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婚約破棄ですか、喜んで。
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私、リディア・フランデルには前世の記憶がある。
とはいえそれはとても曖昧なもので、自分自身のこととなるとほとんどわからない。
自分の正確な名前も、父親と母親のことも。
名前はたぶん『りな』なのだろうとは思うのだけれど。それだって私の記憶の中にあるゲームで利用していた名前の多くが『リーナ』だからだ。
りな、だからリーナ。
そういうことなのかなって。
私の頭の中にある前世の記憶は、記憶というよりも知識に近いのだと思う。
自分の名前も、家族のことも、恋人がいたのかも、友達がいたのかも、何もわからない。
自分がいくつで、どこで、どうやって死んだのかもわからない。
今現在こうしてリディアとして生きている以上、きっと『りな』は死んだのだとは思うのだけれど。
そのくせ妙な記憶や知識だけはやたらと覚えているのだ。
前世の記憶にある記憶喪失の状態に似ているような気はする。もっとも実際の記憶喪失がどんなものなのか、そのような知識は前世にも持ち合わせてはいなかったようだが。
うん、少なくとも私、医者とか教授とか、そういう頭のいい職業ではなかったのだろう。
そんな私の想像からするに、だ。ドラマとか見る記憶喪失の人って、自分のことは覚えていないわりに、ちゃんとお箸は使えたり電車に乗れたりはするじゃない?
私の状態というのはそれに似ている気がする。
なかでも一番鮮明に、しっかりと思い出せる記憶がとある一つの『ゲーム』だ。
『ユグドラシルオンライン』
異世界を自由に過ごす、がコンセプトのVRMMORPGで、天上に赤と青の2つの月と一つの太陽、ユグドラシルと呼ばれる巨大な聖樹とその根に支えられた地が浮かぶファンタジーな世界。
細かいものまで含めると数千種類にもなるパーツを組み合わせて作るアバターに下級から最上級まで百を超える職業。
三つの大陸と十の小島からなる広大な世界にいくつもの国。それらの国に住む様々な種族の原住民。
プレイヤーは『来訪者』と呼ばれ、元々その土地にいる住民--NPCは『原住民』と呼ばれている。
プレイヤー『来訪者』は異世界を自由に過ごす、というコンセプトの通り、その世界を自由に過ごす。
異世界の定番、ダンジョンもあるから、冒険者としてダンジョンに挑んでもいい。ただ自分のレベルやステータスを上げることに夢中になってもいい。
様々な職業に転職して、ジョブを極めるのでも。アイテムや魔物の素材を収集して歩くのでもいい。
土地を買ってお店を開くのでもいい。
どこかの国の騎士になっても、街や村を買っても、プレイヤーの中には国を作ってしまった人だっている。
ただひたすらのんびりスローライフを楽しむのも、俺tueee~目指すのも自由。
そんなゲーム。
どうして私がそのゲーム『ユグドラシルオンライン』のことだけやたらとしっかり記憶しているのかというと--。
私、リディア・フランデルが今生きているこの世界こそが、その『ユグドラシルオンライン』の世界そのものだから。
私はどうやら前世で死んで、何故かゲームそのものの異世界に転生したらしい。
とはいえそれはとても曖昧なもので、自分自身のこととなるとほとんどわからない。
自分の正確な名前も、父親と母親のことも。
名前はたぶん『りな』なのだろうとは思うのだけれど。それだって私の記憶の中にあるゲームで利用していた名前の多くが『リーナ』だからだ。
りな、だからリーナ。
そういうことなのかなって。
私の頭の中にある前世の記憶は、記憶というよりも知識に近いのだと思う。
自分の名前も、家族のことも、恋人がいたのかも、友達がいたのかも、何もわからない。
自分がいくつで、どこで、どうやって死んだのかもわからない。
今現在こうしてリディアとして生きている以上、きっと『りな』は死んだのだとは思うのだけれど。
そのくせ妙な記憶や知識だけはやたらと覚えているのだ。
前世の記憶にある記憶喪失の状態に似ているような気はする。もっとも実際の記憶喪失がどんなものなのか、そのような知識は前世にも持ち合わせてはいなかったようだが。
うん、少なくとも私、医者とか教授とか、そういう頭のいい職業ではなかったのだろう。
そんな私の想像からするに、だ。ドラマとか見る記憶喪失の人って、自分のことは覚えていないわりに、ちゃんとお箸は使えたり電車に乗れたりはするじゃない?
私の状態というのはそれに似ている気がする。
なかでも一番鮮明に、しっかりと思い出せる記憶がとある一つの『ゲーム』だ。
『ユグドラシルオンライン』
異世界を自由に過ごす、がコンセプトのVRMMORPGで、天上に赤と青の2つの月と一つの太陽、ユグドラシルと呼ばれる巨大な聖樹とその根に支えられた地が浮かぶファンタジーな世界。
細かいものまで含めると数千種類にもなるパーツを組み合わせて作るアバターに下級から最上級まで百を超える職業。
三つの大陸と十の小島からなる広大な世界にいくつもの国。それらの国に住む様々な種族の原住民。
プレイヤーは『来訪者』と呼ばれ、元々その土地にいる住民--NPCは『原住民』と呼ばれている。
プレイヤー『来訪者』は異世界を自由に過ごす、というコンセプトの通り、その世界を自由に過ごす。
異世界の定番、ダンジョンもあるから、冒険者としてダンジョンに挑んでもいい。ただ自分のレベルやステータスを上げることに夢中になってもいい。
様々な職業に転職して、ジョブを極めるのでも。アイテムや魔物の素材を収集して歩くのでもいい。
土地を買ってお店を開くのでもいい。
どこかの国の騎士になっても、街や村を買っても、プレイヤーの中には国を作ってしまった人だっている。
ただひたすらのんびりスローライフを楽しむのも、俺tueee~目指すのも自由。
そんなゲーム。
どうして私がそのゲーム『ユグドラシルオンライン』のことだけやたらとしっかり記憶しているのかというと--。
私、リディア・フランデルが今生きているこの世界こそが、その『ユグドラシルオンライン』の世界そのものだから。
私はどうやら前世で死んで、何故かゲームそのものの異世界に転生したらしい。
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