【完結】転生ヒロインと転生(?)悪役令嬢は逆ハーエンドを回避したい! 〜R18禁エンドはごめんです!〜

koromachi

文字の大きさ
139 / 139

永遠の誓い

しおりを挟む
「あーあ、行っちゃった。エラリーもポールもいなくなっちゃって、寂しくなるなあ」

 ポールとディミトリを乗せた馬車を見送って、ジャンが伸びをしながら言う。

「さて。ウィルとアリスは僕達の馬車に乗るでしょ?」

「ああ、頼む。……トニー、王宮の馬車を使っていいぞ」

 ポール達の去って行った方角を見つめたまま動けないアンソニーにウィルが声をかけた。

「え?あ?はい?それはいったい……?」

 珍しく動揺を隠せないアンソニーはまだ混乱している。

「アンソニー様、しっかりしてくださいませ!大事な大事な推し……お、お友達をお任せするのですから!」

 ウィルの腕から逃げられないままのアリスがアンソニーを叱咤する。

「さあ、クラリス様、アンソニー様とお話されることがおありでしょう?」

 ジャンの腕からいつの間に逃れたのか、イメルダが優しくクラリスの手を取り、アンソニーの側へと導いた。


「あ、あ、あの、アンソニー様……私……」

「クラリス嬢……」


「コホン。あー、ご両親、フレデリック殿、アンソニーとクラリス嬢が二人で出かけることをお許しいただけるだろうか」

 見つめあったまま動けない二人の代わりに、ウィルがクラリスの家族に許可を取った。

「はい、もちろんです!」

「……ま、まあ、アンソニー様となら……」

「……いいでしょう……クラリス、あまり遅くならないように帰ってくるんだぞ!」

 クラリスの母のエリーは満面の笑みで、父のオーリーは渋々ながら、フレデリックは苦虫を噛み潰したような顔で、同意した。

「あ、ありがとうございます!で、では、クラリス嬢、馬車にどうぞ」

 ようやく状況を把握したアンソニーが、フレデリック達にお礼を言い、クラリスに向かって右手を差し出した。

「は、はい!」

 馬車に乗り込む前に、クラリスは振り返って皆に頭を下げた。

「皆さま、ありがとうございます!」

「クラリスちゃ、さん!アンソニー様に何か嫌なことをされたらすぐにおっしゃってくださいね!オストロー公爵家が全力で抗議いたしますから!」

「……アリス嬢。ご安心ください、私はそこのやらかし王太子とは違いますから」

 アリスの言葉に、通常運転に戻ったアンソニーがにっこり微笑むと、何か言いたそうに口をパクパクさせているウィルとアリスを残して馬車の中に消えた。

 =======================

「モン・デテルナへ」

 アンソニーは御者に行先を告げ、少しだけ距離を開けてクラリスの隣に座った。しばらく互いに何も言えず、黙り込んだまま窓の外を眺める。

 市街地を抜け、緑が増えてきた所で、アンソニーがクラリスに声をかけた。

「……クラリス嬢、モン・デテルナを訪ねたことはありますか?」

「いいえ、まだ一度も。ルーマニ時代の遺跡が眠っていると言われている丘ですよね?」

「さすが、よくご存知ですね」

 クラリスの答えに、アンソニーがにっこりと微笑んだ。

「『永遠の都』と呼ばれた、ルーマニ時代の都市遺跡が埋もれていると言われていますが、規模が大き過ぎて、発掘は不可能とされています」

「もしかして、今向かっているのはそこですか?」

「ええ」

 アンソニーはクラリスと目を合わせて頷いた。

「モン・デテルナの言い伝えはご存知ですか?」

「言い伝え……」

「はい。その、モン・デテルナで、あ、愛を誓い合うと、その、こ、恋人達は永遠に離れることはないという……」

「……は、はい、聞いたことがあります……」

 二人とも真っ赤な顔で横を向きながら話す。

「その、これから私とそこに……」

 アンソニーの言葉の途中で馬車が止まった。

「……着きましたね……一緒に来てくださいますか?」

 先に立ち、馬車の扉を開けると、アンソニーはクラリスに手を差し出した。クラリスは真っ赤な顔のまま頷くと、その手にそっと自身の手を重ねる。

「少し歩きます。もし疲れたらご遠慮なくおっしゃってくださいね」

「はい。大丈夫です。体力には自信がありますから!」

 繋がれていない方の手で小さく握り拳を作ってみせるクラリスに、アンソニーは愛おしくて堪らないという笑顔で応えた。


 =====================


「うわあ!すごい!」

 樹々の間をしばらく歩くと、急に開けた場所に出た。目の前には青々とした草原が広がり、空はどこまでも高く澄み、気持ちのいい風が吹いている。

 王都を一望できるほど高い丘からの眺めに、クラリスは歓声を上げた。アンソニーと繋いでいた手を放し、草原に向かって駆け出す。

「あ、そんなに走ったら危ないですよ!」

 アンソニーが慌ててクラリスの後を追った。

「まったく……あなたという人はどんなにしっかり手を繋いでいても、すぐに離れて行ってしまうんですから」

 少しも息を切らすことなく、易々と追いついたアンソニーが、再びクラリスの手を取る。

「あ!すみません!こんなに素晴らしい景色を見たのは初めてだったので、つい興奮して……」

「ふふ。喜んでいただけたなら何よりです」

 二人は手を繋いだまま、眼下に広がる王都の情景を眺める。

「あれは王宮ですね!これだけ離れていてもすぐにわかりますね、やっぱりすごく大きいですね!」

「そうですね。あ、王宮から少し東に行ったあちら、あれが我がハートネット公爵家の王都の屋敷です。見えますか?」

「あの、緑がたくさんある所ですか?」

「そうです。亡くなった母の意向で、庭が小さな森みたいになっているんですよ」

「まあ……」

 王都のど真ん中にも関わらず広大な敷地を有するハートネット公爵家の力にクラリスは圧倒される。そんなクラリスに、アンソニーは真っ直ぐに向き合った。

「……クラリス嬢。私はいずれ公爵家を継がなければなりません。宰相の地位は、必ずしも継ぐとは限りませんが、ウィル様の側近という立場を捨てることはないでしょう。私の背負っているものは決して軽くはなく、私の伴侶となる方にも重責を負わせることは間違いありません」

「アンソニー様……」

「それでも、私はあなたに隣にいて欲しいと望んでしまう……あなたが苦労することがわかりきっているのに、です」

「……」

 アンソニーはクラリスの手を握ったまま跪いた。

「あなたには多くの苦労をかけてしまうと思います。ですが、それ以上の喜びを与えられるよう、この命をかけて、あなたを守ります。ですから……どうか、私と共に生きてはいただけませんか」

 右手でクラリスの手を取り、左手を自身の胸に当て、アンソニーは真剣な表情でクラリスを見上げた。

「……」

 クラリスはしばらく何も言えずにいたが、やがて意を決したようにアンソニーの手をギュッと握り返した。

「アンソ、……ト、トニー様。私は生まれも育ちも平民で、次期公爵様でいらっしゃるトニー様には相応しくないことはわかっています。でも、私も……それでも、トニー様と一緒にいたいんです!私を……私を……お側に置いていただけますか……?」

「!」

 クラリスの答えを聞いたアンソニーが勢いよく立ち上がり、繋いでいた手を引くと、クラリスを腕の中に閉じ込めた。

「クラリス嬢……!ありがとうございます!私を選んでくださったことを、絶対に後悔はさせないと誓います……!」

「ト、トニー様こそ、後で悔やんだりなさらないでくださいね?」

「そんなことはあり得ません!あなたが私のことを嫌いになったと言っても、もう放してあげることはできませんから。覚悟しておいてくださいね?」

 アンソニーは愛おしそうにクラリスを見つめ、その柔らかな頬にそっと手を当てる。

 クラリスは真っ赤になった顔を隠そうとして、下を向こうとするが、アンソニーの手が優しくそれを制した。

 アンソニーの顔がゆっくりと近づいてくる。クラリスは逃げずに瞳を閉じると、その唇を自身の唇で受け止めた。


 ~~~~~~~~~~~~  to be continued 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸
恋愛
 仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。  彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。  その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。  混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!    原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!  ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。  完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!

くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。 ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。 マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ! 悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。 少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!! ほんの少しシリアスもある!かもです。 気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。 月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参
恋愛
ブラック企業から辺境伯夫人アナスタシアとして転生した私は、愛する完璧な夫マクナル様と溺愛の新婚生活を送っていた。私は前世の「合理的常識」と「科学知識」を駆使し、元公爵令嬢ローナのあらゆる悪意を打ち破り、彼女を辺境の落ちぶれた貴族の元へ追放した。 第一の試練を乗り越えた辺境伯領は、私の導入した投資戦略とシンプルな経営手法により、瞬く間に王国一の経済力を確立する。この成功は、王都の中央貴族、特に王弟公爵とその腹心である奸猾な財務大臣の強烈な嫉妬と警戒を引き寄せる。彼らは、辺境伯領の富を「危険な独立勢力」と見なし、マクナル様を王都へ召喚し、アナスタシアを孤立させる第二の試練を仕掛けてきた。 夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。 第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。 最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

乙女ゲームに転生したので、推しの悲恋EDを回避します〜愛され令嬢は逆ハーはお断りです!

神城葵
恋愛
気づいたら、やり込んだ乙女ゲームのサブキャラに転生していました。 体調不良を治そうとしてくれた神様の手違いだそうです。迷惑です。 でも、スチル一枚のサブキャラのまま終わりたくないので、最萌えだった神竜王を攻略させていただきます。 ※ヒロインは親友に溺愛されます。GLではないですが、お嫌いな方はご注意下さい。 ※完結しました。ありがとうございました! ※改題しましたが、改稿はしていません。誤字は気づいたら直します。 表紙イラストはのの様に依頼しました。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

処理中です...