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第213話 いきなり怒濤のごとく押し寄せてきた幸福に恐れをなす
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「そして次に、ケイだけが継続できた理由だが――」
ユキの説明は続く。
「レイナが粉砕した図面の修復は、ケイと一緒に俺がやるとみんなに宣言したからさ。もちろんこれは計算の上だ。俺はこの図面粉砕事件を利用したんだ。本来の計画であれば、施工写真の整理が遅れているので特別にケイだけを継続させてくれって会社に頼む考えでいたんだ」
「……!」
驚きで佐野は言葉も出ない。ただ単純に忙しくて手が回らないからユキの方へ流れたのではなかったのだ。
そしてユキは、そんな佐野を見てニヤリと笑い、話を続ける。
「例のテナントビルの改修工事で、ケイは社内で高い評価を得ている。だからどちらの理由にせよ承諾は得られると俺は確信していた。となれば、一番差し迫った問題を利用した方が説得力がある。なので、図面の修復の方を手段として使ったんだ」
「なんとまあ……」
佐野は目を白黒させる。自分の知らないところでこんなにもユキが暗躍していたとは。
また、それほどまでしてユキが自分を手放したくなかったとは。
てっきりユキとの関係は、絶望的な片思いで終わると思い込んでいたのに、現実はその反対。橋本建設との関係も同様だ。
ちょっと待ってくれ。現実に思考が追いつかない――
佐野は嬉しさを通り越し、いきなり怒濤のごとく押し寄せてきた幸福に恐れをなす。
なぜなら今まで、『キラキラした人達を遠くから羨ましく眺めている日陰の人』の立ち位置にいたからだ。
ユキの説明は続く。
「レイナが粉砕した図面の修復は、ケイと一緒に俺がやるとみんなに宣言したからさ。もちろんこれは計算の上だ。俺はこの図面粉砕事件を利用したんだ。本来の計画であれば、施工写真の整理が遅れているので特別にケイだけを継続させてくれって会社に頼む考えでいたんだ」
「……!」
驚きで佐野は言葉も出ない。ただ単純に忙しくて手が回らないからユキの方へ流れたのではなかったのだ。
そしてユキは、そんな佐野を見てニヤリと笑い、話を続ける。
「例のテナントビルの改修工事で、ケイは社内で高い評価を得ている。だからどちらの理由にせよ承諾は得られると俺は確信していた。となれば、一番差し迫った問題を利用した方が説得力がある。なので、図面の修復の方を手段として使ったんだ」
「なんとまあ……」
佐野は目を白黒させる。自分の知らないところでこんなにもユキが暗躍していたとは。
また、それほどまでしてユキが自分を手放したくなかったとは。
てっきりユキとの関係は、絶望的な片思いで終わると思い込んでいたのに、現実はその反対。橋本建設との関係も同様だ。
ちょっと待ってくれ。現実に思考が追いつかない――
佐野は嬉しさを通り越し、いきなり怒濤のごとく押し寄せてきた幸福に恐れをなす。
なぜなら今まで、『キラキラした人達を遠くから羨ましく眺めている日陰の人』の立ち位置にいたからだ。
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