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吸血鬼ミレイの憂鬱

7 ミレイとアンナの秘密

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 深夜、城の庭園には静寂が満ちていた。ミレイはゆっくりと歩きながら、植物に囲まれた穏やかな時間を楽しんでいた。そこに、アンナが珍しいブルームーンのバラを手入れしている姿があった。

「こんばんは、アンナ様」

 ミレイが穏やかに声をかけると、アンナは振り返り微笑んだ。

「あら、ミレイじゃない。こんな遅くにどうしたの?」

 アンナはバラの枝を剪定しながら、話し始めた。

「このブルームーン、実は祖父が若い頃、森で迷った時に一人の吸血鬼からもらったんだって」

 ミレイは驚いたが、表情は静かに保ちつつ、興味深く聞き続けた。

「その吸血鬼はとても優しくて、祖父を無事家まで送り届けたの。レオナルドはその話をとても気に入っていてね」

 アンナは少し顔を曇らせながら、続けた。

「吸血鬼というと皆が恐れるけれど、彼らもまた個性がある。そう、レオナルドはそんな話を聞くのが好きなの」

 ミレイは心の中で深く共感し、アンナの話に耳を傾けた。

 アンナは話の流れで、息子たちの間に流れる暗殺計画の噂についても触れた。

「最近、息子たちの間に噂があるの。レオナルドの命を狙うとか…私はそんな話を信じたくないわ」

 アンナの言葉にミレイは心を痛めたが、驚きや怒りを見せることなく、静かに共感を示した。

「アンナ様、そのようなことが決して起きないことを祈ります」

 アンナは感謝の言葉を述べ、ミレイに感謝した。二人はしばらく月明かりの下で話し続け、庭園のブルームーンのバラがそっとその場を照らしていた。

 遠征地からの帰路、レオナルドは軍列の最後尾、殿を務める重責を担っていた。彼の剣は多くの戦で輝き、彼の勇敢さは兵士たちに勇気を与えていた。しかし、その英雄的な行動の陰で、不穏な空気が漂っていた。

 夜は深く、月は見え隠れする雲に覆われていた。木々は風にざわめき、その音はまるで何かを告げるかのように不気味だった。レオナルドは馬上で周囲を警戒しつつ、遠く離れた城への思いを馳せていた。

 彼は時折、背後に不審な気配を感じる。。彼の忠実な馬も、何かを察知したかのように落ち着かない様子を見せていた。レオナルドは剣の柄に手をかけながら、静かに周囲を見渡した。遠征の成功にも関わらず、帰路に潜む影は彼の胸に深い影を落としていた。
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