君に伝えたい言葉

マキノトシヒメ

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美鈴編

三月

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 雛人形は、独身のうちは、毎年飾るというのが、一応うちの取り決め。
 このお雛様は、おばあちゃん、つまり、お母さんのお母さんが買ってもらったものなのだそうです。
 うちの神社は、お雛様の供養が結構あって、その関連で、修復業者とも懇意にしている。思い入れがあるけど、壊れてしまって泣く泣くというのもあるらしく、それなら多少お金がかかっても修復できるならしたいという人もたまにですが、いるのです。
 うちのこのお雛様も、おばあちゃんからお母さんに託されたとき、そして私に託されたとき、それぞれの時に職人の方が衣装のほつれやほころびをきれいに治して、汚れを落としてくれたのだそうです。
 確かに古さはあるけど、傷んでいるところとか、汚れたような所は全くないの。
 私が結婚して、女の子が生まれたら、そうやってまた託することができればいいな。

 ところで、供養といえば様々なものがあるけど、自動車なんて話が来たときはびっくりした。けど、ご本人にとっては、それだけ思い入れがあるという事ですよね。自分がそのように思わないからって、否定するのは違いますよね。それを言い出したら、人によっては、雛人形だって供養するのはばからしいと思う人もいるでしょうし。
 自動車の供養なんて、うちの神社でも初めてのことだったんですけど、なんかお父さんが調べまくって、聞きまくって、あっという間に準備してしまいました。
 いつも、人の斜め上380度。単純にひねるんじゃなくて、一回まわしてからひねるような人ですけど、まじめにやったら何でもできるんじゃないかと思える時もあります。

 翔太の方は、年度の決算期なのでまた忙しそうです。書類の山と格闘しているので、お茶とお菓子を持って行きました。このお菓子が、あたしが生まれる前からあるという、うちで売ってる、おこし&クッキーというやつ。
 なんて言うか、ひねりが何もない、ザ・普通というものが、逆に飽きないのかしらん。確かにあたしも小さい時から食べてるけど、出されたら普通に食べるのよね。飽きたとか全然思わないもん。
「いつもありがとうございます」
 やっぱり普通ってのがいいのかな。ご近所の方も買いに来るし、お隣の町内会だけど、キリスト教会の牧師さんの奥様もお得意さまの一人です。
 あたしが生まれる前から売ってるのだから、20年以上にもなるわけで、誰が始めたのかとかはよく知らないんだけど、思いついた人は大したものだと思いますよ。
 でも、さっきのセリフって、神社じゃないよね。普通のお店よね。

 で、それは例のバレンタインチョコにも使ったんで、翔太の方もホワイトデーで何か使ってやろうと画策していたらしいけど、先月の分は完売して、余りの活用とかできなかったみたい。まあ、出来が良かったのなら使っても別に気にしないけどね。
 それで、ホワイトデーには有名店のかわいいパッケージのマカロンをくれた。
 ふふふ。なんかちょっと勝ったみたいな気分?
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