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ローウィル子爵領
その9
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朝のランニングを2周増やしてみた。
いや、夢見が悪かったんでね。
早く目が覚めたからちょっとだけ長く走ってみただけです。
ランニングにも慣れてきたな。
2周増やしても全然イケる。
今日からは7周にしていこうか。
朝の日課をこなして、食堂に向かう。
もちろん汗はしっかり拭き取って、服も着替えてある。
朝ごはんはすっきりして食べたいから、これも日課の一つだ。
「へえ、ホントに朝もちゃんと起きてるのね。前は昼過ぎまで出てこなかったのに」
テーブルにつくと、先に着いていたアンネローゼにそんなことを言われた。
昼過ぎまで寝ていたのは一年ほど前までだよ。
二人でパンとサラダ、スープの朝食を食べて一緒に部屋を出る。
いつもはともに朝食を取る母は名家の奥様方と食事会とやらで朝から出掛けている。
アンネローゼがおみやげに持参してくれたお菓子やお茶を持っていったみたいだ。
たぶん珍しい茶葉があったみたいだから自慢しに行ったんだろうな。
貰い物だけど。
「とってもいいものを頂いたの」
おほほ、と口に手をあてて笑う姿が目に見えるようだ。
隣を歩くアンネローゼは長い髪を頭のてっぺんで丸めて、服も動きやすいようにだろう、珍しくズボンを履いている。
足下は膝下まで隠れるブーツ。
「ホントに自分で乗るんだ?」
「もちろん!乗馬は貴族の嗜みの一つだもの。最近では女性も一人で乗るのが当たり前よ」
母が独身の頃は女性が馬に一人で乗るなんてはしたないってことだったらしいけどね。
姉が昔乗りたがってケンカになったというのを聞いたことがある。
今日はアンネローゼの願いで二人で馬で遠乗りをする。
遠乗りって言っても領の外までは出ないけど。
子供のころに馬車を出してもらってよく遊びに行った場所に向かう。
ローウェル領の南の端に花の栽培地があるのだ。
季節によって様々な花が栽培されていて、中でもアンネローゼがお気に入りだったのが少し離れた小高い丘の上から見下ろす光景。
ウチに来るたびに毎回通うのに付き合わされてた。
キレイなんだけど、同じ季節に何度も通うからさすがに飽きてくる。
アンネローゼが来なくなってからは通うこともなくなったから、久し振りだけど。
馬で毎日出掛けるようになっても、そういえばあそこには行っていない。
気づかなかった。
無意識に避けていたということか。
あそこは、あの花を栽培して生活を立てる小さな集落は、アンネローゼが過去の世界で命を落とした場所だ。
小高い丘の向こうには緑の生い茂る森が広がる。
集落の名前は『カルギ村』。
俺のダンジョンのと同じ名前の村だ。
あの日。
飛び出したアンネローゼを迎えの兵士でも、他の大人たちでもなく俺が見つけられたのはこの場所を知っていたから。
大人たちは子供の足では遠すぎるからと、除外していたようだったが。
案外子供っていうのは大人が思うよりもずっと歩く。
それこそ大人が当たり前に馬車や馬を使う距離でも。
まあ、ウチから村までは子供の足でも、半日と少しといったところ。
決して歩けない距離ではない、かな?
俺はもうごめんだけど。
外に出ると、もう家の前に3頭の馬と護衛の兵士が準備万端だった。
俺一人ならともかくアンネローゼも一緒だから、領内とはいえ護衛が付く。
伯爵領からアンネローゼの護衛として付き従っていたうちの一人だそう。
背が高く筋肉質な男で、何故かえらく上着の胸元が開いていてムキムキな胸筋が目に痛い。
冬なのに。
アンネローゼのお気に入りの護衛らしいが。
なんだろう。
嫌な予感がするぞ?
「あら、貴方が例のお坊ちゃまね。お嬢様からお噂はかねがね聞いてるわよん♪ヨハンです、今日はよろしくね」
胸筋をふるふるさせながら挨拶してくれた、が。
おい。
大事なお嬢様の護衛がコレでいいのか?
いや、夢見が悪かったんでね。
早く目が覚めたからちょっとだけ長く走ってみただけです。
ランニングにも慣れてきたな。
2周増やしても全然イケる。
今日からは7周にしていこうか。
朝の日課をこなして、食堂に向かう。
もちろん汗はしっかり拭き取って、服も着替えてある。
朝ごはんはすっきりして食べたいから、これも日課の一つだ。
「へえ、ホントに朝もちゃんと起きてるのね。前は昼過ぎまで出てこなかったのに」
テーブルにつくと、先に着いていたアンネローゼにそんなことを言われた。
昼過ぎまで寝ていたのは一年ほど前までだよ。
二人でパンとサラダ、スープの朝食を食べて一緒に部屋を出る。
いつもはともに朝食を取る母は名家の奥様方と食事会とやらで朝から出掛けている。
アンネローゼがおみやげに持参してくれたお菓子やお茶を持っていったみたいだ。
たぶん珍しい茶葉があったみたいだから自慢しに行ったんだろうな。
貰い物だけど。
「とってもいいものを頂いたの」
おほほ、と口に手をあてて笑う姿が目に見えるようだ。
隣を歩くアンネローゼは長い髪を頭のてっぺんで丸めて、服も動きやすいようにだろう、珍しくズボンを履いている。
足下は膝下まで隠れるブーツ。
「ホントに自分で乗るんだ?」
「もちろん!乗馬は貴族の嗜みの一つだもの。最近では女性も一人で乗るのが当たり前よ」
母が独身の頃は女性が馬に一人で乗るなんてはしたないってことだったらしいけどね。
姉が昔乗りたがってケンカになったというのを聞いたことがある。
今日はアンネローゼの願いで二人で馬で遠乗りをする。
遠乗りって言っても領の外までは出ないけど。
子供のころに馬車を出してもらってよく遊びに行った場所に向かう。
ローウェル領の南の端に花の栽培地があるのだ。
季節によって様々な花が栽培されていて、中でもアンネローゼがお気に入りだったのが少し離れた小高い丘の上から見下ろす光景。
ウチに来るたびに毎回通うのに付き合わされてた。
キレイなんだけど、同じ季節に何度も通うからさすがに飽きてくる。
アンネローゼが来なくなってからは通うこともなくなったから、久し振りだけど。
馬で毎日出掛けるようになっても、そういえばあそこには行っていない。
気づかなかった。
無意識に避けていたということか。
あそこは、あの花を栽培して生活を立てる小さな集落は、アンネローゼが過去の世界で命を落とした場所だ。
小高い丘の向こうには緑の生い茂る森が広がる。
集落の名前は『カルギ村』。
俺のダンジョンのと同じ名前の村だ。
あの日。
飛び出したアンネローゼを迎えの兵士でも、他の大人たちでもなく俺が見つけられたのはこの場所を知っていたから。
大人たちは子供の足では遠すぎるからと、除外していたようだったが。
案外子供っていうのは大人が思うよりもずっと歩く。
それこそ大人が当たり前に馬車や馬を使う距離でも。
まあ、ウチから村までは子供の足でも、半日と少しといったところ。
決して歩けない距離ではない、かな?
俺はもうごめんだけど。
外に出ると、もう家の前に3頭の馬と護衛の兵士が準備万端だった。
俺一人ならともかくアンネローゼも一緒だから、領内とはいえ護衛が付く。
伯爵領からアンネローゼの護衛として付き従っていたうちの一人だそう。
背が高く筋肉質な男で、何故かえらく上着の胸元が開いていてムキムキな胸筋が目に痛い。
冬なのに。
アンネローゼのお気に入りの護衛らしいが。
なんだろう。
嫌な予感がするぞ?
「あら、貴方が例のお坊ちゃまね。お嬢様からお噂はかねがね聞いてるわよん♪ヨハンです、今日はよろしくね」
胸筋をふるふるさせながら挨拶してくれた、が。
おい。
大事なお嬢様の護衛がコレでいいのか?
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