雪の箱

つきねこ

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雪の箱

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真っ白な雪が、真っ白な天井からふわりふわりと落ちてくる。
辺りは薄明るく、ぼんやりとしている。
胸まで雪に埋もれて、身動きは取れない。
しかし、寒さも空腹も苦痛は何一つなく、むしろ穏やかで心地よくて、真っ白な羽毛に包まれたように、柔らかい。
首を巡らせると、真っ白な天井と真っ白な壁がつづいているように見える。実際にはどうだかよく分からないけど…。
そして、左隣には、私と同じように胸から下を雪に埋もれさせた人が1人。やはり、ぼんやりとそこにいる。

もう、いつからだろう?
ずっとここでこうして2人で埋まり続けている。
互いに手を伸ばせば、微妙に触れる事の出来ない、2、3ミリの距離。
声は出るし、もちろん語り合う事は出来るけど、もう何年も前から、何といって語る事も尽きて、ただ並んで埋まり続けている。
もう忘れてしまったけど、昔は互いに名前で呼びあっていた気がする。
何か心の通い合うような関係であった気もする。
でも、今となっては、全て雪の奥底に埋もれてしまって、もう掘り起こす事も出来ない。

もういつからここにいて、あといつまでここにいるのか、さっぱり見当がつかない。
何のためにいるのか?
なぜこんな風にじっとしていなくてはいけないのか?
何もかもあやふやで、ただここにいなくてはいけないという事だけは分かっているのだ。
いつまで?いつまでこのままなの?
何かの役目があったのか?何かの罪の償いなのか?
そもそも、本当にここにいる必要があるのか?
何もかもが、この薄明るく白い世界の中で、輪郭を失い、ただただ埋まって、どうでもよくなってしまった。
このままで、なんの問題があるというのだろう?

ふと、上に何かの影がよぎった。
この箱の中ではあまりにも異質な、場違いな色と質感が紛れ込んできた。
その異質な何かは、天井の一部に四角く切り取られた穴があき、そこから入り込んできた。
紐に吊るされたその物体は、そろそろと下ろされ、長い長い時間をかけて、私たちの丁度真ん中。手が届くギリギリぴったりの位置に、じんわりと着地した。
下りてくる途中から、もう、それは何なのか、はっきりとみて取れた。かなりの威圧感と存在感を持ったそれは、黒く、恐ろしく底光りをする、一丁の拳銃であった。
ぬらっとした光を放つ、その拳銃は、おそらく、一発だけ弾が入っているだろう。
意図的に。

私たちは、ただその黒い塊と、相手を見つめ、固まる。
あまりにも、長すぎる時間。これからも終わらない時。
過ぎ去らず、そこに停滞し、積み重なっていく、私たちの時間。
凍りついて折り重なる罪に身を埋め、いつまでもこうしているの?
いつになったら、ここから解放されるの?

ここに、1つの黒い変革がある。
ただ一発だけ。
お互いに、手に取ることができる距離。しかし、お互いに手を伸ばすことが出来ず、ただ見つめ合う。

この一発は、あなたのために?それとも、私のために。

まだ、動かれない私たちは、あといつまで、このままでいられるのだろう?




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