(元)引きこもりダンジョンマスターが異世界生活をやり直してみた件

黒田悠月

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王立学校魔法科

その7

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 んー、やっぱいい脚。

 整列した生徒たちの前に腰に手を当てて立ったアニシラの美脚に俺はこっそり舌鼓を打つ。
 マントの隙間からちらちらと覗く太ももが特にいい。

 視線を奪われているのは俺だけではなく、おそらくここにいる男子生徒全員だろう。

 と、思ったのだが。

 ーーオマエは聖人君子か。

 それとも実は女性に興味がないとか?
 まさか男がいいって性癖じゃないだろうな?

 だったら友達続けるのちょっと考えるんだけど?

 俺の隣に並ぶノエルだけは真面目くさった顔でしっかり顔を上げていた。

「さて、では始めるが。……まずは全員その場で素振りをしてもらおうか」

 舐めるように俺たち生徒をゆっくりと見て、アニシラが言うのに、俺は腰に指した練習用に刃を潰された剣を鞘から抜いた。
 剣は全員同じもの、同じ重さのものだ。
 演習場に入ってすぐ渡されたものである。

 体格や腕力が違う以上、個人にあった重さや長さのものを使う方がいい気はするんだけどね。
 俺はそんなことを思いつつも言われた通り素振りするべく上段に剣を構えたのだが……。
 同じようなことを思ったのは俺だけでないらしく。

「待ってくれ!俺の獲物は斧で剣じゃない」
「……私も普段は刀を使うので扱いがよくわからないのですが」

 ガッシリした体格のいかにも斧とかぶん回してそうなオッサンと小柄な少女がそれぞれ手を上げる。

 結構可愛いな。
 ちっちゃくて細みで、でも顔立ちは子供っぽくはない。
 十五、六といったところか。
 服が身体にフィットしているのもいい。
 しかし刀とは珍しい。

 この世界で近接の武器というと圧倒的に両刃の剣が多い。
 次に斧。
 馬に乗って戦うことの多い騎士だと槍。

 数年後に魔導技術を発展させたラスクルという国が銃剣というのを開発するが、それはまだ先の話だ。

「それで?何も技術を見たいわけではない。ただ手に持ったそれを上から下に降り下ろせばいい」

「やれ」というアニシラの号令に俺を含む生徒の大半が一斉に素振りを始める。
 刀の少女もまた戸惑いがちながらも周りに合わせて素振りを始めたが。

「俺は斧の技術を習いに来てるんだ!くだらん真似はそこらの貴族のボンボンにだけさせてさっさとこっちには実践的な授業をしろと言ってるんだ!」

 オッサンは苛立たしげに剣を床に投げると、アニシラに詰め寄っていった。

 ーーおいおいオッサンさすがに短気すぎねーか?

 冒険者らしいといえばらしいか。
 近年では貴族の三男坊とかも珍しくないが、もともとは冒険者ってのは荒くれ者や犯罪者の集まりだったからな。

 ギルドがしっかり取り締まるようになって、随分変わってきたらしいが、まだまだこんなのもいるってことだ。

「だいたいオマエさんみたいな小娘に戦闘の授業ができるのか?その格好だってどう見ても魔法主体の魔法師だろうが!俺は専門の講師が揃ってると聞いたから高い学費を払って来てるんだ!」

 う~ん。
 わからないでもない、か?
 一応は。

 現役冒険者であるオッサンとしては短期間でレベルを上げるために高い学費を払ったわけで。
 なのに、自分が使用しない武器の素振りとか時間の無断だと。

 とはいえ学校側だってんなことはわかってるだろうけどね。

「……私の授業が気に入らないのなら出ていって頂いて結構だが?そうしてまたダンジョンで力任せに斧を振り回しておけばいい。だが、それで頭打ちに陥ったからここに来たのだと思うが」

 あくまでも淡々とした物言いの言葉にオッサンは「……ぐっ」と喉を詰まらせる。

「それに私は一応Bランクの冒険者でね。近接戦闘なら武器はなんでも扱えるぞ?素手もな。なんなら試してもらってもいいが。それと私は前衛で物理戦闘メインだ。これはただの趣味」

 ぺろっとマントを捲る。

「どうする?時間がもったいないので出ていくのなら早くしてほしい」

 どうする?ってオッサンBランクって聞いてすっかり畏縮してますから。

「出ていかないのなら素振りだ。全員百回ずつ」 

 おずおずと剣を拾うオッサン。
 なんかちっちゃくなったな、おつ。

 心の中でオッサンの肩を叩き、俺は素振りを黙々と続ける。
 ところで数数えてなかったんだけど、こっから百回ってことでいいんだよね?
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