ですよ。昨日はあなたにご迷惑をおかけしてしまったのですから」
アンソニーがいつもより甘さを半分にした笑顔で微笑む。
「あ。ウィル様、私もお花をいただきましたわ。ありがとうございました。公爵家までご自身でいらしたと聞きましたわ」
「ああ、王宮の庭園から選んだんだが、気に入ってもらえたかな」
アリスも思い出したようにウィルにお礼を言うと、ウィルはキラキラ控えめに微笑んだ。
王宮に着くと、ウィルはアリスを研究室に、アンソニーはクラリスを図書室に、それぞれエスコートすると、本当に仕事に戻って行った。
今日は研究室も図書室も貸切にはなっておらず、昨日とのあまりの違いにアリスもクラリスも首を傾げたが、すぐに、実験と読書に集中し出した。
「ミミ、影達からの報告は?」
王太子の執務室でウィルと二人、書類を片付けながらアンソニーは傍らに控えるミミに尋ねた。
「今のところクラリス様に接触しようとする人間はおりません。アリス様は他の研究員の方達と一緒に実験をされていらっしゃいますが、過剰な接触をする者はおりません」
「よし。引き続き護衛と警戒を頼む」
「はっ」
========================
カフェでの盗み聞きの後、アンソニーとウィルは作戦を変更することにした。
「これまで我々は押しすぎだったんです!これからは引き気味にして、あちらから来るのを待ちましょう!」
「いや、それは私には関係ない……」
「いいえ、あります!ウィル様はアリス嬢が嫌がっていないのをいいことに、更に関係を深めようとなさりたいのでしょうが、昨日のようなことになれば、確実にオストロー公爵家が出てきますよ!」
「む……」
アンソニーの言葉に、ウィルはオストロー公爵とその三兄弟のことを思い出した。娘と妹を溺愛するオストロー公爵家の男性陣を敵に回したくはない。
「……わかった。それでどうするんだ?」
ウィルが渋々頷いた。
「我々がぴったり張り付く代わりに、クラリス嬢とアリス嬢のお二人には公爵家の影を付けます。ミミをまとめ役にして、お二人の状況を逐一報告させましょう」
「私はアリスと一緒にいてはいけないのか?」
「駄目です!距離を置く必要がありますから。顔を合わせるのは王宮への送り迎えの時のみです。馬車の中でも密着は禁止です」
「……何の拷問だ、それは。あんなに魅力的なアリスが隣にいたら触れたくなって当然だろう?!」
「私だってクラリス嬢に触れたいに決まって……!コ、コホン。ですが、駄目です!あくまで紳士的に振る舞うのです!」
「研究室と図書室の貸切はどうする?二週間立ち入り禁止にしたが」
「それももちろん解除です。お二人には我々が反省しているところを見せなければいけませんから」
「だが、研究員には男が多いのだぞ!アリスが私以外の男と触れ合うなんて許せるわけがないだろう!」
「では、この休暇の間は、研究室は女性のみ入室可能としますか?もっとも、アリス様にはすぐに誰の仕業かわかってしまいそうですが」
「ぐっ……アリスに知られたら、また怒られそうだな……」
「間違いなく」
「……やむを得ん。立ち入り禁止は全面解除だ」
「賢明なご判断です」
二人の作戦会議は日付が変わるまで続いた。
昨日と同じように昼食を済ませて食堂を出たアリスとクラリスを待っていたのは、ウィルとアンソニーの二人だった。
「また邪魔されるおつもりなら、今度こそ公爵家から陛下に抗議いたしますわよ!」
アリスはクラリスを背に庇いながら、キッとウィルを睨みつける。
「違うよ、アリス。今日はただ送り迎えをさせて欲しいだけだ。王宮に着いたら、私とトニーは仕事に戻るから安心して。さあ、あまり騒ぐと店に迷惑だろ?」
「う……」
ウィルはキラキラ控えめに微笑みながら、アリスの手を取り、馬車に乗せた。
「さあ、クラリス嬢も」
「は、はい……」
クラリスもアンソニーに手を取られ、馬車に乗る。
馬車の中では当然のように、アリスの側にはウィルが、クラリスの側にはアンソニーが座る。
(あれ?いつもみたいに距離感がバグってない?)
アリスが内心不思議に思う。
「ん?アリス、どうかした?」
適切な距離を保って座ったウィルがアリスににっこり微笑みかける。
「い、いえ、何でもありませんわ!」
向かいに座るクラリスとアンソニーの間にもちゃんと適切な距離がおかれていて、アンソニーもいつもと比べると甘さ控えめだ。
「あの、アン、トニー様、昨日はお花をありがとうございました。わざわざお店にお越しくださったとか」
「あのぐらい当然ですよ。昨日はあなたにご迷惑をおかけしてしまったのですから」
アンソニーがいつもより甘さを半分にした笑顔で微笑む。
「あ。ウィル様、私もお花をいただきましたわ。ありがとうございました。公爵家までご自身でいらしたと聞きましたわ」
「ああ、王宮の庭園から選んだんだが、気に入ってもらえたかな」
アリスも思い出したようにウィルにお礼を言うと、ウィルはキラキラ控えめに微笑んだ。
王宮に着くと、ウィルはアリスを研究室に、アンソニーはクラリスを図書室に、それぞれエスコートすると、本当に仕事に戻って行った。
今日は研究室も図書室も貸切にはなっておらず、昨日とのあまりの違いにアリスもクラリスも首を傾げたが、すぐに、実験と読書に集中し出した。
「ミミ、影達からの報告は?」
王太子の執務室でウィルと二人、書類を片付けながらアンソニーは傍らに控えるミミに尋ねた。
「今のところクラリス様に接触しようとする人間はおりません。アリス様は他の研究員の方達と一緒に実験をされていらっしゃいますが、過剰な接触をする者はおりません」
「よし。引き続き護衛と警戒を頼む」
「はっ」
========================
カフェでの盗み聞きの後、アンソニーとウィルは作戦を変更することにした。
「これまで我々は押しすぎだったんです!これからは引き気味にして、あちらから来るのを待ちましょう!」
「いや、それは私には関係ない……」
「いいえ、あります!ウィル様はアリス嬢が嫌がっていないのをいいことに、更に関係を深めようとなさりたいのでしょうが、昨日のようなことになれば、確実にオストロー公爵家が出てきますよ!」
「む……」
アンソニーの言葉に、ウィルはオストロー公爵とその三兄弟のことを思い出した。娘と妹を溺愛するオストロー公爵家の男性陣を敵に回したくはない。
「……わかった。それでどうするんだ?」
ウィルが渋々頷いた。
「我々がぴったり張り付く代わりに、クラリス嬢とアリス嬢のお二人には公爵家の影を付けます。ミミをまとめ役にして、お二人の状況を逐一報告させましょう」
「私はアリスと一緒にいてはいけないのか?」
「駄目です!距離を置く必要がありますから。顔を合わせるのは王宮への送り迎えの時のみです。馬車の中でも密着は禁止です」
「……何の拷問だ、それは。あんなに魅力的なアリスが隣にいたら触れたくなって当然だろう?!」
「私だってクラリス嬢に触れたいに決まって……!コ、コホン。ですが、駄目です!あくまで紳士的に振る舞うのです!」
「研究室と図書室の貸切はどうする?二週間立ち入り禁止にしたが」
「それももちろん解除です。お二人には我々が反省しているところを見せなければいけませんから」
「だが、研究員には男が多いのだぞ!アリスが私以外の男と触れ合うなんて許せるわけがないだろう!」
「では、この休暇の間は、研究室は女性のみ入室可能としますか?もっとも、アリス様にはすぐに誰の仕業かわかってしまいそうですが」
「ぐっ……アリスに知られたら、また怒られそうだな……」
「間違いなく」
「……やむを得ん。立ち入り禁止は全面解除だ」
「賢明なご判断です」
二人の作戦会議は日付が変わるまで続いた。
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