(元)引きこもりダンジョンマスターが異世界生活をやり直してみた件

黒田悠月

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王立学校魔法科

その8

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 アニシラは俺たち生徒を四つの組に分けた。
 俺の見たところ体力のないお坊っちゃん組。ここにはノエルも入っている。体力ソコソコ、腕力だけで剣を振り下ろしてるからすっごいムダに疲れてるよね、な組。ここにはオッサンが入っていた。
 それから素振り後も息切れ一つなしな俺を含むそれなりに体力は付いてる組。
 最後がおんなじように剣を振ってるはずなのに動きがなんか整ってる組。

 多分オッサンの組は冒険者が多いっぽい。
 我流と腕力でこれまでやってきたけどここにきて頭打ちになってきた人たち、かな。

 俺の入った組はそれなりに体力はあるけど、戦闘の基礎は付いてないただ剣を振ってるだけな人の組。

 動きが違う人たちの組は多分だけど兵士なんじゃないかな?ちゃんとそれなりの訓練を受けてきた人たちの組って感じだ。

 こうして見ると素振りだけでいろんな事がわかるもんなんだな。


 アニシラは俺たちを四つの組に分けると、それぞれに指示を振っていく。

 ノエルとオッサンの組はひたすらランニング。
 演習場の外周を授業時間ただ走る。
 途中歩いてもよし、ただし完全に立ち止まったらその場で腕立て伏せ50回。
 う~ん、ムリじゃね?
 ま、ムリな時のことも考えてあるんだろう。
 ちなみに補助職員が着いていくらしく、サボりやごまかしはできない。

 まずは体力作りからってことだね。
 オッサンの組はある程度の時点で違うカリキュラムに移るんだろうけど。
 ノエルの方は多分下手したら数ヶ月単位でランニングかも。
 がんばれー!

 体力あり、基礎もありな組は個別に技術指南。
 別の個室に移って行った。
 武器適正を確認するって言ってたね。

 結果俺の属する組だけが演習場に残った。
 アニシラもここに残っている。

「さて、この組は最低限の体力と身体能力はあるようだが戦闘に適したバランスが出来てるとは言えない。近接戦闘において大事なのは下半身の動きだ。だがお前たちはまだまだ上半身の力で剣を降り降ろしている。そこでしばらくは下半身強化を重点的に行う」

 そう言ってアニシラは俺たちを隅にある倉庫に誘導すると内からいくつかの器具を取り出させた。
 テレビでアスリートの人たちがこういうの使ってた気がする。
 スピードスケートだったか?

 一つはカタカナのコを上向きに置いて両端を少し開いた板。
 V字開脚の下部を平らにしたって感じ、の方がわかりやすいかな?え?それ俺だけ?

 あと30センチくらいの棒が二本。

 それとまんまバランスボールな皮のボール。

 それらを二人に一つずつ。

 俺の組はちょうど四人である。
 俺、刀の少女(可愛い女子と一緒で嬉しい)、二十代前半だろう金髪碧眼のイケメン(爆ぜろ!)、冒険者らしい三十代くらいの浅黒い肌の男性。

 アニシラは隣り合ってた二人をそれぞれペアにすると一人に砂時計を渡した。
 ラッキーなことに俺は刀少女だ。

「それは10分ですべて砂が落ちる。それぞれペアで交互に時間を計りながら動いてもらうからな。まず私が見本を見せる」

 言いながらアニシラは器具を二メートル間隔ほどで設置していく。
 棒二本は両足を開いたより少し長めの間隔で平行に。
 コの字板を真ん中に。
 バランスボールが最後だ。

「まず10分」

 トン、トンっと軽い足取りで棒を挟んで反復横飛び、その後板に移動してうん、これも反復横飛びだね、よりキツい。
 板の左右を交互に片足ずつ飛び移っていく。
 右の斜面を右足で踏み込んで左に移る。
 両足を揃えたらまた今度は左足で踏み込んで右に移る。
 その繰り返し。

「これも10分だ。次は喜べ休憩できるぞ」

 いや、ウソだよね?
 アニシラは最後にバランスボールにまたがって座る。
 座れるけど、確かに。
 でもぜったい足腰にくるよね、アレ。

「これも10分。これでワンセットだ。これを二人交互にニセットずつ行ってもらう」

「では始め」というアニシラの号令に俺たちはペア同士挨拶をかわす間もなく動き出した。

 俺から先に反復横飛びを始めた、んだけど。
 五分も過ぎると足にズン、とくるものがある。

 ランニングや普段のストレッチとはまだ違ったキツさだ。

「トロいと一からやり直しになるからな」

 俺たちの回りを歩きながら言うアニシラ。

「頑張って」

 横に立って声をかけてくれる刀少女。
 いいなあ。
 可愛い女子の応援。
 良かった。
 俺こっちのペアで。
 ザマあイケメン、羨ましかろう。

 俺は隣で同じく反復横飛びに勤しむイケメンにこっそりほくそ笑んだ。

 刀少女なんて呼び方はいつまでもしてられない。
 後で名前を教えてもらわないとね。
 ペアだし。
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