もしもいつも通りの明日が来なかったとしても

春音優月

文字の大きさ
23 / 45
Stage2 始動

story23 会話は通じても……

しおりを挟む
 階段を降りて、建物の外に出る。すると、昨日の夜は気がつかなかったけど、敷地内を高い塀に囲まれていることに気がつく。
 門は内側からもロックがかかっていたけれど、ブレットが指紋認証でそれを開けてくれた。
 
「わ、すごいね。御堂先生は外に食べに行ってもいいって言ってたけど、ロックがあるなら一人で外に出れなかったんじゃん」
 
 一人でぼやいていると、認証を終えたばかりのブレットがこちらを見ていた。
 
「Mina's fingerprint and face are already registered.(ミナの指紋と顔もすでに登録されてるみたいだけどな)」
「こわっ、いつのまに?」
 
 私の言っている日本語の意味がどこまで理解出来ているのか分からないけど、私が小さく身を震わせると、ブレットが声を出して笑う。
 
 ねえ、今の笑うとこだった?
 やっぱりブレットのキャラが良く分からないんだけど。
 
 門を出て少し歩くと、大通りに繋がっていて、車やバイクはたくさん走っていたけれど、道を歩いている人はまばらだった。
 
 人も少ないし、もう暗いし、つい最近危ない目にあったばかりなので、やっぱり怖いな。
 昼間でも銃撃戦があるくらいなんだから、夜のナイロビはきっともっと治安悪いよね。大変失礼だけど、すれ違う人全員が危険人物に思えてきちゃうし……。
 
「What's wrong?(どうした?)」
 
 そんなことを考えて歩いていたら、いつのまにか歩くのが遅くなっていたのかもしれない。少し前を歩いていたブレットが私の方を振り返った。
 
「After all, Nairobi at night has an atmosphere. It's less secure at night than at noon, isn't it?(やっぱり夜のナイロビは、なんか雰囲気あるなって。夜のナイロビは、昼よりももっと治安悪いよね?)」
「I don't think there is a safe place anywhere on earth.(地球上のどこにも安全な場所なんてないだろ)」
「ええ……あ~、だよね。たしかに、そうかも」
 
 真顔でいきなりそんなことを言われてちょっとびっくりしたけど、でもたしかにそうだよね。いつ宇宙人が襲ってくるのか分からないのに、夜のナイロビが怖いとか言ってる場合じゃない。もう少し私も度胸をつけないとね。
 
「It's a joke.(ジョークだ)」
 
 きっと不安げな顔をしているであろう私の顔をじっと見て、ブレットは困ったように視線をさまよわせる。
 
 ジョーク、って今の冗談だったの?
 真顔だったから、てっきり本気で言ってるのかと思った。
 
 アメリカンジョークなのか何なのか知らないけど、どこらへんに笑うところがあったの?
 もしかして、どこにいても危険って地球はどれだけ危険なのってツッコミいれるべきだった? いや、笑えないし。
 
 やっぱりブレットの笑いのツボって、全然分からない。
 
 私も気の利いた英語での会話が出来ないのがいけないのが悪いのかもしれないけど、根本的にノリが違うっていうか。悪い人じゃないのは伝わってくるけど、やっぱり異文化コミュニケーションって難しいよね。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...