どんな選択肢を選んでも失敗エンドを迎える現代学園物乙女ゲームのヒロインになりましたが、ハッピーエンドを目指したいと思います!

春音優月

文字の大きさ
5 / 44

5話 なりきりプレイ?

しおりを挟む
「今回バッドエンドしかないのは、始めからそう設計されていたのでしょうか」
 
 恐る恐る聞いてみたら、三木さんは静かに首を横に振った。
 
 じゃあ、何?
 デバッグ不足? 時間が足りなくて、投げやりでゲーム発売した?
 
 アレコレ予想している私の考えを読み取ったかのように、三木さんは話を続けた。
 
「プログラマーの能力は申し分ないはずです。開発期間も余裕を持っていました」
「じゃあ、何で……?」
「あえて言うなら、呪いでしょうか」
 
 真顔でそんなことを言った三木さん。
 ふざけているわけではなさそうだけど……。
 
「え? の、呪いですか?」
「それはさておき、このままでは我が社存続の危機です」
 
 さておかないで?
 会社存続の危機も大変なんだろうけど、私としては呪いの方が気になるよ。
 
 平然と話を続けようとする三木さんの顔を、思わずまじまじと見つめてしまった。
 
「次作こそは、ハッピーエンドを迎えられるようにしないといけません。新作ゲーム開発のため、協力して頂けますか」
「……。確認なんですが、私はデバッグをしたらいいんですよね?」
 
 仕事内容はデバッグとは聞いているものの、何だか不安になってきた。いきなり呪いとか言い出すんだもん。私も呪われたりしないよね?
 
「はい。ただお願いさせて頂きたいのは本格的なものでして、花井さんには実際に女子高生として学校に通い、恋をして頂くことになります」
「え。なりきりプレイですか?」
 
 VRとか、そういうアレなのかな?
 
 VRはまだプレイしたことがないんだけど、ゴーグルをつけると、ゲームの世界が現実のものみたいに感じられるって聞いたことがある。
 
「まあ、そうですね」
 
 少し間があってから、三木さんは曖昧に言葉を濁した。
 
 
「その間、外部との連絡は絶って頂くことになります」
「ええ……」
 
 外部と連絡出来ないの?
 なんか……。不安しかないな。
 
「それを一年、ですか」
「一年と言いましたが、ハッピーエンドを迎えたら、その時点で終了して頂いて構いません」
「そうなんですか?」
「はい。現在はバッドエンドしか迎えられない仕様になっているため、ハッピーエンドへの道を模索して頂きたいのです」
「なるほど」
 
 ん? それって、デバッグとはちょっと違うよね。不思議に思って首を傾げる。
 
 だけど、三木さんがどんどん言葉を続けるので、私が口を挟む隙はなかった。
 
「あらかじめお伝えさせて頂きましたように、完了後は報酬と共に新しいお仕事を斡旋させて頂きます」
 
 ものすごく怪しいけど、お給料ももらえるし、新しいお仕事も紹介してもらえる。
 
 騙されてたとしても、どうせ無職。貯金もほとんどないし、彼氏もいないし、おまけに無能でコミュニケーション能力皆無のダメ女。失うものなんかないんだ。
 
「分か、りました。では、ぜひやらせて頂きたいです」
 
 迷った末に、そう告げる。そうしたら、三木さんは身を乗り出して私の両手を握った。
 
「本当ですか! ありがとうございます、花井さん!」
「あはは……」
 
 やんわりと手を離そうとしたけど、がっちりと握られていて外せない。無職の私の採用をこんなに喜んでくれるなんて、どれだけ困ってたんだろう。
 
「それでは、早速明日からお願いいたします」
「明日からですか?」
「本日からお願いしたいところですが、ご家族の方への説明やご準備もあるでしょうから」
 
 急すぎるって意味で言ったんだけどな。
 
 こっちが引き気味で話しても、強引に話を進めてくる三木さん。そんな彼と話していると、もう逃げられないことを実感する。
 
 うう……。ちょっと怖いけど、いつまでも無職でいるわけにもいかないよね。
 
 どうか無事にハッピーエンドを迎えて、まともな社会人になれますように。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

【完結】平安の姫が悪役令嬢になったなら

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 平安のお姫様が悪役令嬢に転生した、平安おかめ姫と皇太子の恋物語。  悪役令嬢のイザベルはある日、恨みをかったことで階段から突き落とされて、前世の記憶を思い出した。  平安のお姫様だったことを思い出したイザベルは今の自分を醜いと思い、おかめのお面を作りことあるごとに被ろうとする。  以前と変わったイザベルに興味を持ち始めた皇太子は、徐々にイザベルに引かれていき……。  本編完結しました。番外編を時折投稿していきたいと思います。  設定甘めです。細かいことは気にせずに書いています。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

死にたくないので、推しの婚約者やめたいです

皇 翼
恋愛
転生者である麗華は8歳のある日……父親が婚約者を連れて来た瞬間に気づいてしまった。このゲームが前世で推していたゲームの世界であるという事を。そして自分は桜小路 麗華というメンヘラ気味の悪役令嬢であり、どのルートでもメインヒーローである立花 樹に婚約破棄をされ、家も崩壊してしまうという『転落人生』が待ち受けているということに――。 ****** ・セルフリメイクです。(かなーり前に連載していた作品)

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

処理中です...