上 下
2 / 25
読み切り

絶望を食べる魔物

しおりを挟む
「エリナ、この森に絶望を食らう魔物がいるというのは、本当か?」

 グレイソンは疑わしげな眼差しで森を見つめながら尋ねた。

 エリナは確かな口調で応えた。

「村人たちの話では本当みたいね。だけど、私たちがいれば恐れることはないわ」

 二人は森の奥へと踏み込むと、不気味な影がうごめく大木に囲まれた。空気は重く、緊張感が漂っていた。突如、妖しい光を放つ目を持つ巨大な魔物が現れた。

「ようこそ、冒険者たちよ。私が絶望を食らう者だ」

「まさか、本当にいるとはな。だが、絶望って、いったい何なんだ?」グレイソンは挑戦的に問うた。

「人々の心の闇、希望を失った絶望。それが私の力の源だ」魔物は嘲るように答えた。

「私たちがここに来たのは、お前が村に災いをもたらすのを阻止するためよ。」エリナは堂々と宣言した。

 魔物はその言葉に嗤い、さらに圧倒的な存在感を放ち始めた。

 グレイソンとエリナが魔物と対峙する中、森全体が絶望に覆われていく。二人の不安が魔物に力を与えているかのようだった。

「エリナ、こいつは手強い。どうやって絶望を打ち破るんだ?」

 グレイソンは困惑した声で言った。

 エリナは力強く答えた。

「私たちの力は、仲間との絆よ。一緒に戦えば、どんな絶望も乗り越えられる」

 魔物の怒りが頂点に達した時、グレイソンとエリナは心の中にある希望の光を見出し、互いの絆を強く信じて立ち上がった。力を合わせ、絶望を食らう者に立ち向かう。

「なんということだ…絶望を感じない…」魔物は驚愕した。

「我々の絆が勝ったんだ。絶望を食らう者よ、お前の終わりだ」グレイソンは堂々と宣言した。

「希望が勝つ時、絶望は敗れるのよ。村に平和をもたらすため、ここでお前の物語は終わり」エリナの声には決意が込められていた。

 魔物は消滅する間際、最後の言葉を残す。「私を倒しても、第二、第三の魔物が生まれる。絶望は決して尽きることはない…」

 森は再び平和を取り戻したかのように見えたが、魔物の言葉は二人の心に深く刻まれた。グレイソンとエリナは知った、絶望との戦いは終わりではなく、始まりに過ぎないと。しかし、彼らには変わらぬ希望があり、絆があった。そしてその絆が、これからも絶えず絶望を照らし続ける光となるのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

湯村君は小さいけどデカい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:0

転生王子はダラけたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,968pt お気に入り:29,355

ゲルトルートの絵本

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:1

サキュバス召喚!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:17

無垢な少年が異世界に転生したらどうなるのか

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:4

俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ(笑)

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:462pt お気に入り:93

無能のフリした皇子は自由気ままに生きる〜魔力付与出来るのは俺だけのようだ〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,905pt お気に入り:1,100

処理中です...