着いたところは異世界でした。

千野恵

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第二章  魔法使いイチロー

19.自分を知る

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19.自分を知る

やばそうな雰囲気はビンビンだったけど、俺は女神の依頼を受けようと思った。

もちろん、自分自身を知るためっていうのが一番にあるんだけど、やばそうであっても女神の手伝いってのはやりがいがありそうだったから。

俺は他人よりもちょっとさぼり癖はあるけれど、やりがいがある仕事をすることはいとわないのだ。

だってそうだろう?
仕事だけが生きがいだ、とか、生活のために仕事をするなんていう人もいたけど、俺は生活するためや趣味に費やすためだけに仕事していたわけでもなく、やりがいがある仕事をしたあとの達成感が好きだった。

飛び込みの営業で相手からけんもほろろに断られることもあったけれど、何度か行ってプレゼンさせてもらって、さらにそのプレゼンが良ければ契約にこぎつけられる時もあった。
それは努力した結果だし、プレゼンまで行けば契約してもらえることが多かったので、やりがいがあったし達成感は最高だった。大口契約になるのは半年に一回あるかないか位だったけれど、小口契約は結構あったので、それなりに営業成績も良かった。高校出でもやればできるんだっていう自負もあった。

そんなわけで、給料もそこそこ良かったから程々の生活水準だったと思うし、趣味の旅行も結構行けてた。
国内では温泉めぐりや、海外ではツアーに申し込まずに一人でのんびり観光地を巡った。
同僚の中には日本人のさがなのか、仕事が命っていう人もいたけれど、俺はオンオフを分けてたから結構自由に生きてきた。
性格もくよくよと悩むこともなく、頑張っていれば何とかなるさ、というスタンスで生きてきた。
 
だから、女神の要請を受けても、やばくても何とかなるとは思ったが。

ただ、対価にするつもりの俺の情報、自分の知らない自分を知る、ということは本当に今まで漠然と感じていた不安を解消させるものだろうか。

知るにしても俺は・・・。
またしてもループする思いをイカルスが止めてくれた。

「イチロー、私もお前のすることに助成しよう。なに、大した対価はいらん。お前に付いていくと面白そうだからな。お前といるといろんなハプニングがあって退屈せん。」

え。退屈しないって。なんだよそれ。
でも、大した対価はいらないって。

良いのか?良いのかな。師匠だぞ?すごい対価なんじゃないか?
とか思っていたら飄々として師匠が肩をたたいた。

「まあ、お前はすることが危なっかしいからな。最後の弟子に対して師匠としては最後まで見届ける必要はあるからな。気にするな。対価は毎日のうまい飯で良いぞ。」
呆然としつつ、嬉しさで涙が出てしまった。
何とも締まらない対価ではあるが、そのあたたかな心使いが嬉しかった。

そして、女神に礼をして俺はこう申し上げた。
「光の女神、ノヴァ様。謹んで女神のお手伝いをするというお仕事をお受けいたします。」
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