18 / 32
王立学校魔法科
その1
しおりを挟む
寮の部屋が一人部屋で良かった。
クローゼットから出て来ながら、俺はそう思った。
部屋はベットと机とクローゼットが備え付けの六畳ほどの寝室と、小さなテーブルセットとソファ、棚が置かれた八畳ほどの部屋の二つ。
トイレはあるけど風呂はない。
寮の一階が食堂と共同風呂、リザクゼーションルームになっているらしい。
寮全体としては三階建ての建物の一階が共用部分、二、三階が個室。
食費は学費とともに振り込まれているので朝夕無料で食べられる。たたしデザートや一品付け足す場合は別料金でその場で払わなくてはならない。
入寮時に寮母さんに聞いたところによると、寮生は13人。
三階が二回生で二階に俺を含む一回生が入っているらしい。
魔法科の一回生がちょうど50人。
うち15人は女子で別の女子寮に入っているか、その他の男子生徒と同じく地元の人間か、冒険者で別に部屋を借りているか。
寮はそれなりに設備も食事も充実している分、平民には高いというのが寮生が少ない原因だそうだ。
おかげで一人部屋だし、人向き合いも少なくてすむから俺としては願ったりだけどね。
荷物でいっぱいの部屋で寝たくなかったので、自宅からの荷物は全てリビング(?かな一応)に置いてある。
そのせいでリビングの床は足の踏み場もない惨状だ。
ちなみにリビングに置かれているテーブルセットとソファも自宅から先に送ったものである。母上さまが。
レティにはいるものだけ出せるように、とか言ったけど、これだと何がどこにあるかもわからないな。
最低制服だけは今日じゅうに探し出さなければ。
明日着てかないとだからね。
「よいしょっと」
とりあえず金物や食器の入っているらしい木箱の類いは壁際に避けて重ねて。
制服が入っていそうな箱や袋を片っ端から開けていく。
あ、これは茶話会用のスーツか。
アンネローゼをエスコートする予定の茶話会用のだろうスーツ一式が出て来た。
ハンガーに掛けられた状態で折り畳まれているので、ひとまず重ねた木箱の上に広げておく。
あれ?
またスーツ?
いや、一着あれば充分だよね?
計三着のスーツが出て来た。
いったいどんだけスーツ着させる気だ!
そもそも息子が成長期だとわかってないのか?
多分来年にはキツくなる予定だ。
まあ救いはスーツ代の出どころが領の税金ではなく母の個人資産からということ。
嫁にくる時に実家からそれなりの額や貴重品を持参してきたはずだからね。
ようやく制服を探し出した頃には周りは服やら靴やら鞄やらで溢れていた。
致し方なくそれらを寝室のクローゼットに片付けていく。
ふう。けど、だいぶ片付いたかな?
ちょっと休憩したい。
レティのところへ行ってコーヒーでも淹れてもらうか。
□□□□□□□
「オマエの陰謀か」
俺はクローゼットからレティの庭に入るなりそう彼女を問いただした。
「はい?何ですか?」
「あのお隣さんだよ!」
「お隣さんというとあのノエルさんという人ですか?」
「そう!あの俺の古傷を抉り捲るお坊っちゃん!」
俺の魂の叫びにレティは軽く眉をしかめて、
「失礼ですよ。それに少し以前のアイクさんに似てなくはないですけど……まあ体格とかは。でもノエルさんの方がずっと礼儀正しい感じですし、性格も良さそうです」
それはなにか?
俺の性格が悪いとでも?
まあ否定しないが。
「ああそうだな。俺より性格は良さそうかもな。俺は性格悪いから、誰かさんに賽銭とか金輪際出さないかもな」
「ふにゃっ!ままま待って下さい!約束が違いますよ!」
「性格悪いから約束とかちゃんと守れないんだよなあ」
「……うう。ヒドイです。やっぱりノエルさんとは全然違いますよ」
俺専属の女神がわかりやすく凹む。
しかしこいつはホント人のSッ気を刺激するな。
俺は別にその気が強いつもりはないんだけど。
さっきから話題に出ているノエルというのは俺の寮の部屋のお隣さん。
その名をノエル・グランド。
わざわざお隣だからと挨拶に来てくれたのだが、これがびっくりなことに過去の俺、しかも記憶を取り戻すこともダンジョンマスターになることもなく流されるまま生きたらこうなってるよなーって感じの俺だった。
いわく。
ポッチャリおデブ。
おどおどした言動。
特徴のないボンヤリとした顔。
いや、ボンヤリが唯一の特性か?
甘やかされて育ってきました感が半端ない雰囲気。
軽く挨拶を交わしただけだったけど、なんか精神的にガックリきた。
「後でリザクゼーションルームででもお話ししたいってさ」
「いいじゃないですか。お友だち第一号ですね!」
人の気も知らずに能天気に手を叩くアホ女神。
なにがお友だち第一号だ。
オマエは幼稚園児か。
こいつなら学校行くとかなったら本気で「友達100人できるかな♪」とか言ってそうだ。
「憂鬱だな」
ノエルには悪いが、あまり楽しくお話しできる気がしない。
「とりあえず気分転換でもしておいたらどうですか?」
そう言ってレティが出してきたのは読みかけのスラ〇だん〇。
珍しく気がきくな。
俺は出来立ての自宅に込もってそれを読むことにした。
クローゼットから出て来ながら、俺はそう思った。
部屋はベットと机とクローゼットが備え付けの六畳ほどの寝室と、小さなテーブルセットとソファ、棚が置かれた八畳ほどの部屋の二つ。
トイレはあるけど風呂はない。
寮の一階が食堂と共同風呂、リザクゼーションルームになっているらしい。
寮全体としては三階建ての建物の一階が共用部分、二、三階が個室。
食費は学費とともに振り込まれているので朝夕無料で食べられる。たたしデザートや一品付け足す場合は別料金でその場で払わなくてはならない。
入寮時に寮母さんに聞いたところによると、寮生は13人。
三階が二回生で二階に俺を含む一回生が入っているらしい。
魔法科の一回生がちょうど50人。
うち15人は女子で別の女子寮に入っているか、その他の男子生徒と同じく地元の人間か、冒険者で別に部屋を借りているか。
寮はそれなりに設備も食事も充実している分、平民には高いというのが寮生が少ない原因だそうだ。
おかげで一人部屋だし、人向き合いも少なくてすむから俺としては願ったりだけどね。
荷物でいっぱいの部屋で寝たくなかったので、自宅からの荷物は全てリビング(?かな一応)に置いてある。
そのせいでリビングの床は足の踏み場もない惨状だ。
ちなみにリビングに置かれているテーブルセットとソファも自宅から先に送ったものである。母上さまが。
レティにはいるものだけ出せるように、とか言ったけど、これだと何がどこにあるかもわからないな。
最低制服だけは今日じゅうに探し出さなければ。
明日着てかないとだからね。
「よいしょっと」
とりあえず金物や食器の入っているらしい木箱の類いは壁際に避けて重ねて。
制服が入っていそうな箱や袋を片っ端から開けていく。
あ、これは茶話会用のスーツか。
アンネローゼをエスコートする予定の茶話会用のだろうスーツ一式が出て来た。
ハンガーに掛けられた状態で折り畳まれているので、ひとまず重ねた木箱の上に広げておく。
あれ?
またスーツ?
いや、一着あれば充分だよね?
計三着のスーツが出て来た。
いったいどんだけスーツ着させる気だ!
そもそも息子が成長期だとわかってないのか?
多分来年にはキツくなる予定だ。
まあ救いはスーツ代の出どころが領の税金ではなく母の個人資産からということ。
嫁にくる時に実家からそれなりの額や貴重品を持参してきたはずだからね。
ようやく制服を探し出した頃には周りは服やら靴やら鞄やらで溢れていた。
致し方なくそれらを寝室のクローゼットに片付けていく。
ふう。けど、だいぶ片付いたかな?
ちょっと休憩したい。
レティのところへ行ってコーヒーでも淹れてもらうか。
□□□□□□□
「オマエの陰謀か」
俺はクローゼットからレティの庭に入るなりそう彼女を問いただした。
「はい?何ですか?」
「あのお隣さんだよ!」
「お隣さんというとあのノエルさんという人ですか?」
「そう!あの俺の古傷を抉り捲るお坊っちゃん!」
俺の魂の叫びにレティは軽く眉をしかめて、
「失礼ですよ。それに少し以前のアイクさんに似てなくはないですけど……まあ体格とかは。でもノエルさんの方がずっと礼儀正しい感じですし、性格も良さそうです」
それはなにか?
俺の性格が悪いとでも?
まあ否定しないが。
「ああそうだな。俺より性格は良さそうかもな。俺は性格悪いから、誰かさんに賽銭とか金輪際出さないかもな」
「ふにゃっ!ままま待って下さい!約束が違いますよ!」
「性格悪いから約束とかちゃんと守れないんだよなあ」
「……うう。ヒドイです。やっぱりノエルさんとは全然違いますよ」
俺専属の女神がわかりやすく凹む。
しかしこいつはホント人のSッ気を刺激するな。
俺は別にその気が強いつもりはないんだけど。
さっきから話題に出ているノエルというのは俺の寮の部屋のお隣さん。
その名をノエル・グランド。
わざわざお隣だからと挨拶に来てくれたのだが、これがびっくりなことに過去の俺、しかも記憶を取り戻すこともダンジョンマスターになることもなく流されるまま生きたらこうなってるよなーって感じの俺だった。
いわく。
ポッチャリおデブ。
おどおどした言動。
特徴のないボンヤリとした顔。
いや、ボンヤリが唯一の特性か?
甘やかされて育ってきました感が半端ない雰囲気。
軽く挨拶を交わしただけだったけど、なんか精神的にガックリきた。
「後でリザクゼーションルームででもお話ししたいってさ」
「いいじゃないですか。お友だち第一号ですね!」
人の気も知らずに能天気に手を叩くアホ女神。
なにがお友だち第一号だ。
オマエは幼稚園児か。
こいつなら学校行くとかなったら本気で「友達100人できるかな♪」とか言ってそうだ。
「憂鬱だな」
ノエルには悪いが、あまり楽しくお話しできる気がしない。
「とりあえず気分転換でもしておいたらどうですか?」
そう言ってレティが出してきたのは読みかけのスラ〇だん〇。
珍しく気がきくな。
俺は出来立ての自宅に込もってそれを読むことにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる