九尾

マキノトシヒメ

文字の大きさ
7 / 23

ぎゅわんぶらぁ?九尾比丘尼(3) 宝くじその2

しおりを挟む
 将矢は何を思うところがあるのか、えらい勢いで走ってきている。普段特に運動をしていない将矢にとっては、全力疾走に等しいスピードではなかろうか。
「比丘尼様! 比丘尼様! 九尾比丘尼様! く・お・び・く・に・さ・まぁ!!」
 九尾比丘尼のいる部屋の戸を乱暴に開けると、手にしていた紙を差し出した。更に何か言おうとはしているが、息が荒くぜいぜいと言うだけで言葉が出ていない。
「なんじゃ、朝っぱらから。(ピー)みたいにはしゃぎおって」
 九尾比丘尼から…とても書くことができないのが出てきました。
「そんな(ピー)じゃないですよ。(ピー)かもですけど」
「また前みたいに(ピー)とか(ピー)とか(ピー)とかじゃなかろうな」
 やめい! 書いてる方が鬱陶しいわ。
「まあよかろう。で、何じゃというんじゃ」
「そうです。これ、これですよ」
「ロト7か」
「これ、自分で好きな数字を選べるんですよ。当たり番号が分かっていれば、それ選べるんですよ。一等最高六億円。しかも今はキャリーオーバーが二十億超えてるから、一等最高十億円ですよ」
「はあ…」
 九尾比丘尼の顔は、失望、落胆、何を今更、お前頭大丈夫か、てやんでえすっとこどっこい、といったものが混ざりあった表情に…。
「なるわけなかろうが! どういう顔をすればそれが混ざった顔になるというのじゃまったく」
「…で、ダメですか?」
「確かに、当選番号というか、当選の数字は7個じゃな。37個中の7個」
「よくご存じで。てことは、また何か変なものが出てくると…」
「一枚三百円が十億円。まさに夢の如くよのう。ふふふ…」
 遠い目…してますねえ。
「比丘尼様ー! 目が虚ろになってますよ」
「欺瞞的不確定性」
「は?」
「その言葉自体は、言ってみればわしの造語じゃがな。普通の宝くじは発行枚数が決まっておる。一組十万枚掛けること組数。これが一ユニットで、通常は組数は二桁じゃが、人気のあるものは組数が三桁になったり、ユニット数が増やされる」
「まあ、それが普通の宝くじですねえ」
「話はそれるが、スクラッチも発行枚数が決まっておる」
「そうですよね。出来上がったものを削るのですから。出来た以上は削ってなくても結果は決まってる。賞金に換金するかしないか。削って当選していても換金しなければ削っていないのと同じ」
「じゃが、ロトやナンバーズは記入用紙その物には、何の価値もない。購入する者が数字を選び、それが印刷されて始めて当落の価値が付くんじゃ」
「あ…なんか、話の筋が見えてきたような」
「そうなんじゃ。有効となる発行部数は当落の価値が付いたもの。それは発行が締め切られるまで分からん。不確定要素なんじゃ。宝くじの最初に言ったな。出現が確定的なものなら確率は高いと」
「そ、そりゃあ、誰も買わなければ出現しないことになりますが、それはありえないでしょう。誰かが一つでも買えばいいんですから…そういう意味じゃないんですね」
「発行部数が定まっておらぬということは、全体像、出現の総数が定まっておらん。確定しておらんという事じゃ。普通の宝くじでもユニット数が追加された途端、予想が変わるのじゃ。番号の内容自体は変わらんというのにな」
「なるほど。全く同じものであるのに複数個作ったら変わる。それで欺瞞的ですか」
「ロトの番号を観たとき、ホイホイと買いに行ったら、次の瞬間には変わっておる。いつまでたっても変わり続ける。疲れたわ」
「て、買いに行ってたんですか。いや、それでも発売期間ギリギリなら、概ねの発売数は出てるんですから、一等は無理でも、一つや二つ違いの三等とか四等なら…」
「ふふ。ギリギリで予想を観ても、また次の瞬間には全体の予想数字がごっそり変わるのじゃー」
「使えねー」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...