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第152話 うっかり盲点を突いてしまう
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とはいえ、このような逆境ゆえ心身の疲労は並大抵のものではなく、また、これによってユキへの愛慕の情がさらにつのってしまう。
昼休みはそれがいっそう加速する時間だ。食事は各自、駐車場に停めた車の中で取る。佐野にしてみれば、作業の一挙一動を監視され、針のむしろのような空気から逃れられる唯一の安らぎのひとときだ。
空腹も満たされ、いい感じに気が緩んだところへ、脳内でユキの登場となる。しかし立場上、現場事務所にいるユキへ電話をかけて愚痴を言うわけにはいかない。
けれどユキとはもうビジネスだけの関係ではないのも事実。
双方がゲイであることはわかっているし、ゲイバー・花壇の姉妹店であるメイド喫茶のキャラメルフェアリーの特別室で食事をするほどの親しい仲だ。しかもユキは元彼についても詳しく経緯を語ってくれて、「昔の恋の残骸」も一緒に始末したくらいの間柄――
「あれ?」
そこで、はたと素朴な疑問が浮かぶ。
「ここまで互いのプライベートを深く知っているのに、どうして僕達はラインやメールの交換をしていないんだろうか」
思えば今までユキからそんな提案は一切ない。自分も常に恋のジェットコースター状態だから、そこまで考えが及ばなかった。
「……これはうっかり盲点を突いてしまったのではないか」
佐野の顔が青ざめる。心の支えともいえる安らぎの時間へも暗雲が立ちこめる。
昼休みはそれがいっそう加速する時間だ。食事は各自、駐車場に停めた車の中で取る。佐野にしてみれば、作業の一挙一動を監視され、針のむしろのような空気から逃れられる唯一の安らぎのひとときだ。
空腹も満たされ、いい感じに気が緩んだところへ、脳内でユキの登場となる。しかし立場上、現場事務所にいるユキへ電話をかけて愚痴を言うわけにはいかない。
けれどユキとはもうビジネスだけの関係ではないのも事実。
双方がゲイであることはわかっているし、ゲイバー・花壇の姉妹店であるメイド喫茶のキャラメルフェアリーの特別室で食事をするほどの親しい仲だ。しかもユキは元彼についても詳しく経緯を語ってくれて、「昔の恋の残骸」も一緒に始末したくらいの間柄――
「あれ?」
そこで、はたと素朴な疑問が浮かぶ。
「ここまで互いのプライベートを深く知っているのに、どうして僕達はラインやメールの交換をしていないんだろうか」
思えば今までユキからそんな提案は一切ない。自分も常に恋のジェットコースター状態だから、そこまで考えが及ばなかった。
「……これはうっかり盲点を突いてしまったのではないか」
佐野の顔が青ざめる。心の支えともいえる安らぎの時間へも暗雲が立ちこめる。
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