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婚約破棄ですか、喜んで。
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『ユグドラシルオンライン』は当たり前だけれど『来訪者』が主役であり、私のような『原住民』ましてゲームのメインフィールドであるダンジョンや庶民の街や村と違いほぼ『原住民』だけで構成されている貴族社会というのは、ゲームではモブもモブな存在だ。
たまーにクエストやイベントで一部の人が関わるくらい。
そんなモブもモブな私たち。
そして『ユグドラシルオンライン』はVRMMORPGであり、どちらかというと冒険やまったり異世界ライフを楽しむ系統のゲームである。
乙女ゲームの類ではない。
そう、乙女ゲームでは決してないのだ。
なのに、いったい何故私の現状はまるっきり乙女ゲームのワンシーンなのだろう。
乙女ゲームでないのだから彼も彼女も私も攻略対象でもヒロインでも悪役令嬢でもないのだ。
目の前でいかにも自分こそがこの世界の主役と言わんばかりな顔をしている婚約者を見ていると「所詮あなたは貴族令息AとかBですからね?」と、突っ込みたい気分になる。
突っ込まないけれど。
それよりも今はヒロイン役を押し付けられている彼女を保護するのが先決だろう。
「さようですか。で?いったいどういったご用件なのでしょう」
私が言うと、カールは腰に手を当てて仁王立ちをした。それからビシッ!と片手をまっすぐに私に向けて上げる。
人差し指で私を指差して。
「リディア・フランデル!私、グローデル伯爵令息カール・グローデルはフランデル伯爵家令嬢リディア・フランデルとの婚約を今この時を持って破棄することを宣言する!」
唾飛んできてるんですけど。
と、いうか、ほんの数歩ほどの距離だからそんな大声出さなくても聞こえるよね?
わかるよね?そのくらい。
私はそっとハンカチで顔を拭うと、これ以上被害を受けないように傍らのサイドテーブルから扇を取り上げて顔の前で広げた。
「……で?」
「はあ?」
「いえ、それで私に何を言えと?」
いえ、本当はすぐに「はい、わかりました」と答えたいところなんですけどね?
だって好きでもない人との婚約だもの。
私の方こそ願い下げだ。
破棄してくれるのならもちろん喜んで受け入れたい。
「私たちの婚約や家同士で定められたこと。それを破棄したいと私に言われても困りますわ。まずあなたのお父様に言って下さい」
そう、まずはグローデル伯爵に言ってもらわないと。
それから私の家に伯爵家から話がくるのが筋というものでしょうに。
どうせ我が家に話がくる前に却下されて叱られるのがわかっているから、先に私から破棄を受け入れるという言質を取りたかったのでしょうけどね。
「……っっ!そういうところがイヤなんだっ!!」
「まあ」
「いつもいつも人を小馬鹿にした態度を取りやがって!この浮気女がっ!!」
カールの言に私のこめかみがピクリとする。
自分こそ婚約者の家に『運命の女性』(笑)を連れて来ているくせに、私の方が浮気女?
だいたい何を言われるのか、想定はしていたけれど。
実際に面と向かって言われるとやっぱり腹が立つものなのね。
すぅ、と頭の奥が冷えていく。
いいでしょう。
乙女ゲームのワンシーンを演じたいのなら付き合ってあげてもいいわ。
ただし、ざまぁされるのはあなたの方ですけどね。
たまーにクエストやイベントで一部の人が関わるくらい。
そんなモブもモブな私たち。
そして『ユグドラシルオンライン』はVRMMORPGであり、どちらかというと冒険やまったり異世界ライフを楽しむ系統のゲームである。
乙女ゲームの類ではない。
そう、乙女ゲームでは決してないのだ。
なのに、いったい何故私の現状はまるっきり乙女ゲームのワンシーンなのだろう。
乙女ゲームでないのだから彼も彼女も私も攻略対象でもヒロインでも悪役令嬢でもないのだ。
目の前でいかにも自分こそがこの世界の主役と言わんばかりな顔をしている婚約者を見ていると「所詮あなたは貴族令息AとかBですからね?」と、突っ込みたい気分になる。
突っ込まないけれど。
それよりも今はヒロイン役を押し付けられている彼女を保護するのが先決だろう。
「さようですか。で?いったいどういったご用件なのでしょう」
私が言うと、カールは腰に手を当てて仁王立ちをした。それからビシッ!と片手をまっすぐに私に向けて上げる。
人差し指で私を指差して。
「リディア・フランデル!私、グローデル伯爵令息カール・グローデルはフランデル伯爵家令嬢リディア・フランデルとの婚約を今この時を持って破棄することを宣言する!」
唾飛んできてるんですけど。
と、いうか、ほんの数歩ほどの距離だからそんな大声出さなくても聞こえるよね?
わかるよね?そのくらい。
私はそっとハンカチで顔を拭うと、これ以上被害を受けないように傍らのサイドテーブルから扇を取り上げて顔の前で広げた。
「……で?」
「はあ?」
「いえ、それで私に何を言えと?」
いえ、本当はすぐに「はい、わかりました」と答えたいところなんですけどね?
だって好きでもない人との婚約だもの。
私の方こそ願い下げだ。
破棄してくれるのならもちろん喜んで受け入れたい。
「私たちの婚約や家同士で定められたこと。それを破棄したいと私に言われても困りますわ。まずあなたのお父様に言って下さい」
そう、まずはグローデル伯爵に言ってもらわないと。
それから私の家に伯爵家から話がくるのが筋というものでしょうに。
どうせ我が家に話がくる前に却下されて叱られるのがわかっているから、先に私から破棄を受け入れるという言質を取りたかったのでしょうけどね。
「……っっ!そういうところがイヤなんだっ!!」
「まあ」
「いつもいつも人を小馬鹿にした態度を取りやがって!この浮気女がっ!!」
カールの言に私のこめかみがピクリとする。
自分こそ婚約者の家に『運命の女性』(笑)を連れて来ているくせに、私の方が浮気女?
だいたい何を言われるのか、想定はしていたけれど。
実際に面と向かって言われるとやっぱり腹が立つものなのね。
すぅ、と頭の奥が冷えていく。
いいでしょう。
乙女ゲームのワンシーンを演じたいのなら付き合ってあげてもいいわ。
ただし、ざまぁされるのはあなたの方ですけどね。
応援ありがとうございます!
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