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なんだかとても大事なことを忘れている気がするけれど、とてつもなく眠い。
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「今日も中村おなら小僧は強烈だったなぁ・・・」
帰宅して、500ミリリットルペットボトルのミネラルウォーターをラッパ飲みしつつ、スイミングスクールの時のことを思い出して苦笑いした。
変な人も多いが、今の生活は基本的に楽しい。
だからこそ、私はこの生活を手放したくはないのだ。
そういえば、ウニバーサルの缶を持ち帰ったんだった。
鞄から缶を取り出し、蓋を外す。
缶を水平に保てなくて、中身のお守りがパラパラと私の膝に零れ落ちた。
「あっ・・・やっちゃった」
すると、缶の底にお守りとは違う重みを感じて、お守りを掻き分けてその重みを手探りする。
もう缶が傾いてお守りで周りが散らかるのなんかどうだっていい。
やっとその重みに触れた。
それは縦長で小ぶりの、ピンクの合皮でできたバネポーチ。
バネポーチ自体は軽そうなものの、中に入っているものがずっしりと重たい。
金の延べ棒だったら嬉しいけれど・・・なんて馬鹿なことを思いながら、バネポーチの口を開けようとグッと力を込めた。
「とけ、い?」
口が開いたバネポーチを掌の上でひっくり返し、中身を出した。
ピンクゴールドで小ぶりな、所謂レディースの腕時計である。
「子どもっぽいけれど、可愛らしいデザインね」
まんまるな文字盤を覗き込めば、ローマ数字で時間が書かれており、12時の下に国産メーカーの名前が刻まれている。
ピンクシェルの文字盤が角度を変えると鈍く光を反射し、虹色を感じられるのがほんの少し高級感があるように思えた。
少し躊躇ったが、左手首に嵌めてみるとなかなか華奢で可憐なデザインである。
アルバムの写真に写る美少女な姫華にはとてもよく似合うデザインだと認めざるを得ない。
―――やっぱりこれが元カレが姫華に贈ったプレゼントなのよね。
クォーツなのか自動巻きなのか、はたまた手巻きなのかはわからないが、針はすっかり止まってしまっていたことにずっとこの時計がデスクの中で眠っていたことを悟った。
腕時計を振ったり、竜頭を回したりしてみたものの、針はびくともしないのでこれはきっとクォーツなのだろう。
明日、適当な時計店に持って行って電池交換をお願いしよう。
なんだかとても大事なことを忘れている気がするけれど、とてつもなく眠い。
お守りの片付けも明日で良いやと投げやりな気持ちが沸き起こり、散らかる部屋を尻目に私は部屋の電気を消した。
帰宅して、500ミリリットルペットボトルのミネラルウォーターをラッパ飲みしつつ、スイミングスクールの時のことを思い出して苦笑いした。
変な人も多いが、今の生活は基本的に楽しい。
だからこそ、私はこの生活を手放したくはないのだ。
そういえば、ウニバーサルの缶を持ち帰ったんだった。
鞄から缶を取り出し、蓋を外す。
缶を水平に保てなくて、中身のお守りがパラパラと私の膝に零れ落ちた。
「あっ・・・やっちゃった」
すると、缶の底にお守りとは違う重みを感じて、お守りを掻き分けてその重みを手探りする。
もう缶が傾いてお守りで周りが散らかるのなんかどうだっていい。
やっとその重みに触れた。
それは縦長で小ぶりの、ピンクの合皮でできたバネポーチ。
バネポーチ自体は軽そうなものの、中に入っているものがずっしりと重たい。
金の延べ棒だったら嬉しいけれど・・・なんて馬鹿なことを思いながら、バネポーチの口を開けようとグッと力を込めた。
「とけ、い?」
口が開いたバネポーチを掌の上でひっくり返し、中身を出した。
ピンクゴールドで小ぶりな、所謂レディースの腕時計である。
「子どもっぽいけれど、可愛らしいデザインね」
まんまるな文字盤を覗き込めば、ローマ数字で時間が書かれており、12時の下に国産メーカーの名前が刻まれている。
ピンクシェルの文字盤が角度を変えると鈍く光を反射し、虹色を感じられるのがほんの少し高級感があるように思えた。
少し躊躇ったが、左手首に嵌めてみるとなかなか華奢で可憐なデザインである。
アルバムの写真に写る美少女な姫華にはとてもよく似合うデザインだと認めざるを得ない。
―――やっぱりこれが元カレが姫華に贈ったプレゼントなのよね。
クォーツなのか自動巻きなのか、はたまた手巻きなのかはわからないが、針はすっかり止まってしまっていたことにずっとこの時計がデスクの中で眠っていたことを悟った。
腕時計を振ったり、竜頭を回したりしてみたものの、針はびくともしないのでこれはきっとクォーツなのだろう。
明日、適当な時計店に持って行って電池交換をお願いしよう。
なんだかとても大事なことを忘れている気がするけれど、とてつもなく眠い。
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