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おじいさまと秀真
しおりを挟む8時に帰宅した祖父は、食事も外でとってきたようで、外出用の和服から部屋着に着替え、すぐにリビングでお酒の準備を始めた。
和美さんは、もう帰っていて、秀真がそのためのあれこれを準備する。アイスペールや、ピッチャーを運び、ウイスキーのボトルと、グラスを置く。
おじいさまは、新聞に目を通しながら、それを当たり前のように受け止めた。
「雫、大きくなったなぁ。お母さんは元気か?」
新聞を、テーブルの脇に置くと、雫の顔を見ながらたずねる。
「はい、元気です。」
母は、この祖父とは子供の頃から折り合いが悪く、それが理由なのか、中学を卒業すると寮制の学校に進学した。その後、大学卒業をして、すぐに父と結婚をしたので、中学を出て以来、祖父と暮らした事はない。
こちらまでの距離が遠いのもあり、母は滅多に田舎に帰ろうとしないので、雫が祖父と実際に顔を合わせた回数はかなり少ない。厳しそうな人ではあるが、雫にとっては、たまに会えば優しいおじいさまだった。
「そうかそうか、元気なら何よりだ。今日は迎えに行けなくて申し訳なかったなぁ。遠くて疲れただろう。」
「はい、でも、麦畑の景色とか、面白かったです。」
祖父は満足そうに頷くと、秀真の持ってきたグラスに水割りを作り、一口飲んだ。
「先のことは追い追い考えるとして、今日はもう早く休むといい。明日は、秀真に周りを案内してもらえばいいよ。私は、少し書き物があるから、用があれば書斎の方へ声をかけなさい。」
「はい、ありがとうございます。おやすみなさい。」
雫がそう言って立ち上がると、秀真も立ち上がった。
「おじいさま、僕も今日は休みます。」
祖父は、秀真に向き直ると言った。
「秀真、今朝書いた分の半紙を、あとで部屋へ持っておいで。見てやれなかった分を見ておくから。」
秀真は頷くと、雫と一緒にリビングを出た。
「秀真、毎朝書道をやっているの?」雫が尋ねると、秀真は頷いた。
「そう、おじいさまが見てくれるんだ。お茶も、書道も。他には数学、英語、社会、国語、理科なんか、学校でやる内容は、全部うちでやっているんだ。」
「つまり、ほとんど外には出てないって事?」
雫が驚いて尋ねると、
「下まで、本屋なんかには行くよ。でも、売ってる物の品揃えは悪いし、大抵はネットの方がいいよね。」
秀真は田舎だからしょうがない、というように笑った。
最近の雫の生活も、確かに殆ど外に出ない生活だったのだから、言えた義理ではないが、そんな生活で楽しいのかと、やや心配になる。その心情が読み取れたのか、秀真はやや言い訳のように付け加えた。
「でも、この周りの散策は結構楽しいよ。明日は、駅の方には行かずに、この周りを散歩しよう。和美さんに、お弁当お願いしたらいいよ。」
秀真はじゃおやすみ、と自分の部屋へ入って行った。
雫は、その隣の、かつては自分の母の部屋だった部屋に入って、ベットに横になると、あっという間に眠りについた。
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