悪役令嬢になりました。

黒田悠月

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私がヒロイン!

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ふん、とカノンは鼻で笑ってツンと顎を上げた。

「……いいわ。貴女には特別に教えてあげる」

ほう。

ところで貴女は何故に今のこの状況でそんなに偉そうなんですかね?

自分の状況忘れてないか?

貴女、罪人として連行されている最中なのだけど。

一つ新しい出来事が増えれば前のことは忘れてしまう鳥頭なんですかね?

カノンの様子を見れば否定は仕切れない。
だって、どう見ても上から目線なんだもの。

頭、大丈夫ですか?

いまだになんとかなるという自信?
それだけカノンのヒロインとしての強運的なもの(世界の補正?)はこれまで強かったということだろうか。
どんな危機も結局はなんとかなっちゃうよ♪的な?

これまでのこの世界の状況からすればそこまででもなさそうなんだけどね。

だって罪人として捕まってるしね。

学内の校外授業でのこととはいえ、生徒たちはほとんどが貴族。平民の生徒でも家は裕福な商家だったり教会の関係者だったり。

万が一ここで無罪放免になったとしても、貴族社会ではもう生きていけないだろう。

ほんと、もはや人生詰んでるんですけど、ちゃんとわかってる?

皇太子に泣き付いてどうにかできる段階はとっくに越えちゃってるよ?

まあ、私は知らんけど。

「私はこの世界のヒロインなの!」
「はあ」

なんだか芝居がかった仕草で手振りを交えながら宣言するカノン。 

私は知ってましたけどね。

「この世界はね?何度も何度も同じ世界ーー物語を繰り返しているのよ。私がヒロイン、主役の物語を!それこそ何百回とね!」
「……へーっ」

いかん。

無茶苦茶気の抜けた声が出ちゃってるよ、我ながら。

でも、やっぱりそういうことか。

転生者、あるいは転移者ではなく記憶保持者。
カノンにはこれまで繰り返してきた前世の記憶があるというわけだ。

だろうとは思ってたけど。

私と同じゲームから知識を得ているにしてはゲームに出て来ない白王の存在を知っているのはおかしいからね。

そっかそっか♪
あースッキリした。

もう聞きたかったことは聞けたから、話は終わりでいいや。

あとどのくらいで10分経つかな?
カノンのクソの顔なんて見てたくないし、外の風景でも眺めときますか。


「いい?私が!私がヒロインなの!すべては私の思い通りになるの!ならないといけないのっ!あんたなんて、あんたなんて、ただの雑魚キャラなんだから!いつもいつも私の踏み台なんだから!……踏み台だったクセに、なんでっ!」

なんか言ってるけど無視でいっか。

行きの馬車と違って窓つきだから外の風景が見られるのはいいやね。

うあーっ。花粉が飛び交っておりますね。
朝出る前にアイリス様にいただいた丸薬を飲んで、鼻うがいもしっかりしてきたから(してるとこ想像は絶対!しないように!!)花粉症はちょっぴりムズムズする程度で治まっている。

さすがアイリス様印のお薬。
薬学の天才はダテじゃない。


「聞いてるの!」

聞いてませーん。

カノンが喚きすぎでゼエゼエ言い出した頃、馬車が停められて私と白王はもともと乗る予定だった方に乗り換えた。

カノンが乗せられた馬車よりも上質なものだ。

座席のクッションが柔らかくてお尻が楽。

カノンの方はカッチカチで辛くなって来てたんだよね。

カノンも時おり気になるのかムズムズ尻を動かしていた。

まだまだ先は長いよ。

頑張ってね♪ザマアミロ。


お尻痛くて大変な貴女にこの歌を送ろう。

『ド〇ドナドー〇ドーナ♪カノンを乗せて~♪ドナ〇ナドーナド〇ーナ♪』

このままどっかにドナド〇されてしまえ!







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