君に伝えたい言葉

マキノトシヒメ

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翔太編

五月

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 五月というか、四月末から五月始めはゴールデンウィークであり、その中に五月五日、端午の節句がある。
 その関連行事も永年に渡って執り行われている。
 昔からの慣習的なものなので、ジェンダー関連のことで責められると厳しい点もあるが、桃の節句は、お淑やかな女の子。静かに、おごそかにという感じ。対して端午の節句は、元気な男の子。派手というか、賑やかな感じがある。
 飾る物も雛人形は動かない(動いたら逆に怖いわ)が、鯉のぼりは風になびくというか泳ぐ。動きまくる。
 そう言えば、鯉のぼりの供養をあまり聞かないのは、陽光の元で動きまわっているイメージがあるからなのだろうか。実際、うちの神社では、雛人形供養に比べると、鯉のぼり供養はずっと少ない。ほとんどないと言っていいくらいだ。五月人形のほうがまだあるだろう。
 俺が子供の頃に立ててもらった鯉のぼりも何処かに仕舞われているのだろう。仕舞っておくのに場所も取らないから、このまま忘れてしまうんだろうなあ。

 さて、大輔と裕美さんが付き合うきっかけはゴールデンウィークだったと聞く。来月、二人の結婚式に出席するが、その席で俺たちも正式に婚約と相成ったことを伝えようと思う。

 ここの神社はこの町内会に密接と言えるくらい馴染んでおり、時には人生相談のような事をお願いされることもある。宗教的な方向ではなく、ホントに一般生活上での相談である。答えも実生活に反映されたものが求められる。
 今日来たのは、三丁目の中華料理店の亭主。神社へ参拝とかは全くした事はないのだが、松蔭さまと個人的に懇意にしている人である。そのように松蔭さまは個人的に懇意にしている人には事欠かない。友人関係で顔が広いのは悪いことではない…いや、時に悪いこともある。ただ、その「悪いこと」が起こった時に矢面に立たされるのが、大抵俺なので面倒くさい。
 面倒くさいで済む話だからまだいい、暴力沙汰や刃傷沙汰はないからと自分に言い聞かせている。
 まあ、今回はこっちに面倒はなさそうではあるが。

 話ではその中華料理店の亭主の息子さんが、五月病でふさぎ込んでしまっているというのだった。
 その息子さんは今年大学に入学し、意気揚々と通っていたのは良かったのだが、ゴールデンウィークを過ぎ、二週間もしたあたりから、急に意気消沈の様相を見せ始めたのだという。
 俺は幸いというべきか、五月病は経験がないので、何とも言いようがないのだが、一般的には環境の変化に慣れ始めたときに自分の目標や理想とのズレが引き起こすと言われているが…。
 細かいことは、松蔭さまにまかせることにした。神社には直接関係ないことなので、こちらからしゃしゃり出るのは違うだろう。もちろん松蔭さまから話があり、協力できることがあるなら喜んでお手伝いするが。

 後日、例の中華料理店の息子さんは元気を取り戻したと話を聞いた。松蔭さまが何をどうやったとかの話は出なかった。あの人はやるときにはやるのだが、できればもっと神社の催事にも真剣に取り組んでもらえたらと思うんだけど。
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