14 / 24
美鈴編
二月
しおりを挟む
うちは小さいけど歴史はかなりあるほうで、記録が残る中では全国でも五百位くらいにあるとか。本当かしら。日本には八万件以上の神社があるから、五百とか言ったら、出雲大社とか(伊勢)神宮とか明治神宮みたいな超メジャーな…あれ? 明治神宮は創建が大正時代? 新しいほうなんだ。
それはさておき、歴史は古いんだけど、地域色が強いから世間一般的な行事もどんどんやってるわけで。だからといって、クリスマスにまで手を出したのは、ちょっとやりすぎよね? お父さん?
ええ。先代まではさすがにクリスマスはやってませんでしたよ。まったく。あたしが物心つく前からやってるんで、当たり前にあるものだと思っていたけど、当たり前じゃないと知ったときの衝撃はもう…ねえ。
で、二月といえば、バレンタインデーですよね。神社ではさすがにバレンタイン行事はないですけど、個人的にはみんなに男女関係なしにあげてます。これまでにも普通にみんなに量産手作り品をあげていたから、作るの自体は…え? 量産言うな?
チョコレートを作るの自体は慣れてるから、翔太にあげるのは今年は、凝ったラッピングのもので、やっちゃいます。
あげる相手はみんな大人の人なので、ビターチョコレートとちょっとミルクチョコレートを刻んで、湯せんで融かしてなめらかになったら、てれててっててー。
「い~つ~も~の~、ア~レ~」
砕いておいた、いつものアレ(まあ、正体はもう翔太が言ってるんだけど)を混ぜて固めて切り分ける。ここで固めるのがちょっとコツがいるのよね。温度が高いままで固めちゃうとブルーミングっていって白っぽくなっちゃうから、混ぜながら人肌より少し高いくらいまで温度を下げておいて型に入れると、はい、きれいに出来上がり。
切り分けた中で、断面にアレが出ていないのだけを箱にきれいに並べて、バレンタインっぽい包装紙でくるんで、リボンをかけて、と。
うーん、どんな顔して受け取ってくれるのかなあ。
それ以外はいつものように、透明な袋に5個づつ入れて、こっちもリボンで封をして、準備オッケー。
バレンタインデー当日。
翔太にチョコレートを渡したら、さすがに恐縮した顔してた。なんかうれしい。
後で見に行ったら、丁度食べたばかりのところで、おいしいって言ってくれた。でも、しっかりアレが入っているのもバレてーら。
…バレないわけないんだけどね。
「美鈴…、お父さんには?」
夜になって家に戻ると、早速出没してきました。
「え? ちゃんと置いておいたでしょ」
「いやいや、そんな十把一絡げみたいな、ついででいいやみたいなやつじゃなくって、父親という特別な存在に対する敬意がこもった物があって然るべきではないかと思う今日この頃なんでありますけれども」
なんか、何て言うか、すごい芝居がかった口調。一言置きにこっちをちらちら見てくるし。
「言っていい?」
「何を」
「めんどくさー」
多分、顔にも面倒くささがガッツリ出ていたとは思う。
「…ひどい」
それはさておき、歴史は古いんだけど、地域色が強いから世間一般的な行事もどんどんやってるわけで。だからといって、クリスマスにまで手を出したのは、ちょっとやりすぎよね? お父さん?
ええ。先代まではさすがにクリスマスはやってませんでしたよ。まったく。あたしが物心つく前からやってるんで、当たり前にあるものだと思っていたけど、当たり前じゃないと知ったときの衝撃はもう…ねえ。
で、二月といえば、バレンタインデーですよね。神社ではさすがにバレンタイン行事はないですけど、個人的にはみんなに男女関係なしにあげてます。これまでにも普通にみんなに量産手作り品をあげていたから、作るの自体は…え? 量産言うな?
チョコレートを作るの自体は慣れてるから、翔太にあげるのは今年は、凝ったラッピングのもので、やっちゃいます。
あげる相手はみんな大人の人なので、ビターチョコレートとちょっとミルクチョコレートを刻んで、湯せんで融かしてなめらかになったら、てれててっててー。
「い~つ~も~の~、ア~レ~」
砕いておいた、いつものアレ(まあ、正体はもう翔太が言ってるんだけど)を混ぜて固めて切り分ける。ここで固めるのがちょっとコツがいるのよね。温度が高いままで固めちゃうとブルーミングっていって白っぽくなっちゃうから、混ぜながら人肌より少し高いくらいまで温度を下げておいて型に入れると、はい、きれいに出来上がり。
切り分けた中で、断面にアレが出ていないのだけを箱にきれいに並べて、バレンタインっぽい包装紙でくるんで、リボンをかけて、と。
うーん、どんな顔して受け取ってくれるのかなあ。
それ以外はいつものように、透明な袋に5個づつ入れて、こっちもリボンで封をして、準備オッケー。
バレンタインデー当日。
翔太にチョコレートを渡したら、さすがに恐縮した顔してた。なんかうれしい。
後で見に行ったら、丁度食べたばかりのところで、おいしいって言ってくれた。でも、しっかりアレが入っているのもバレてーら。
…バレないわけないんだけどね。
「美鈴…、お父さんには?」
夜になって家に戻ると、早速出没してきました。
「え? ちゃんと置いておいたでしょ」
「いやいや、そんな十把一絡げみたいな、ついででいいやみたいなやつじゃなくって、父親という特別な存在に対する敬意がこもった物があって然るべきではないかと思う今日この頃なんでありますけれども」
なんか、何て言うか、すごい芝居がかった口調。一言置きにこっちをちらちら見てくるし。
「言っていい?」
「何を」
「めんどくさー」
多分、顔にも面倒くささがガッツリ出ていたとは思う。
「…ひどい」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?
朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」
そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち?
――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど?
地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。
けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。
はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。
ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。
「見る目がないのは君のほうだ」
「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」
格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。
そんな姿を、もう私は振り返らない。
――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる