16 / 87
16
しおりを挟む
(何これ?)
『うっま!超うめーよ!』
「凄く美味しいです!」
「本当に、表面はパリパリサクサクで中の肉は柔らかい。初めて食べましたよ、こんなの。見たこともないし」
「ママこれおいしーい♪」
「むはっ!はむはむ・・・」
「うむ、さすがはドズ。これは美味いな」
「うめー!さすがはドズの旦那!」
全員一致で大絶賛だった。
ドズさんが夕食に作っていたのは日本人にはお馴染み、この世界の人間には馴染みのないトンカツ。
ちゃんと見た目も味も、佑樹の記憶の中で味わったトンカツそのものである。
「しかしいいんですか?私たちにまでこんな高そうなもの」
親子連れの父親が言うのにカティも内心で同意する。
口はものを言うよりトンカツを咀嚼するのに忙しい。
「いや、珍しい料理ではあるんだが、実は金はそれほどかからないんだ。安いオーク肉に、固くなったパンを衣にして揚げてるだけだからな。油も使い古しのものだし、また何度も使えるんでね。本当ならサルエル地方の一部で栽培されている米ってのを合わせるのが一番美味いんだが、持ち合わせがなくて悪い」
「米、ですか?聞いたことがないですね」
「ああ、この辺りではほとんど見ないが、パンの代わりに食べる。なんにでも合うぞ」
『だよねーだよねー!あー米が欲しい!』
「ドズさんは冒険者なのに料理が上手ですし、詳しいのですね」
父親が感心するのにドズさんが「あー、まーなー」とちょっと照れた様子で頭を掻く。
「俺は元料理人なんだよ」
「ドズの旦那は料理好きが高じて、自分で食材を集める為に冒険者になったんだよ。しかも今じゃあグルメハンターにまで登り積めてる。凄い人なんだ」
「「「「グルメハンター?」」」」
親子+カティである。
言葉を挟んだ冒険者はドズさんをずいぶん尊敬しているらしく、鼻息も荒く説明してくれる。
「ああ、冒険者や商人でないとあまり知られていないか。冒険者の中でも何かを極めた一部の者だけにハンターって称号が付けられるんだ。クエストを極めたクエストハンター。ダンジョン攻略に特化したダンジョンハンター。食材や伝説の勇者ヤスタカ・サエキの遺産を探して世界を回るグルメハンターってな感じでな!最低でも冒険者ランクC以上でないとハンター試験さえ受けられない。狭き門さ」
「ヤスタカ・サエキって?」
カティが聞くとよくぞ聞いてくれたとばかりにテンションが上がる。
「ヤスタカ・サエキってのはずっと昔にこの世界に召喚された異世界の勇者だ。勇者ってのは普通戦力として喚ばれるんだがそいつはずいぶん変わり者だったらしくてな、まったく戦わないで召喚した国の金であらゆる食材を集めては数多くの料理を作り出した。米もサエキが作らせたって話だ。国としても最初は食べたことのない不思議な料理の数々に歓喜して、まあそれなりに儲けもしていたらしいんだが、どんどんエスカレートしていくうちに儲けよりも出ていく金の方が増えていく。そうなるとサエキを疎むようになるわけだ。これまでに作り出した料理や食材だけでも充分国は潤うわけだしな。で、サエキは暗殺されそうになるんだが、そこは腐っても勇者だ。サエキは襲ってきた暗殺者を返り討ちにして自分が作り出した料理や食材のレシピをすべて国から持ち出した。あとは世界を回りながら何を思ってかあちこちにそのレシピをばらまいたり隠したりした。中にはダンジョンの宝箱に入ってたって話もある」
「そのレシピのことをヤスタカ・サエキの遺産と言うんだが、ちなみに今食べている料理もその一つだ。たしか、トンカツとか言う」
続けられたドズさんの言葉にその場の皆が歓声を上げる。
伝説の勇者の遺産。
その価値は計り知れないだろう。
「そんなもの、頂いてよかったんですか?」
「なに、俺の主義でね。美味いものは一人で隠して食べるより皆が美味しく食べてくれる方がずっといい。まだ、3つしか手に入れてないんだが、その内それなりに増えたらペルージにでも店を構えてまた料理人に専念するつもりだ。まあ、味見させられてると思って食ってくれ」
「店が出来たらぜひ寄らせて頂きたいですね」
『うおー!サエキやるじゃねーか!奴こそ真の勇者だ!』
皆がドズさんの料理と言葉に感激しているのをよそに佑樹だけは別の方向に興奮している。
(佑樹が言ってた面白いものってドズさんの称号のことだったのか・・・)
『おうよ!いいなー、グルメハンター!よし!決めた!』
(・・・何を?)
何となく予想はつくけど。
いや、聞いてたよね?狭き門だって。
『グルメハンター!俺たちもなろうぜー!』
ぶほっとトンカツを吹き出しそうになったカティを「お兄ちゃんどうしたの?ダイジョウブー?」と隣に座っていた親子連れの子供が背をさすってくれた。
『うっま!超うめーよ!』
「凄く美味しいです!」
「本当に、表面はパリパリサクサクで中の肉は柔らかい。初めて食べましたよ、こんなの。見たこともないし」
「ママこれおいしーい♪」
「むはっ!はむはむ・・・」
「うむ、さすがはドズ。これは美味いな」
「うめー!さすがはドズの旦那!」
全員一致で大絶賛だった。
ドズさんが夕食に作っていたのは日本人にはお馴染み、この世界の人間には馴染みのないトンカツ。
ちゃんと見た目も味も、佑樹の記憶の中で味わったトンカツそのものである。
「しかしいいんですか?私たちにまでこんな高そうなもの」
親子連れの父親が言うのにカティも内心で同意する。
口はものを言うよりトンカツを咀嚼するのに忙しい。
「いや、珍しい料理ではあるんだが、実は金はそれほどかからないんだ。安いオーク肉に、固くなったパンを衣にして揚げてるだけだからな。油も使い古しのものだし、また何度も使えるんでね。本当ならサルエル地方の一部で栽培されている米ってのを合わせるのが一番美味いんだが、持ち合わせがなくて悪い」
「米、ですか?聞いたことがないですね」
「ああ、この辺りではほとんど見ないが、パンの代わりに食べる。なんにでも合うぞ」
『だよねーだよねー!あー米が欲しい!』
「ドズさんは冒険者なのに料理が上手ですし、詳しいのですね」
父親が感心するのにドズさんが「あー、まーなー」とちょっと照れた様子で頭を掻く。
「俺は元料理人なんだよ」
「ドズの旦那は料理好きが高じて、自分で食材を集める為に冒険者になったんだよ。しかも今じゃあグルメハンターにまで登り積めてる。凄い人なんだ」
「「「「グルメハンター?」」」」
親子+カティである。
言葉を挟んだ冒険者はドズさんをずいぶん尊敬しているらしく、鼻息も荒く説明してくれる。
「ああ、冒険者や商人でないとあまり知られていないか。冒険者の中でも何かを極めた一部の者だけにハンターって称号が付けられるんだ。クエストを極めたクエストハンター。ダンジョン攻略に特化したダンジョンハンター。食材や伝説の勇者ヤスタカ・サエキの遺産を探して世界を回るグルメハンターってな感じでな!最低でも冒険者ランクC以上でないとハンター試験さえ受けられない。狭き門さ」
「ヤスタカ・サエキって?」
カティが聞くとよくぞ聞いてくれたとばかりにテンションが上がる。
「ヤスタカ・サエキってのはずっと昔にこの世界に召喚された異世界の勇者だ。勇者ってのは普通戦力として喚ばれるんだがそいつはずいぶん変わり者だったらしくてな、まったく戦わないで召喚した国の金であらゆる食材を集めては数多くの料理を作り出した。米もサエキが作らせたって話だ。国としても最初は食べたことのない不思議な料理の数々に歓喜して、まあそれなりに儲けもしていたらしいんだが、どんどんエスカレートしていくうちに儲けよりも出ていく金の方が増えていく。そうなるとサエキを疎むようになるわけだ。これまでに作り出した料理や食材だけでも充分国は潤うわけだしな。で、サエキは暗殺されそうになるんだが、そこは腐っても勇者だ。サエキは襲ってきた暗殺者を返り討ちにして自分が作り出した料理や食材のレシピをすべて国から持ち出した。あとは世界を回りながら何を思ってかあちこちにそのレシピをばらまいたり隠したりした。中にはダンジョンの宝箱に入ってたって話もある」
「そのレシピのことをヤスタカ・サエキの遺産と言うんだが、ちなみに今食べている料理もその一つだ。たしか、トンカツとか言う」
続けられたドズさんの言葉にその場の皆が歓声を上げる。
伝説の勇者の遺産。
その価値は計り知れないだろう。
「そんなもの、頂いてよかったんですか?」
「なに、俺の主義でね。美味いものは一人で隠して食べるより皆が美味しく食べてくれる方がずっといい。まだ、3つしか手に入れてないんだが、その内それなりに増えたらペルージにでも店を構えてまた料理人に専念するつもりだ。まあ、味見させられてると思って食ってくれ」
「店が出来たらぜひ寄らせて頂きたいですね」
『うおー!サエキやるじゃねーか!奴こそ真の勇者だ!』
皆がドズさんの料理と言葉に感激しているのをよそに佑樹だけは別の方向に興奮している。
(佑樹が言ってた面白いものってドズさんの称号のことだったのか・・・)
『おうよ!いいなー、グルメハンター!よし!決めた!』
(・・・何を?)
何となく予想はつくけど。
いや、聞いてたよね?狭き門だって。
『グルメハンター!俺たちもなろうぜー!』
ぶほっとトンカツを吹き出しそうになったカティを「お兄ちゃんどうしたの?ダイジョウブー?」と隣に座っていた親子連れの子供が背をさすってくれた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる