巻き込まれた村人はガチャで無双する?

黒田悠月

文字の大きさ
74 / 87

74

しおりを挟む
 ウルマの狭い街並みを抜けた一番奥。
 次の町へと繋がる外壁の門のすぐ側にその建物はあった。
 入り口であった門より歩いて小一時間。 
 明らかに周りの建物よりもデカい、というか長く、見るからに豪華な建物である。
 長さは他の建物の3建分、もしくは4建分ほど。
 花や蝶のレリーフが施された門柱の脇には今度のオークションの職員らしき揃いのスーツに身を包んだ男たち。
 幾人もの正装した客らしき男女に何やら羊皮紙を手渡しては頭を下げている。

「・・・なんか、やっぱり場違いじゃないかな」

 建物だけでなく通りまで明るく照らす魔石を使用した外灯に影を落とすのは皆いかにも金持ちらしき者ばかり。
 少し前まで田舎の村人であったカティにはあまりにも縁遠い場所に思える。

「なによ?この私があそこに相応しくないと言うわけ?」

 不服そうな顔で腰に手をあてて見上げてくるリリスの格好はいつものヒラヒラゴスロリ風ファッションではなく地球で言うlラインのイブニングドレス。
 踝まで届くラベンダー色のドレスは装飾は少なく首筋を覆う部分とすそ周りにだけ繊細なレースと小さな宝石がちりばめられている。
 腰にあてられた両手には二の腕まで隠す黒いレースの手袋。
 プラチナブロンドの髪はうなじに一部を下ろし、残りは複雑な形に編み込まれて結い上げられていた。

 正直いつものヒラヒラよりもずっと似合っている。背中の大きく開いたドレスのデザインといい女性らしい、というかぶっちゃけ色気があってドキドキしてしまう。

 リリスってこんなに美人だったっけ?

 と、いうのが正直なところ。

 いや、もともとそれなり以上に美少女ではあったのだが、普段はヒラヒラファッションや気の強さに押されて気づかなかったということか。

『女はやっぱ服と化粧で変わるよなー』

 頭のなかの佑樹の言葉にコクコクとやはり頭のなかで頷く。
 目元にうっすらと引かれたアイラインのせいか、いつもより落ち着いた色味の唇のせいか。

 今夜のリリスは大人っぽく、18、9くらいに見える。

「ああいやその・・・リリスじゃなくて俺が・・・・・・ええと、リリスは良く似合ってるよ」

 慌てて口走ってから、ナニを恥ずかしいことをー!と頭を抱えたくなった。

「あら、ありがと。ま、当然なんだけどね。あなたもちゃんと背筋を伸ばしてればとこぞのボンボンに見えなくもないわよ」

 だから意識し過ぎずしゃんとしてなさい。

 言われてカティはリリスとは違い明らかに似合っていない、己れの格好を見下ろした。

 黒のタキシードに似た正装に蝶ネクタイ。

 完全に着られた感満載だ。
 まるで七五三。

 いや、それじゃ七五三の子供たちに失礼だ。

「まったくごちゃごちゃ考えてないで早く行くわよ!」

 がし、と腕を掴まれて心臓が跳ねる。
 そのまま腕に回されたリリスの手の感触にドキドキしてしまう。

(なんかヤバイ。なんか良くわかんないけどヤバイ)
『・・・んー?まあ、いいんじゃね?別に』

 笑い含みの佑樹の声を聞きながらカティはリリスと共に建物に近づいて行く。

 月に一度、ウルマの町で開かれる貴族と金持ち商人の道楽ーオークションの会場に。


 何故こんな場所にドレスアップして訪れたか。
 その訳は二日前、レアガチャで引いた『呪いのティアラ』をギルド公認の道具屋に持ち込んだことがきっかけである。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...