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有言実行の女 ①
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謙虚、控えめをモットーにこれからは生きていく。
そう決めた私はさっそく行動に移すことにした。
有言実行、ということである。
「明日からはお昼をお弁当にしようと思うの。手軽に食べられるものがいいわ。そうね、サンドイッチとか」
帰宅するなりそう宣言した私に、侍女のマーニャはポカンとした顔をした。
マーニャは6才の頃からの付き合いになる私の専属侍女で、パッツン前髪にお下げ頭、銀縁眼鏡という真面目な女学生風の風貌をした26才。前世でいうアラサーである。
「…………サンドイッチ、でございますか?」
「ええそうよ。これからは食堂でなく外で食べるつもりだから」
「外で…………お嬢様が?」
ものの見事にカッチンと固まったマーニャに、私は内心で苦笑する。
お昼というと食堂で高位貴族の子息たちのテーブルに無理やり押しかけていた私が、食堂で食事しないと言ってるんだから、無理もないか。
ちなみに学園内での私の行動を何故マーニャが知っているかというと、私がペラペラ自慢していたからだ。
「今日はユリウス様とご一緒したのよ。うふふユリウス様ってば私と目が合うたびに逸らしてしまって全然見つめ合えないの。恥ずかしがりやさんなのよね♡」
「ウォルター様はキノコがお嫌いみたいでね?お皿の隅に避けてらっしゃったから私が食べて差し上げたの。男っぽい見た目なのに、案外可愛らしいわ」
今日は誰それとご一緒してどうだったのよ♡と自己解釈なあれこれをさも「羨ましいでしょ?」と言わんばかりに――。
いや、もう……黒歴史だわ。
「ご一緒した」って押しかけてただけだし。
目が合うたび逸らされてたのは恥ずかしがってるんじゃなくて拒否られてたんだし。
「食べて差し上げた」ってラブラブの恋人ならともかく親しくもない人間にそれやられちゃドン引きでしょ!ってか恋人同士でも人前ではしないんじゃないかな。普通。
「そ~よ~♪校庭のベンチで花壇でも眺めながら(一人)楽しくランチするの♡うふふんソユワケでよろしくね~」
とりあえず……ここは逃げよう。
ツッコまれてもめんどくさいもの。
そそくさと制服を脱ぎ捨ててポールにかけてあったワンピースを頭から被った。
「ボタン留めてくれる?」
颯爽と一人で着替えて立ち去る予定だったのに、背中ボタンでしたよ。不便。
貴族のご令嬢の服って侍女やメイドに着せてもらうの前提なのか、こういうの多い気がするよね~。
♢♢♢
謙虚控えめなご令嬢っていうと髪はサラサラストレートロングというのが私的イメージである。
ん?いや、まあ勝手な独断と偏見ですけど?
黒髪ってイメージもあるけど、さすがにいきなり黒髪に染めたら逆に目立つよね?
私の髪はふわふわと広がる少しばかりクセのあるピンクブロンド。
それを就寝時にはみつあみして、朝は軽くカールした状態で毛先だけコテ巻きして全部下ろすかハーフアップが定番。
なんだけど。
謙虚、控えめをモットーに生きると決意した次の朝。
早朝からの侍女様マーニャ様の奮闘とコテの力技で、なりました!
サラサラストレートヘアー!!
いやもうホントこれからはマーニャのことは心の奥で侍女様と呼ぶことにしたよっ!
だって私は侍女の仕事を舐めてたということに気づいたから!
だってめちゃくちゃ熱いんですって。
コテが。
私は首に冷たいタオルを当ててもらって、氷入りの100%搾りたてリンゴジュースを飲んでいる状態だから、熱気は感じるものの、汗をかくほどのものではない。
けど鏡越しの侍女様はさっきから額に汗をかき、顔はどんどん赤味を増している。
厚手の手袋越しとはいえ、熱した鉄の棒を手にしているのだ。熱が冷めたら火桶に浸けた熱々のものと交換して、髪が傷まない程度に冷まし、また慎重に髪に当てて伸ばすを繰り返し。
コレ、だいぶ大変な作業じゃない?
しかも毎晩美容のためにも早寝している私と違って、侍女様たちは私が寝た後も残った仕事をして、朝の準備もして、朝は朝で私が起きる頃には身支度万全整えて、私の身支度の準備やらもはっちり整えているのである。
とてもじゃないが私には真似できそうにない。
前世こそ働き者な日本人であったが、今世では裕福な貴族のお嬢様である。というかおぼろげに前世でもそこまで働き者だったかというとそうでもなかった気がするし、何より私の身体には重篤なだらけ癖が骨の髄まで染み付いている。
よくラノベなんかで異世界転生した主人公が「前世での記憶があるから平民でも生きていける気がする!」みたいなセリフを言っていたりするが、私はあんまり生きていける気はしない。
それでも修道院とエロ爺の妾と平民しか未来の選択肢がなさそうな現状、平民を取るしかないのだが。
そんな私からすれば侍女様の仕事は普通にブラックで、しかも担当のお嬢様(私)は我儘な勘違い娘――うん、スゴいわ~、手抜きもせずしっかり仕事するし、これはリスペクトですよ!侍女様様々ですよ。
せめてこれからはあんまり無茶ぶりしないようにしないと……ってすでにいきなり今日からサラサラストレートヘアーでよろしく✩とか言っちゃったけど!
なんて脳内で言ってる間に鏡の中にはピンクブラウンの髪のサラサラストレートヘアーの美少女が爆誕してた。
ほぉぉぉお、コレは――なかなか良いんでないかしらん?
そう決めた私はさっそく行動に移すことにした。
有言実行、ということである。
「明日からはお昼をお弁当にしようと思うの。手軽に食べられるものがいいわ。そうね、サンドイッチとか」
帰宅するなりそう宣言した私に、侍女のマーニャはポカンとした顔をした。
マーニャは6才の頃からの付き合いになる私の専属侍女で、パッツン前髪にお下げ頭、銀縁眼鏡という真面目な女学生風の風貌をした26才。前世でいうアラサーである。
「…………サンドイッチ、でございますか?」
「ええそうよ。これからは食堂でなく外で食べるつもりだから」
「外で…………お嬢様が?」
ものの見事にカッチンと固まったマーニャに、私は内心で苦笑する。
お昼というと食堂で高位貴族の子息たちのテーブルに無理やり押しかけていた私が、食堂で食事しないと言ってるんだから、無理もないか。
ちなみに学園内での私の行動を何故マーニャが知っているかというと、私がペラペラ自慢していたからだ。
「今日はユリウス様とご一緒したのよ。うふふユリウス様ってば私と目が合うたびに逸らしてしまって全然見つめ合えないの。恥ずかしがりやさんなのよね♡」
「ウォルター様はキノコがお嫌いみたいでね?お皿の隅に避けてらっしゃったから私が食べて差し上げたの。男っぽい見た目なのに、案外可愛らしいわ」
今日は誰それとご一緒してどうだったのよ♡と自己解釈なあれこれをさも「羨ましいでしょ?」と言わんばかりに――。
いや、もう……黒歴史だわ。
「ご一緒した」って押しかけてただけだし。
目が合うたび逸らされてたのは恥ずかしがってるんじゃなくて拒否られてたんだし。
「食べて差し上げた」ってラブラブの恋人ならともかく親しくもない人間にそれやられちゃドン引きでしょ!ってか恋人同士でも人前ではしないんじゃないかな。普通。
「そ~よ~♪校庭のベンチで花壇でも眺めながら(一人)楽しくランチするの♡うふふんソユワケでよろしくね~」
とりあえず……ここは逃げよう。
ツッコまれてもめんどくさいもの。
そそくさと制服を脱ぎ捨ててポールにかけてあったワンピースを頭から被った。
「ボタン留めてくれる?」
颯爽と一人で着替えて立ち去る予定だったのに、背中ボタンでしたよ。不便。
貴族のご令嬢の服って侍女やメイドに着せてもらうの前提なのか、こういうの多い気がするよね~。
♢♢♢
謙虚控えめなご令嬢っていうと髪はサラサラストレートロングというのが私的イメージである。
ん?いや、まあ勝手な独断と偏見ですけど?
黒髪ってイメージもあるけど、さすがにいきなり黒髪に染めたら逆に目立つよね?
私の髪はふわふわと広がる少しばかりクセのあるピンクブロンド。
それを就寝時にはみつあみして、朝は軽くカールした状態で毛先だけコテ巻きして全部下ろすかハーフアップが定番。
なんだけど。
謙虚、控えめをモットーに生きると決意した次の朝。
早朝からの侍女様マーニャ様の奮闘とコテの力技で、なりました!
サラサラストレートヘアー!!
いやもうホントこれからはマーニャのことは心の奥で侍女様と呼ぶことにしたよっ!
だって私は侍女の仕事を舐めてたということに気づいたから!
だってめちゃくちゃ熱いんですって。
コテが。
私は首に冷たいタオルを当ててもらって、氷入りの100%搾りたてリンゴジュースを飲んでいる状態だから、熱気は感じるものの、汗をかくほどのものではない。
けど鏡越しの侍女様はさっきから額に汗をかき、顔はどんどん赤味を増している。
厚手の手袋越しとはいえ、熱した鉄の棒を手にしているのだ。熱が冷めたら火桶に浸けた熱々のものと交換して、髪が傷まない程度に冷まし、また慎重に髪に当てて伸ばすを繰り返し。
コレ、だいぶ大変な作業じゃない?
しかも毎晩美容のためにも早寝している私と違って、侍女様たちは私が寝た後も残った仕事をして、朝の準備もして、朝は朝で私が起きる頃には身支度万全整えて、私の身支度の準備やらもはっちり整えているのである。
とてもじゃないが私には真似できそうにない。
前世こそ働き者な日本人であったが、今世では裕福な貴族のお嬢様である。というかおぼろげに前世でもそこまで働き者だったかというとそうでもなかった気がするし、何より私の身体には重篤なだらけ癖が骨の髄まで染み付いている。
よくラノベなんかで異世界転生した主人公が「前世での記憶があるから平民でも生きていける気がする!」みたいなセリフを言っていたりするが、私はあんまり生きていける気はしない。
それでも修道院とエロ爺の妾と平民しか未来の選択肢がなさそうな現状、平民を取るしかないのだが。
そんな私からすれば侍女様の仕事は普通にブラックで、しかも担当のお嬢様(私)は我儘な勘違い娘――うん、スゴいわ~、手抜きもせずしっかり仕事するし、これはリスペクトですよ!侍女様様々ですよ。
せめてこれからはあんまり無茶ぶりしないようにしないと……ってすでにいきなり今日からサラサラストレートヘアーでよろしく✩とか言っちゃったけど!
なんて脳内で言ってる間に鏡の中にはピンクブラウンの髪のサラサラストレートヘアーの美少女が爆誕してた。
ほぉぉぉお、コレは――なかなか良いんでないかしらん?
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