乙女ゲームのお邪魔お局に転生してしまった私。

よもぎ

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もしかして、日記・・・?

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重たい瞼で、包みの中にあったもう1冊の何かを手に取る。

重厚な表紙に、おもちゃながら鍵穴がしっかり付いている。

「もしかして、日記・・・?」

鍵そのものは紛失していたが、ノートのカギとしての機能が壊れていたのか、あるいは鍵が掛かっていなかったのか。

そのノートはすんなりと開いた。

初めて彼氏ができたことや、デートで何処へ行っただとか、初体験について赤裸々に書かれている。

彼氏からメールが来ないことに一喜一憂したり、学校で彼氏が他の女子生徒と親しげに話しているのを見て心が苦しくなったり。

そんな彼氏に対して駆け引きをしようとわざと素っ気なくしたり、他の男子生徒と仲良くしてみたり。

本当にありふれた恋愛だった。だからこそ。

「う~ん・・・見てはいけないものを見ちゃった感じ・・・」

読んでいて、ものすごく気恥ずかしい。

でも、身に覚えのある感情で微笑ましい。

―――が、しばらく読み進めていると雲行きが怪しくなってきた。


〇月●日
生理が来ない。どうしよう。
彼に相談してもそうなんだ。しか言わない。
だけどこんなこと、親や友達に相談なんてできない。

〇月●日
ネットで調べたら、妊娠検査薬というものが薬局に売ってるらしい。
怖いけど、明日こっそり買って使ってみよう。

〇月●日
陽性になった。何かの間違いだと思ってもう1回やってみたけど、やっぱり陽性になった。
妊娠検査薬の精度は99%ってネットにあったけど、99%が2回出たってことはほぼ100%ってこと?怖い。


中学生で妊娠かぁ。

だけど、若い頃はあんなに可愛かったんだから、モテるのも頷ける。

子どもはどうしたんだろう、という好奇心から更に日記を読み進める。


〇月●日
産むなら勘当だと親に言われた。
でもずっと、私は大事にされてなかった。
妊娠する前から、お父さんとお母さんの子どもは弟だけな気がしてた。


〇月●日
私はおじいちゃんの子になった。
お手伝いのお姉さんは私の気持ちを分かってくれるから好き。


また瞼が熱くなった。

城之内姫華にとっての家族は、祖父と家政婦だったんだ。


〇月●日
お腹の子は女の子らしい。
名前は悠花にしたい。
ずーっと咲く花。
私と違って、家族から愛情を注がれてずーっと幸せそうに笑う子になってほしい。


〇月●日
ごめんね。ごめんね悠花。
育てられなくてごめんなさい。

〇月●日
悠花はおじいちゃんのツテでどんなに頑張っても子どもができない夫婦に渡すことになった。
悠花には本当に悪いけど、私と違って大人でお金を稼いでて、両親揃っている家の子になった方が幸せかな?
おじいちゃんには「子どもは姫華のこれからの人生の障害になる。姫華はこれから進学して、就職して、今度こそまともな男を見つけなければならん。今回は残念だが、今子どもを欲しがっている人に育ててもらうのが姫華にとっても子どもにとっても、子どもを欲しがっている夫婦にとっても良いと思わないか?」と説得されて、何も言い返せなかった。
真弓さんは「頭ではわかっていてもツラいよね」と一緒に泣いてくれた。

〇月●日
悠花を引き取ってくれた夫婦は良い人そうだった。
悠花を可愛い、可愛いって抱きしめてくれた。
私のことを軽蔑するかと思ったけど、こんなに可愛い赤ちゃんの親にしてくれてありがとうと言われた。
この夫婦は遠い所に住んでるし、もう私に悠花の親を名乗る資格はない。
さようなら、悠花。


全てが腑に落ちたような感覚。

子ども、という言葉に心臓が嫌な音を立てた時も―――母から娘、という言葉に動悸がした時も。

この城之内姫華の体に眠る本能が、悠花を手放した時の痛みに震えていたのだ。

今、子どもはどこにいるんだろう?

そう思ったが、そもそも私はこの体に転生した偽物。

それに、本物の城之内姫華は我が子のために身を引いたのだ。

手放した娘の前に現れたりなど、望んでいないだろう。

悠花のことは気がかりではあるが、私【山田ヒミコ】は彼女にとって異世界から来た赤の他人である上に、悠花を引き取った家族の家庭を引っ掻き回す趣味はないので、悠花の行方には興味を持たない方が良い。

冷蔵庫から氷を取り出し、氷嚢に詰め込み瞼に当てながら

「あぁ私山田ヒミコって名前だったんだ」

と、忘れかけていた自身の名前を呟いたのだった。
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