ボッチのお花畑令嬢に転生した私、断罪回避のためにストーキングはじめました。

黒田悠月

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有言実行の女 ②

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 真っ直ぐ胸の下まで伸びるストレートヘアー。
 両サイドの髪は耳の後ろで編み込みにしてからハーフアップに、斜めに流していたいた長めな前髪は眉下でぱっつんとカット。
 なんとなく前髪ぱっつんでおでこ隠した方が真面目っぽさを演出できる気がしたのでついでに切ってもらったのだが、我ながらかわゆい。良き。
 化粧もピンク系を引き算。目許は目尻にだけブラウンのラインを引いてベージュブラウンを薄くブラシで佩き、頬紅もほんのり程度、唇も落ち着いた色合いのローズピンクに。

 姿勢を正してほんの少し伏し目がちに鏡を見れば――そこにはそこはかとなくお淑やかそうな雰囲気の美少女が。

 すごい!注文通り。いえ、それ以上だわ……。


 侍女様ったら、たかが子爵家の我儘娘ごときにはもったいない実力者じゃないですか?
 お金?
 やっぱりお金の力かな?
 お金の力でデキる娘をスカウトしてきたのかしら?うん、きっとそうね。
 今まで辞めずに残ってくれてるのもきっとお給金がいいから。

――ありがとうお祖父様!いっぱいお金残してくれて!!

 おかげで孫は理想の清楚系美少女(見た目だけ)になれましたっ!!


 こうして清楚系美少女に(見た目)イメージチェンジした私は、ホクホク顔で通学用の馬車に乗り込んだ、のだが。

 …………気の所為かな?お腹が痛い。

 シクシク、ズキズキ。
 痛みが学園が近づくに連れ、強くなるのだった。

 学校行き辛いから腹痛ってまるで小学生……と思ったところで(あっ)と思い出した。
 私、朝食の後にホットミルク飲んじゃってたよ。
 ちょっと侍女様の仕事っぷりにテンション上がりすぎだから甘めのホットミルク飲んで落ち着こう、とか思って。
 うん、ホットミルクで気分が落ち着く気がしたのだ。
 前世の習慣だったのかもね。
 久しぶりの味だ美味しい~って二杯もおかわりしてましたね。そして今の私は牛乳取りすぎるとすぐ腹を壊す子なのでした。
 久しぶりなのは普段あまり取らないようにしているからだ。下痢するから。
 思えば侍女様が二杯目以降を注ぐ時に微妙な顔をしてましたわ。というか「飲み過ぎはお腹によくありません」って言われたわ。「大丈夫よ、美味しいし」って聞かなかった私が悪いな。うん。

 緊張にドキドキしくぐるはずだった校門を馬車の中でキュルキュル言い出したお腹を抱えて宥めながら通り、校舎に入るなりトイレに駆け込む私って……。

 まあでも腹痛ってのはある程度出すもの出してしまえばそれなりに治まるもので。

「……はぁ、」

 すっきりだわ。
 まだお腹は完全回復とはいかないけどだいぶマシにはなった。とりあえず一限目から先生に「お花摘みに行かせてください」とは手を上げずにすみそう。

 手を洗ってハンカチで拭いながら、息をつく。

――それにしても。

 私は蛇口に埋め込まれた青い石に手を伸ばした。
 そっと触れると、蛇口の先から水が流れ出る。
 水の魔石が埋め込まれた魔導具で、手で触れると一定時間水が流れ出るのだ。

 タッチセンサーみたいよね。

 触れると水が流れだし、数十秒で自動的に止まる。
 
 この世界はゲームやラノベのファンタジーによくあるお貴族様と剣と魔法の世界で、これもありがちなことに電気を動力にする機械の代わりに魔窟と呼ばれるいわゆるダンジョン(?!)に生息する魔物の核――魔石の魔力を動力とする魔導具がある。
 魔石は凶暴な魔物を倒さなければ手に入らず、当然高価なので、魔石を動力とする魔導具も一般にはあまり出回っていない。けれど、ここは高位貴族や王族さえも通うルクルシル魔術学園。あちらこちらに魔導具がある。
 元日本人である私的に助かったのはやっぱり水洗トイレ。坪とか桶とかだとキツかっただろうな。
 とあるファンタジーではオマルみたいなのにして窓からポイ捨てとか、ポットン便所なってて下にスライムが入っててスライムがキレイに食べるなんてのがあったような。
 これも水洗とはいっても地下に流して貯めてるらしい。
 貯めた糞尿を回収して腐食の魔石や魔術を使って肥料にしているとか。

 このなんともご都合主義で妙な便利さ。
 いかにもラノベやゲーム的世界観ではなかろうか。
 
 魔物がいたりダンジョンがあったりする当たりはラノベ的であるし、学園があったり、その学園にいかにも攻略対象っぽいイケメンの高位貴族が集まっている当たりは悪役令嬢ものとかの恋愛小説や乙女ゲームっぽい。

 異世界ものでは自分の好きだった小説やゲームにヒロインやら悪役令嬢やらに転生するのって定番中の定番だが。

――そういう場合って普通他の記憶は曖昧でも小説やゲームに関してだけはしっかりガッツリ思い出すもんなんじゃないの?

 マジ、全然これっぽっちも記憶にございませんのですが? 

「………………………ま、まぁ、私が主人公はないわよね」

 つい先日までなら「やだ、やっぱり私って生まれながらの……ううん、生まれる前からヒロインになる運命だったのね♡」と両手で頬を挟んで飛び跳ねていただろうが。

 謙虚、控えめがモットーな今となっては、全力で遠慮したい。

 だ、大丈夫よね?ザマァされる系ヒロインにしても頭の中が花畑に過ぎるもの。ザマァされるヒロインだってそれまでにそれなりに攻略はしているものでしょう?だいたいヒロインと攻略対象プラスその側近とかがセットでザマァされるものではないの?

 私はただの一人も攻略できてないし、まず間違いなくこの先もムリだ。
 
 だって嫌われ者だし。

…………なんだか今度は胸が痛いわ。
 ボッチ――ボッチかぁ。学園、まだ最短でも一年半は残ってるのに、たぶんその間ずっ~とボッチ。

 グループ分けとかの時に誰にも声かけてもらえずに一人ぽつ~んとなって先生に困り顔で「どこか入れてやってくれ」とか言われるのよね、きっと。で、イヤイヤ私を入れた人たちからは迷惑顔でハブられる、と。

 あぁ、お腹も胸も痛い。
 私の学園生活薔薇色どころかヘドロ色だわぁ。

 ガックシしながらトイレから廊下に出た私は、視界に見えたピカピカの革靴に、ぼやぁ、と「わぁ、見るからに高そうな靴だこと」と、思った。
 靴の上にはズボンに覆われた二本の足が当然ながら続いているのだが。俯いてフラフラ前に進んでいた私の頭はこの時ぜんっぜん働いてなかったもので。

 ボフッ!とぶつかってからようやく誰かが前にいて、その人に思い切りぶつかってしまったのだと気付き――

「きゃっ♡」

 無意識に私の喉から発せられた甘ったるい声。
 わざとらしくもナナメに崩折れて膝をつく身体。
 片手は膝の横に、もう片方の手はあざとさ満載の仕草で口元に当てられている。グーで。もちろん指は内向きだ。
 視線はさり気なく上下に動き、目の前の獲物を品定め……………………って、おいっ?!

 何しちゃってんの?私?!





 
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