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スローライフ始めます?
その9
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そもそも普通逆ではないか?
私は18のお年頃の女性で、クルドは12くらいのガキんちょ。
拒否るのも線を引くのも私のはずだ!
なのになのに、何故?
クルドの方が私に陣地の主張をしているのだ?
部屋は無事に取れて、ひとます腰を落ち着けた私たち。
でも一つ問題が。
一部屋しか取れなかったのだ。
宿屋の親父っさんに聞いたところによると、グランパス大平原--奇遇にも私たちがいた草原に魔族が出たそうな。
もしや早くも追っ手がっ!とちょっぴり肝の冷えた私であったが、魔族といってもただのゴーレムらしい。
なんだ。
仮にも四天王である私の追っ手に使い魔はない。
しかも人間でも腕に自信のある冒険者だの傭兵だのが十数人もいれば討伐可能なゴーレム。
その核になる魔鉱石が上質なものだとかいう噂で、今この村にはたくさんの討伐狙いの人たちが集まっているらしい。どこの誰だ、あんなとこにゴーレムだしたヤツは。迷惑だなっ!
他の宿も似たようなものだから、一部屋取れただけでもラッキーなんだそうだ。
なにがラッキーだ。
思うところはあるが今夜こそは馬車寝から解放されると浮かれていた私としては今更宿無しは辛過ぎる。
というかムリ。
致し方ないので「どうする?他を探してみるか?」と聞いてきたクルドに「もういいんじゃねーの?」と投げなりに答えた。
万が一クルドが邪な真似をしようものなら魔法使わないなんて決めごとは知らん。簀巻きにして窓から吊せば良いだけである。
ところが部屋に入るなりクルドは2つ並んでいたベッドを端と端にずらしやがった。
そうして片方のベッドに自分の荷物を下ろすと、
「下で衝立か何か借りてくる」
そう言って部屋を出て行った。
残された私はぽかんとその背を見送った。
この時点では、私に気を使っているのかと少しは思った。少しだけど。
だがしかし!
戻ってきたクルドは部屋の真ん中を衝立で仕切ると私に言った。
「こっち側、俺の部屋だから。入る時はノックすること。あと夜はお互い侵入禁止」
--と。
いや、待てやこら。
それって私のセリフじゃね?
♢♢♢♢♢
「私はさあ!私はさあ?確かにちょっとばかし女らしさにはかけるかも知れないよ?」
ヒィック、としゃっくりをしながら私は隣合ったおっちゃんに訴えた。
どこのどなたかは知らない。
だってさっき会ったばかりなんだもん。
と、いうか偶然酒場のカウンターで横に座ってたってだけだし。
クルドは「古着に行ってくる。ついでに買い物もしてくるから」と一方的に告げて出て行った。
出て行く間際に「宿屋からは出るなよ」と私に釘を差すのは忘れずに。
ぼっちにされた私は宿屋の一階にある食堂件酒場でくだを巻いている。
クルドは宿屋から出るなって言ったんだもん。
だから宿屋からは出てないもん。
おかしいなさっきから語尾がやたらと「もん」になっているような……。ま、いいか。
私には銀貨一枚と銅貨2枚というお金があるのだ。
小間物屋のクソオヤジに相場の半額で買い叩かれたお金だけれどお金はお金。
酒場のお姉さんに「これで飲めるだけちょうだい!甘めので!!」と要求すると、これで5杯目の蜂蜜酒とやらが出てきた。ついでに隣のおっちゃんがおごってくれたくっそ苦いエールとかいうお酒も飲んだ。
あんな苦いものを喜んで飲む人間の味覚はどうかしている。
けどそのくっそ苦いエールのおかげか、私の気分はしごくよろしい。
なんだか頭はふわふわするし、頬はぽかぽかしてる。
初対面のおっちゃんにも臆することなくコミュニケーションが取れるってもんよ!
「いやいや案外その兄さんは照れてるだけかもしれんぜ?若いんだろ~!おっちゃんだったら姉ちゃんみたいなかわいこちゃん独り寝なんざさせねーけどな~!」
「やだわ、おっちゃん!かわいいとかっ」
けどそっか、照れな!
なるほど!
しかし私普通に人間に馴染んでね?
この調子なら独り立ちもあっという間か?
ぐふふ、と私はおっちゃんの背中をバシバシ叩きながらお姉さんの出してくれた蜂蜜酒をぐい飲みした。
「これで最後ね」
お姉さんは何故か苦笑ぎみだ。
だが私は気にしない。
何故ならいいことを思いついたから!
おっちゃんグッジョブである。
上機嫌でぐふふぐふふ、と笑う私の肩を、誰かが掴んだ。振り向くと無表情のイケメンがいた。
おや、クルドクン。
改めて見るとイケメンだな、おま……。
あれ?
ぐるんぐるんする。
無表情だけど、たぶん怒ってるんだろうなぁっていうクルドの顔がぐるんぐるん回ってる。
--知らなかった。
人間ってぐるんぐるん回っちゃうんだ。
私は18のお年頃の女性で、クルドは12くらいのガキんちょ。
拒否るのも線を引くのも私のはずだ!
なのになのに、何故?
クルドの方が私に陣地の主張をしているのだ?
部屋は無事に取れて、ひとます腰を落ち着けた私たち。
でも一つ問題が。
一部屋しか取れなかったのだ。
宿屋の親父っさんに聞いたところによると、グランパス大平原--奇遇にも私たちがいた草原に魔族が出たそうな。
もしや早くも追っ手がっ!とちょっぴり肝の冷えた私であったが、魔族といってもただのゴーレムらしい。
なんだ。
仮にも四天王である私の追っ手に使い魔はない。
しかも人間でも腕に自信のある冒険者だの傭兵だのが十数人もいれば討伐可能なゴーレム。
その核になる魔鉱石が上質なものだとかいう噂で、今この村にはたくさんの討伐狙いの人たちが集まっているらしい。どこの誰だ、あんなとこにゴーレムだしたヤツは。迷惑だなっ!
他の宿も似たようなものだから、一部屋取れただけでもラッキーなんだそうだ。
なにがラッキーだ。
思うところはあるが今夜こそは馬車寝から解放されると浮かれていた私としては今更宿無しは辛過ぎる。
というかムリ。
致し方ないので「どうする?他を探してみるか?」と聞いてきたクルドに「もういいんじゃねーの?」と投げなりに答えた。
万が一クルドが邪な真似をしようものなら魔法使わないなんて決めごとは知らん。簀巻きにして窓から吊せば良いだけである。
ところが部屋に入るなりクルドは2つ並んでいたベッドを端と端にずらしやがった。
そうして片方のベッドに自分の荷物を下ろすと、
「下で衝立か何か借りてくる」
そう言って部屋を出て行った。
残された私はぽかんとその背を見送った。
この時点では、私に気を使っているのかと少しは思った。少しだけど。
だがしかし!
戻ってきたクルドは部屋の真ん中を衝立で仕切ると私に言った。
「こっち側、俺の部屋だから。入る時はノックすること。あと夜はお互い侵入禁止」
--と。
いや、待てやこら。
それって私のセリフじゃね?
♢♢♢♢♢
「私はさあ!私はさあ?確かにちょっとばかし女らしさにはかけるかも知れないよ?」
ヒィック、としゃっくりをしながら私は隣合ったおっちゃんに訴えた。
どこのどなたかは知らない。
だってさっき会ったばかりなんだもん。
と、いうか偶然酒場のカウンターで横に座ってたってだけだし。
クルドは「古着に行ってくる。ついでに買い物もしてくるから」と一方的に告げて出て行った。
出て行く間際に「宿屋からは出るなよ」と私に釘を差すのは忘れずに。
ぼっちにされた私は宿屋の一階にある食堂件酒場でくだを巻いている。
クルドは宿屋から出るなって言ったんだもん。
だから宿屋からは出てないもん。
おかしいなさっきから語尾がやたらと「もん」になっているような……。ま、いいか。
私には銀貨一枚と銅貨2枚というお金があるのだ。
小間物屋のクソオヤジに相場の半額で買い叩かれたお金だけれどお金はお金。
酒場のお姉さんに「これで飲めるだけちょうだい!甘めので!!」と要求すると、これで5杯目の蜂蜜酒とやらが出てきた。ついでに隣のおっちゃんがおごってくれたくっそ苦いエールとかいうお酒も飲んだ。
あんな苦いものを喜んで飲む人間の味覚はどうかしている。
けどそのくっそ苦いエールのおかげか、私の気分はしごくよろしい。
なんだか頭はふわふわするし、頬はぽかぽかしてる。
初対面のおっちゃんにも臆することなくコミュニケーションが取れるってもんよ!
「いやいや案外その兄さんは照れてるだけかもしれんぜ?若いんだろ~!おっちゃんだったら姉ちゃんみたいなかわいこちゃん独り寝なんざさせねーけどな~!」
「やだわ、おっちゃん!かわいいとかっ」
けどそっか、照れな!
なるほど!
しかし私普通に人間に馴染んでね?
この調子なら独り立ちもあっという間か?
ぐふふ、と私はおっちゃんの背中をバシバシ叩きながらお姉さんの出してくれた蜂蜜酒をぐい飲みした。
「これで最後ね」
お姉さんは何故か苦笑ぎみだ。
だが私は気にしない。
何故ならいいことを思いついたから!
おっちゃんグッジョブである。
上機嫌でぐふふぐふふ、と笑う私の肩を、誰かが掴んだ。振り向くと無表情のイケメンがいた。
おや、クルドクン。
改めて見るとイケメンだな、おま……。
あれ?
ぐるんぐるんする。
無表情だけど、たぶん怒ってるんだろうなぁっていうクルドの顔がぐるんぐるん回ってる。
--知らなかった。
人間ってぐるんぐるん回っちゃうんだ。
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