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25話 帰り道

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 ◇
 
 その後一時間ぐらい松永先輩の練習を見てたけど、先輩は気を回して色々と話しかけてくれた。

 しかも、遅くなったから途中まで送ってくれるって。何から何まで申し訳ない。

「邪魔してしまってすみません」

 学校から出て、駅までの道を歩いている時。
 松永先輩の話が途切れたタイミングで、先輩の顔をチラッと見た。松永先輩はフルフルと首を横に振り、笑顔を作る。

「花井さんがきてくれて、楽しかったよ」

 優しい! さわやか!
 松永先輩を選んで正解……と思いかけたところで、潤くんのことを思い出す。

 潤くんも最初はいい人そうだったけど、付き合ってから豹変したんだよね。松永先輩も、もしかしたら一癖あるのかも。

「花井さんは退屈じゃなかった?」
「はえっ!?」

 大変失礼な疑いを向けている途中に話しかけられ、妙な声が出ちゃった。

「そんな、全然っ! 私も楽しかったです」

 取り繕ったような言い方になっちゃったけど、楽しかったのは本当。


「合気道のことも色々知れましたし」

 何で悠真と知り合いだったのかは結局聞けなかったけど。松永先輩のおかげで、だいぶ合気道に詳しくなった気がする。

 他の武道は自ら攻撃を仕掛けていく攻めのタイプが多いのに対し、合気道は相手の攻撃を受け流す受けの武道であること。相手の力を利用するから、力の弱い女性にも向いていること。とか。

 受けの武道か。潤くんのこともあるし、私も護身術でも身につけた方がいいのかな。

 バッドエンドでもやり直せるとはいえ、何回も失敗してたら期限切れゲームオーバーになっちゃうし、刺されたくもない。

「私も、やってみたいです」

 勇気を出して、言ってみる。

 松永先輩は、きょとんとした表情を浮かべた。
 素人が何言ってたんだって思われたかな。
 少し不安になってしまった次の瞬間。

「歓迎するよ」

 松永先輩は、今日一番の笑顔を見せてくれた。

 やっ、ぱり、かっこいい~……!
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