洗脳されていたことに気づいたので逃げ出してスローライフすることにします。ー元魔王四天王の村娘ライフー

黒田悠月

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逃亡することにした。

その1

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それはいつも通りのありふれた朝。

テーブルの上に並べられた朝食を前に私は両手の指を胸の前で合わせ、いつも通り魔王様への感謝の祈りを捧げていた時のこと。

何気なく口にしたいつも通りの祈りの言葉。

「今日も朝の糧を得られることに感謝します。全ては魔王様のおかげ。賢く麗しく慈悲深い我が主に心よりの忠誠と感謝を……」

捧げます。と続けるところでふと、気づいたのだ。

あれ?私、コレめっちゃ洗脳されてね?

--と。



私、ユナ・フリーディアは魔王国魔王軍魔王四天王の一人だ。

父親は元魔王軍四天王の一人だったけれど私が母親のお腹にいる間に人間の国との戦争で亡くなっている。
母親は存命しているが今どこで何をしているのかは知らない。

そもそも魔族関の婚姻や親子関係というのが人間社会のものとは根本的で違っているからだ。

恋愛結婚は一切なし。
相手は全て魔王様の一存で決められる。

血筋とか、魔力量とか質やらで決められているのだと思う。かくゆう私にも5歳の時に決められた婚約者がいるが、相手の顔は知らない。
確か父親の元部下とやらで、婚約が決まってから今もずっと北の森近くの駐屯地にいるらしい。
そこは人間の国との国境沿いで、父親が亡くなった場所だ。そこで私の父親が亡くなってからずっと後を次いで軍の指揮を執っているはず。

年は私と15違いだったかな?

ちなみに私は今年で18になる。

相手は33ということである。

顔も見たことのない15才年上の人。
当然性格も知らないし、手紙やらで交流もしたことがない。

それでもあと二年、20になったら婚姻を結んで子供を生む。もし婚姻をして一年経っても子供ができなければ離婚してまた別にあてがわれた相手と結婚して子供を生む。

魔族にとって婚姻というのは子供をつくる相手をあてがわれるということなのだ。

生まれた子供は育舎に集められて魔力の低い女たちに教育されて育つから、両親とは関わらない。
顔も名前も知らないなんてのは珍しくもなんともない。


それが当たり前で、魔族に生まれた義務だと思っていた。


私は生まれつき魔力量がとても多かった。

そのため将来有望な子供だけが入ることのできる大学にも通っていたし、卒業したあとは軍の研究室でガツガツ働いた。
『移動』の魔法陣も遠距離移動が可能なように改良したし、『通話』の魔法具だってより誤差のないスムーズな雑音の混じらない会話を可能にした。

数多くの魔法陣や魔法具を改良し、他の研究者に協力もし新たな技術の開発にも尽力した。

私は強化系の魔法が苦手で、武器を持って戦うのも苦手だ。近、中距離の攻撃魔法も苦手。
唯一できるのは膨大な魔力量に任せた力業。
遠距離からの範囲魔法攻撃。

正直戦場での活躍場面は超限られる。

周りに味方がいる状態だと味方も巻き込むからね。
代わりに生産系やサポート系の魔法は得意。

おかげで出世には苦労した。
だって軍で出世しようと思えば戦場で活躍するのが一番効率が良い。なのに私は戦闘では頑張ろうにもそもそも役に立たないからと場に呼ばれもしない。


一昔前の暗黒時代とか呼ばれてた大規模戦争だらけの時代なら活躍の仕様もあったのだろうけれど、今の時代の戦争はチマチマとした国境沿いの小競り合いばかり。

そうなった理由は簡単。
減りすぎたからだ。
人間も、魔族も。

人間は魔族の土地にある魔鉱石や特殊な植物が欲しい。
魔族は人間の土地の豊かな恵みが欲しい。

お互いがお互いの土地を欲しがってずっとずっと戦争をし続けて数千年。
一時的には百や二百年の和平の時はあったみたいだけど、やっぱり長くは続くことはなく。

ずっとずっと戦争し続けているうちにお互い数が減りすぎた。国力も減って大規模戦争をするだけの余力もない。

それでお互い国境沿いで小競り合いをひたすら続けている。

そんな時代にチマチマした戦闘の苦手な私が四天王にまで出世できたのは、研究室で『魔力タンク』なんていう微妙な渾名を付けられるのも我慢し、ひらすら研究に勤しみ結果を上げたり上げさせたりし続けたことと魔力量と元四天王な父親の血筋のおかげ。

史上最弱の四天王なんて不名誉な称号を陰でいただいちゃったりしているけれども。

それでも私はその地位に固執していた。
それはもう必死にすがりついていた。

これまでは--。


だって四天王って言ったら魔王様の側近なのだ。
生まれた時から魔王様史上主義な教育を受けてきた私たち魔族にとって魔王様のお側に寄れる機会の多いその地位は憧れそのもの。
お近くで顔を見ることもあれば声を聞くことだってできちゃうのだ。

魔王様激Loveな魔族にとってこれ以上ない至福。

そう思っていた。
疑いもなく。



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