九尾

マキノトシヒメ

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ぎゅわんぶらぁ?九尾比丘尼(2) 競馬

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「比丘尼様ー! お話したいことが」
 将矢が部屋に入ってきても、例のごとく寝そべっていた九尾比丘尼は振り向きもせず、テレビを見たままの半開きの目で煎餅を咥えたままで、ボリボリと尻を掻いた。
「それ、それにですよ」
「んあ?」
「今まさにそのテレビでやってる競馬! 今日は競馬の祭典。G1日本ダービーじゃないですか」
「別に競馬を見たくて見ておったわけではないんじゃがの。まあ、今回唯一の牝馬であるレガレイラには若干期待せぬ点もないわけではないが」
「どこが見たくて見ていたわけじゃないですって? まあ実際レガレイラは2番人気ですけど。で、九尾比丘尼様の本命はそこからですか?」
「予想は無理。はい終わり」
「なんでえっ」
「確かに頭数が決まっておるから、組み合わせの数も確定しておる。ロトとは違い、主要要素はレースそのものであって、投票券は副次的要素じゃから、発行がどんな数でどんな形態であろうと、たとえ発行数がゼロであろうとレースの結果に影響はない」
「でしょう。そう思ったんですよ」
「じゃが、予想はできんのじゃ」
「なんか倫理的とかそういった方面ですか?」
「神仙に人間の倫理が全部通用するわけではないわ。実際、レース場に行っておる神仙も結構いるぞ」
「そうでしょう」
「純粋にギャンブルとして楽しんでおるだけじゃがな」
「げ。儲けるとかその方面の目的は」
「さっき答えは出しておろう。無理。予想はできん。とな」
「…理由を伺っても?」
「簡単に言えば、出場頭数と到着頭数が同一である保証がないからじゃ」
「落馬とかかー」
「完全なる不確定要素じゃな。組み合わせの設定は到着した馬に対して行われるのじゃから、到着頭数がわからん以上は予想を立てようもないわ。そういう事じゃ」
「あーあ、競馬もダメか。で、一つ気になっていたんですが、そのテレビの前に置いてある紙…、気のせいか勝馬投票券に見えるんですけど。気のせいですかねえ」
 二回言ってますね。
「気のせいじゃ。そう、気のせいじゃ」
 二回返してますねえ。
 その時、ファンファーレが鳴って、レースが始まった。九尾比丘尼はガバっと起き上がり、テレビにかじりつく。
「ようし、行け行け。ああ何をやっとるんじゃ。そこからでは追い込みにくいであろうが。最終コーナー、悪い位置ではないぞ。行ける行ける。もっとムチを入れんか、伸ばせ伸ばせ伸ばせ。だぁーっ! また負けたー!」
「また?」
 室内にハズレ投票券の紙吹雪が舞いましたとさ。

●おまけ

「比丘尼様ー! 競輪・ボートレース・オートレース(以下同文)」
「(以下同文)」
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