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Stage3 敵か味方か
story38 ただひとつの希望
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「そう、なんだ。詳しいね」
「ああ。ここは、俺の生まれ育った場所だからな」
「え? ……あ、そっか。だから、ネリ、」
いつもと違ってたんだねと言おうとしたけれど、それは呑み込んで心の中に留めておく。本人に直接言うのも無神経な気がして。
自分の国だから詳しいのかとも思ったけど、ここはネリの生まれた場所だったんだ。そういえば、ネリは貧しい村の出身って聞いたことがあったかもしれない。
冷静を保とうとはしてるみたいだけど、さすがのネリでも自分の村のことになれば、冷静じゃなくなるよね。
「それなら、絶対に村を守らないとね」
「うちの村に奪うようなものはないが、おそらく子供たちの誘拐目的だろう。奴隷として、裏市場に売り飛ばすための」
ネリは力強く頷いてから、犯罪組織の目的を予測する。
誘拐っていっても、日本みたいに身代金目的の誘拐じゃないんだね。誘拐する方もする方だけど、奴隷として買う人がいるからこそ成り立つんだと思うと、やっぱり怖い世界だ。
ネリはいつもと同じように話しているようにも見えるけど、よく見たら血が出そうなくらいにきつく拳を握り込んでいた。
冷静なようで、それでも明らかにいつもとは違うネリの様子に痛いほど彼の気持ちが伝わってくる。その苦しみが伝染したのか、私まで胸が痛くなってきた。
「こんなところで、村の未来を壊すわけにはいかないんだ。そのために、俺は戦っているんだから」
「……そうだね。ネリはさ、地球に帰ってきてお金をもらったら村に寄付するの?」
私と話しているというのに、ネリの視線はどこか遠くを見ていて、絶対に視線が合わない。
「そのつもりだ」
ネリが答えたとき、今まで熟睡していた千明が一度あくびをしてから目を開けた。けれど、すぐにまた目を閉じたので、私たちは千明に構わず話を続ける。
「うちの村には、金はもちろん、作物が育つ肥えた土地も、仕事もない。水も、電気さえもない。それでも、この村にはたったひとつの希望があるんだ」
「たったひとつの希望って?」
「風だ。何もないけれど、風だけは豊富にある」
「風?」
窓の外を見ると、枯れ草がバタバタと揺れ続けている。確かに風がすごく強いなって最初にここに来たときから思ったけど……。
「俺はここに風力発電所を作りたい。発電所を作れば、村にも仕事ができる。
そのためには資金がいるんだ。こんな辺境の地に興味を持つ投資家は少ない。発電所を作る案は今までもあったが、資金がなければどうにもならないんだ」
「発電所を作るために、ネリは戦ってるんだね」
「そうだ。発電所を作ったところで、村人を教育するシステムや、周辺への理解も必要だし問題は山積みだ。それでも、まずはたったひとつの希望を次の世代に繋げたいんだ」
この村が本当の意味で貧しさから抜け出すまで、それは一体何年かかるんだろう。何年、何十年、もしかしたらもっと時間が必要なのかもしれない。
きっと発電所を作ったからって、全て解決するわけじゃない。
それは私にも分かるけど、前だけを向いて話すネリの願いがいつか叶えばいいのに。叶ってほしい、そう思わずにはいられない。
「それじゃあ、宇宙人との戦いに絶対に勝って、生きて村に帰らないとだね」
「俺は、生きて帰れなくても構わない。
資金さえあれば、村の未来への希望が繋がるんだ。俺が戦いに参加さえすれば、資金が入る。
死んでも生きていても、資金さえ手に入ればどっちでもいい」
「ネリ......」
一切の迷いもなくそれを口にしたネリに、何も言えなかった。
死んでても生きててもどっちでもいい、なんて言わないでほしい。けれど、とてもじゃないけど、そんなこと言えなかった。
私とは背負っているものの重さも、覚悟も、育った環境も違いすぎる。
病気にさえならなければ、死ぬことなんて遠い先のことだと思っていた私。明日の食べるものさえもあるのかどうか分からなくて、きっと常に死を意識して育っただろうネリ。
私なんて自分のことで精一杯で、自分が死ぬって言われたら、自分のことしか考えられなかったのに。ネリは、もっと違うものを見てるんだね。
想像することしかできないけど、ネリは私よりもずっと厳しい世界で生きてきたんだ。荒れ果てた世界でも、未来だけを信じて生きてきたんだね。自分の命を捨てる覚悟までして。
何不自由なく育ってきた私が、ギリギリのところで生き抜いてきたネリの覚悟に口を出すことなんて出来るはずなかった。ううん、しちゃいけないと思ったんだ。
「ああ。ここは、俺の生まれ育った場所だからな」
「え? ……あ、そっか。だから、ネリ、」
いつもと違ってたんだねと言おうとしたけれど、それは呑み込んで心の中に留めておく。本人に直接言うのも無神経な気がして。
自分の国だから詳しいのかとも思ったけど、ここはネリの生まれた場所だったんだ。そういえば、ネリは貧しい村の出身って聞いたことがあったかもしれない。
冷静を保とうとはしてるみたいだけど、さすがのネリでも自分の村のことになれば、冷静じゃなくなるよね。
「それなら、絶対に村を守らないとね」
「うちの村に奪うようなものはないが、おそらく子供たちの誘拐目的だろう。奴隷として、裏市場に売り飛ばすための」
ネリは力強く頷いてから、犯罪組織の目的を予測する。
誘拐っていっても、日本みたいに身代金目的の誘拐じゃないんだね。誘拐する方もする方だけど、奴隷として買う人がいるからこそ成り立つんだと思うと、やっぱり怖い世界だ。
ネリはいつもと同じように話しているようにも見えるけど、よく見たら血が出そうなくらいにきつく拳を握り込んでいた。
冷静なようで、それでも明らかにいつもとは違うネリの様子に痛いほど彼の気持ちが伝わってくる。その苦しみが伝染したのか、私まで胸が痛くなってきた。
「こんなところで、村の未来を壊すわけにはいかないんだ。そのために、俺は戦っているんだから」
「……そうだね。ネリはさ、地球に帰ってきてお金をもらったら村に寄付するの?」
私と話しているというのに、ネリの視線はどこか遠くを見ていて、絶対に視線が合わない。
「そのつもりだ」
ネリが答えたとき、今まで熟睡していた千明が一度あくびをしてから目を開けた。けれど、すぐにまた目を閉じたので、私たちは千明に構わず話を続ける。
「うちの村には、金はもちろん、作物が育つ肥えた土地も、仕事もない。水も、電気さえもない。それでも、この村にはたったひとつの希望があるんだ」
「たったひとつの希望って?」
「風だ。何もないけれど、風だけは豊富にある」
「風?」
窓の外を見ると、枯れ草がバタバタと揺れ続けている。確かに風がすごく強いなって最初にここに来たときから思ったけど……。
「俺はここに風力発電所を作りたい。発電所を作れば、村にも仕事ができる。
そのためには資金がいるんだ。こんな辺境の地に興味を持つ投資家は少ない。発電所を作る案は今までもあったが、資金がなければどうにもならないんだ」
「発電所を作るために、ネリは戦ってるんだね」
「そうだ。発電所を作ったところで、村人を教育するシステムや、周辺への理解も必要だし問題は山積みだ。それでも、まずはたったひとつの希望を次の世代に繋げたいんだ」
この村が本当の意味で貧しさから抜け出すまで、それは一体何年かかるんだろう。何年、何十年、もしかしたらもっと時間が必要なのかもしれない。
きっと発電所を作ったからって、全て解決するわけじゃない。
それは私にも分かるけど、前だけを向いて話すネリの願いがいつか叶えばいいのに。叶ってほしい、そう思わずにはいられない。
「それじゃあ、宇宙人との戦いに絶対に勝って、生きて村に帰らないとだね」
「俺は、生きて帰れなくても構わない。
資金さえあれば、村の未来への希望が繋がるんだ。俺が戦いに参加さえすれば、資金が入る。
死んでも生きていても、資金さえ手に入ればどっちでもいい」
「ネリ......」
一切の迷いもなくそれを口にしたネリに、何も言えなかった。
死んでても生きててもどっちでもいい、なんて言わないでほしい。けれど、とてもじゃないけど、そんなこと言えなかった。
私とは背負っているものの重さも、覚悟も、育った環境も違いすぎる。
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私なんて自分のことで精一杯で、自分が死ぬって言われたら、自分のことしか考えられなかったのに。ネリは、もっと違うものを見てるんだね。
想像することしかできないけど、ネリは私よりもずっと厳しい世界で生きてきたんだ。荒れ果てた世界でも、未来だけを信じて生きてきたんだね。自分の命を捨てる覚悟までして。
何不自由なく育ってきた私が、ギリギリのところで生き抜いてきたネリの覚悟に口を出すことなんて出来るはずなかった。ううん、しちゃいけないと思ったんだ。
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